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chapter4
chapter4-9
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慎文と奴の先輩である男の話を聞いた和幸は「一旦、頭を整理させてくれ……」と言い残して自室へと籠った。
自室のベッドに腰を掛けて指を組んだ手に額を当てて考える。
慎文の昔話は奴に嫌悪感を抱いていた和幸の意識を変えるものだった。
それほどまでに奴を可哀相と言うべきか、奴も奴で被害にあった身というべきなのか和幸の心を複雑にさせた。和幸のことは小学校五年生に上がる頃からただの幼馴染としてではなく、恋愛対象として意識していたという。
奴が中学校に上がってもやたらと懐いてきていた故に、納得はできたが苦虫を噛み潰したような思いで聞いていた。
そんな慎文でも同性に好意を寄せてしまったことに後ろめたさを感じていたらしく、それなりに葛藤があったらしい。
その先輩とやらと関りを持つまでは、和幸への気持ちは内に秘めるものとしてしまっておくつもりでいた。中学校へと上がり、バスケ部に入部し二年になった年。
櫂理人とかいう、デパートで会った一学年上の男と同じ部活仲間の先輩が更衣室で性交渉をしていたのを見てしまったことをきっかけに、半ば強引に行為を迫られ男としての初めてを奪われたと話してきた。
そのうちに好意を寄せていた和幸のことも男に話してしまい、和幸のことをダシにして何度も行為を迫られ断れず、先輩との行為を止めたいと訴えた慎文は「カズくんと付き合えたら止めてやる」と言われ、焦りからあの時、和幸にキスを迫ったのだと告げられた。
和幸がキスを拒否した後も、寂しさも相まって先輩との関係を強く断ち切ることができず、先輩の卒業まで関係が続いていたことも赤裸々に話される。
慎文が話し終えた後「衝動的だったとはいえ、カズくんに不愉快な思いさせてごめんなさい。高校生の時も想いを伝えれば、カズくんは受け入れてくれると思ったから……。でも、地元に帰ってこないって知ってカズくんが遠くに行ってしまうようで不安になって……」と謝られたが、慎文の言葉に返してやれるほどの頭の整理は追いつかなかった。
和幸に好意を寄せていたとしても、あんな純粋で気弱だった慎文が性に関して、歪む原因になったのは間違いなく櫂だ。
慎文も被害者だっただけに百パーセント彼が悪いとは言い切れない。それに、あの時は自分も餓鬼だったとは言え、断り方はあったように感じた。
逃げずに慎文の気持ちと真っ向から向き合ってやれていれば奴の気持ちも清算できたかもしれない。
慎文が和幸を犯すようなこともなかったかもしれない。
アイツとどう接してやるのが正解なのだろう。
理由を聞いたからと言って和幸にした過ちは許せないにしても邪険に扱うには、あまりにも可哀相な気がして突き放すこともできない。
そんな答えの出ないことを永遠と考えては気づけば朝を迎えていた。
自室のベッドに腰を掛けて指を組んだ手に額を当てて考える。
慎文の昔話は奴に嫌悪感を抱いていた和幸の意識を変えるものだった。
それほどまでに奴を可哀相と言うべきか、奴も奴で被害にあった身というべきなのか和幸の心を複雑にさせた。和幸のことは小学校五年生に上がる頃からただの幼馴染としてではなく、恋愛対象として意識していたという。
奴が中学校に上がってもやたらと懐いてきていた故に、納得はできたが苦虫を噛み潰したような思いで聞いていた。
そんな慎文でも同性に好意を寄せてしまったことに後ろめたさを感じていたらしく、それなりに葛藤があったらしい。
その先輩とやらと関りを持つまでは、和幸への気持ちは内に秘めるものとしてしまっておくつもりでいた。中学校へと上がり、バスケ部に入部し二年になった年。
櫂理人とかいう、デパートで会った一学年上の男と同じ部活仲間の先輩が更衣室で性交渉をしていたのを見てしまったことをきっかけに、半ば強引に行為を迫られ男としての初めてを奪われたと話してきた。
そのうちに好意を寄せていた和幸のことも男に話してしまい、和幸のことをダシにして何度も行為を迫られ断れず、先輩との行為を止めたいと訴えた慎文は「カズくんと付き合えたら止めてやる」と言われ、焦りからあの時、和幸にキスを迫ったのだと告げられた。
和幸がキスを拒否した後も、寂しさも相まって先輩との関係を強く断ち切ることができず、先輩の卒業まで関係が続いていたことも赤裸々に話される。
慎文が話し終えた後「衝動的だったとはいえ、カズくんに不愉快な思いさせてごめんなさい。高校生の時も想いを伝えれば、カズくんは受け入れてくれると思ったから……。でも、地元に帰ってこないって知ってカズくんが遠くに行ってしまうようで不安になって……」と謝られたが、慎文の言葉に返してやれるほどの頭の整理は追いつかなかった。
和幸に好意を寄せていたとしても、あんな純粋で気弱だった慎文が性に関して、歪む原因になったのは間違いなく櫂だ。
慎文も被害者だっただけに百パーセント彼が悪いとは言い切れない。それに、あの時は自分も餓鬼だったとは言え、断り方はあったように感じた。
逃げずに慎文の気持ちと真っ向から向き合ってやれていれば奴の気持ちも清算できたかもしれない。
慎文が和幸を犯すようなこともなかったかもしれない。
アイツとどう接してやるのが正解なのだろう。
理由を聞いたからと言って和幸にした過ちは許せないにしても邪険に扱うには、あまりにも可哀相な気がして突き放すこともできない。
そんな答えの出ないことを永遠と考えては気づけば朝を迎えていた。
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