Broken Flower

なめめ

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御礼がしたいです

御礼がしたいです 5-10

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確かに実家が花屋だと以前話していたのは記憶していたが、この遊びたい盛りの時に親の店の手伝いってどれだけ両親思いなんだろうか……。

大体は嫌がって家の手伝いなんてしないだろうし……。

亨は「そっか」と零しては、相手に予定がある以上、無理強いをすることもできずにあっさりと引き下がった。

「せっかく誘ってくれたのに、すみません」

俺の誘いに真摯に受け止めたのか、葵は申し訳なさそうに何度も頭を下げていた。
その真面目さが亨には新鮮で思わず鼻で笑ってしまう。

嘲る意味ではなくて、こう心を擽られるような……。

「いいよ、また今度にしよう」
「また今度は……」
 
誘いを断ったことを気にしているような、俯きがちの彼にフォローするつもりで言ったのたが、葵は上体を起こしてピタリと止まると、ポツリと呟いた。

反応からすると、今回はあくまで御礼だから葵にとっては今度は無しのつもりだったのか……。それはそれで何か寂しいような気がする。せっかく知り合えたのだから、葵ともっと仲良くなれることを期待している自分がいる。

「あー今度はナシな感じ?」

半ば自虐的に空笑いをすると、葵は大きく首を横に振った。

「ナシだなんて……亨くんこそ……いいんですか?」
「いいよ。あ、連絡先まだだよね?交換しようか?」
「あっ、はい」

亨はスラックスからスマホを取り出すとアプリの登録画面を差し出す。葵は、目を丸くして驚いた顔をすると気まずそうに身を竦めた。

「すみません。僕、携帯のアプリとかやっていなくて……」

今時、簡易的な連絡手段を利用していない人がいるのが驚きだったが、何となくだけど納得してしまう。
葵の交友関係は決して広そうには見えない。
チャット感覚で下らない話をして友人と会話を楽しんだりするようにも思えなかった。

「じゃあ……これ俺の連絡先だから、読み込んで」

亨は慣れたようにスマホを操作しては簡易的なアプリではなく、端末自体の連絡先のコードを差し出した。それを見て葵は、戸惑いながらも、自身のスマホを出す。
こういった作業に慣れていないのか、亨が操作方法を教えながらも何とか葵に渡すことができた。

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