Snow melts

なめめ

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chapter4

chapter4-10

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寝不足の眼をこすりながら洗面台へと向かい、歯を磨く。洗面台へと向かう途中で奴が台所に立っていたような気がしたが、気まずさで声を掛けずに来てしまった。

 慎文は和幸のことが好きで仕方がなくてやってしまったこと。和幸が邪険に扱ったことで初恋に囚われたまま、気持ちを引きずってしまった慎文は二十代も後半を過ぎさせてしまった。そろそろ自分が舵を取って解放してやらないといけない。

 その為にはどうするのが奴にとって最良なのだろうか。
 歯を磨きながら、働かない頭をフル回転させ考えていたところで、背後から鏡越しに渦中の人の顔が映し出されて思わず声をあげた。驚きのあまり、唾液を吸い込んでしまい噎せ返る。

「ごほっごほ。おまっ……。急に出てくるなよ。びっくりするだろ」
「ごめん、カズくんさっき挨拶してくれなかったし。やっぱり軽蔑されてるのかなって思ったら気が気じゃなくて……」

 口を濯いで振り返ると、悲痛な面持ちで慎文が突っ立っている。確かに昨夜は自分に意識が向くあまり奴にとったら冷たく感じたのかもしれない。奴も奴で目の下に隈が出来ていたことから充分に睡眠がとれなかったのだろう。
 不安の様子を隠せない慎文と鏡の中で目線がかち合う。

和幸は歯ブラシを鏡前のスタンドに立てかけると鏡ではなく、右隣に並んでいる慎文の方へと向き直った。

「軽蔑はしてないから安心しろ」
「本当に?よかったあー」

 慎文が胸元に手を当てて大きく安堵の息を漏らす。

「まあ、だからと言ってお前が俺にしたことは一生許すつもりはないけどな」
「それは……。ごめんなさい。俺もカズくんの気持ちを考えずに行動して、傷つけてしまったことは凄く後悔してる。許されるとは思っていないけど俺、これ以上カズくんに嫌われたら生きていけない……」

 誰かを好きになって好き合って愛し合ったことのない慎文がゲームに勝ってまでも叶えたかった望み。

そんな奴と恋人ごっこをしたところで満足いくはずなどないのだろう。
自惚れているわけではないが、この期間が終わっても奴は好きだと言い続けてくるに違いなかった。

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