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返ってきたジャージと彼の香り
返ってきたジャージと彼の香り 3-5
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保健室の中心に置かれているテーブルの椅子に此方に背を向けて座っている男の姿を見てもしや·····と思って息を呑む。
人が入ってくることに気づいたのか男が振り返ってくると互いに目が合い、向こうもハッとした表情になった。
「葵くんお待たせ。ごめんね」
「いいえ」
「葵くん怪我が多いけど大丈夫?」
「僕、おっちょこちょいなので平気です」
西田は救急箱を手にしてテーブルに置き、消毒液とピンセットにガーゼを挟んでは男の顔に近づけようとしたが男は顔を背けた。
「大丈夫です。自分でやりますから。
先生は気にしないで下さい·····」
「そう·····。あ、とお·····塩谷くんも座ったら?」
頬に出来る傷など違和感でしかないのに深く事情を聞かないのは西田らしかった。
西田に促されて、渋々男のいるテーブルに近づくと男の斜め向かい側に座った。
男は鏡を見ながら自分で頬にできた擦り傷を消毒しては絆創膏を傷口に貼っていた。
暫くすると西田が職員室に行くからと言い、ウィンクを自分に向けてきては保健室を去って行く。
男と二人きりになり、亨は気まずくて意味もなく利用者名簿を眺めた。
このまま隙をついて帰ってしまいたいが1度捕まった以上、西田に鬼のように電話を掛けられても五月蝿いので大人しく待っているしかない。
「あ、あの。ジャージは受け取って貰えましたか?その·····戻ったらいなかったので」
そんな中、男の声が室内中に響き渡る。
「あぁ。受け取ったよ」
「有難うございました」
「いいえ」
自分から話しかけてきたにも関わらず、男の様子は何処か落ち着きがなく、背筋を伸ばしているのに顔だけ俯けては赤面していいた。
人が入ってくることに気づいたのか男が振り返ってくると互いに目が合い、向こうもハッとした表情になった。
「葵くんお待たせ。ごめんね」
「いいえ」
「葵くん怪我が多いけど大丈夫?」
「僕、おっちょこちょいなので平気です」
西田は救急箱を手にしてテーブルに置き、消毒液とピンセットにガーゼを挟んでは男の顔に近づけようとしたが男は顔を背けた。
「大丈夫です。自分でやりますから。
先生は気にしないで下さい·····」
「そう·····。あ、とお·····塩谷くんも座ったら?」
頬に出来る傷など違和感でしかないのに深く事情を聞かないのは西田らしかった。
西田に促されて、渋々男のいるテーブルに近づくと男の斜め向かい側に座った。
男は鏡を見ながら自分で頬にできた擦り傷を消毒しては絆創膏を傷口に貼っていた。
暫くすると西田が職員室に行くからと言い、ウィンクを自分に向けてきては保健室を去って行く。
男と二人きりになり、亨は気まずくて意味もなく利用者名簿を眺めた。
このまま隙をついて帰ってしまいたいが1度捕まった以上、西田に鬼のように電話を掛けられても五月蝿いので大人しく待っているしかない。
「あ、あの。ジャージは受け取って貰えましたか?その·····戻ったらいなかったので」
そんな中、男の声が室内中に響き渡る。
「あぁ。受け取ったよ」
「有難うございました」
「いいえ」
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