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chapter4
chapter4-11
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「大袈裟に言いすぎだろ」
大袈裟かもしれないけどこれが慎文の本気で、和幸自身は向けられている好意を真剣に受け止めなければならないと思っている。
「大袈裟じゃないよ。それくらい俺はカズくんのことが好き。今だって、本当の恋人みたいで毎日楽しいし、先輩に言った時はカズくんに怒られそうで自信がなかったけど、いつか胸張ってカズくんの恋人だって言いたいくらいには思っているんだよ」
「それは無いって約束だろ。今だけの話だって……」
慎文の気持ちを受け止めたうえで受け入れることは出来ないのだと告げてやらなきゃいけない。
「もちろん約束は守るよ……。でも、少しだけでもいいから俺のこと真剣に考えて欲しい……」
右手を包むように握られ、此方を見つめてくる。考える以前に答えは決まっている。しかし、慎文の精一杯さから「嫌だ」とか「無理だ」と言って突っぱねることができなかった。
年月を重ねるごとに自分の中で慎文に対する警戒心が解けてきていることは自覚している。
それは、和幸が嫌だと言えばすぐに抱き着くのを止めるところとか、条件をだしてからは手以外には触れてこようとしない、忠誠さを見てきたからだ。
そんな奴の悲しむ顔を見たくないと思っている自分がいた。
「一応、考えてみるよ……」
「ほんとうにっ⁉」
同情が邪魔をして奴に本心を告げられず、答えを引き延ばす。奴の表情があからさまに華やいだのを見て余計に胸が締め付けられた。
「ああ、分かったら、顔洗うからさっさとあっち行けよ」
「うん」
和幸は慎文を右手で払って追いやると、奴は嬉しそうに頷いては、鼻歌を歌いながら洗面所を出て行った。
慎文を少しでも期待させてしまった罪悪感に苛まれる。
一方で、奴がこの恋人期間を経て、和幸が言葉で告げてやらなくても満足して、吹っ切れてくれないだろうかと都合のいいことを考えてしまっている自分もいた。
それも、奴の気持ちから逃げているのと変わらないのに……。
大袈裟かもしれないけどこれが慎文の本気で、和幸自身は向けられている好意を真剣に受け止めなければならないと思っている。
「大袈裟じゃないよ。それくらい俺はカズくんのことが好き。今だって、本当の恋人みたいで毎日楽しいし、先輩に言った時はカズくんに怒られそうで自信がなかったけど、いつか胸張ってカズくんの恋人だって言いたいくらいには思っているんだよ」
「それは無いって約束だろ。今だけの話だって……」
慎文の気持ちを受け止めたうえで受け入れることは出来ないのだと告げてやらなきゃいけない。
「もちろん約束は守るよ……。でも、少しだけでもいいから俺のこと真剣に考えて欲しい……」
右手を包むように握られ、此方を見つめてくる。考える以前に答えは決まっている。しかし、慎文の精一杯さから「嫌だ」とか「無理だ」と言って突っぱねることができなかった。
年月を重ねるごとに自分の中で慎文に対する警戒心が解けてきていることは自覚している。
それは、和幸が嫌だと言えばすぐに抱き着くのを止めるところとか、条件をだしてからは手以外には触れてこようとしない、忠誠さを見てきたからだ。
そんな奴の悲しむ顔を見たくないと思っている自分がいた。
「一応、考えてみるよ……」
「ほんとうにっ⁉」
同情が邪魔をして奴に本心を告げられず、答えを引き延ばす。奴の表情があからさまに華やいだのを見て余計に胸が締め付けられた。
「ああ、分かったら、顔洗うからさっさとあっち行けよ」
「うん」
和幸は慎文を右手で払って追いやると、奴は嬉しそうに頷いては、鼻歌を歌いながら洗面所を出て行った。
慎文を少しでも期待させてしまった罪悪感に苛まれる。
一方で、奴がこの恋人期間を経て、和幸が言葉で告げてやらなくても満足して、吹っ切れてくれないだろうかと都合のいいことを考えてしまっている自分もいた。
それも、奴の気持ちから逃げているのと変わらないのに……。
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