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chapter3
chapter3-7
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「母さんは相変わらず元気だよ。カズくんのお母さんはこの間、家に来てウチの母親と雑談してたかな……」
和幸の問いがきっかけとなったのか慎文が饒舌に近況報告を始める。
「カズくんのお母さんってカズくんに似て綺麗だよね。そうだ、カズくんは今年も年末年始は帰らないの?」
母親似て綺麗ならまだ分かるが息子に似て母親が綺麗って……。慎文の言葉のニュアンスに疑問を抱きながらも深く突っ込むのはやめた。慎文の主観は全て和幸中心なのだろう。
「帰らない。どうせまたお前の家族と集まるんだろ」
去年だって一昨年だって帰省していないのにもかかわらず問うてくる慎文が鬱陶しくて、苛立ちを覚えた和幸はテーブルにあった灰皿を自分の目の前でまで持ってきては上着のポケットから煙草を出して咥える。
火をつけようとライターを着火させた途端に慎文に灰皿を取り上げられてしまった。「ダメだ」と言わんばかりに頬を膨らませて険しい顔をする。
「帰って来てよ……。おばさんだって何年も顔見てないって心配しているし。それに、久しぶりにカズくんと年を越したいな」
煙草を阻止されたことと叶わぬ願望を口にする慎文に苛立ちに拍車がかかり、思わず舌打ちをした。
確かにこれから飯だというのに吸うのも配慮がなかったとは言え、此奴のオヤジや兄貴は吸っていたのに和幸にだけダメだと言われるのが腑に落ちない。
観念して深く溜息をつきながら咥えた煙草を仕舞うと注文していた珈琲が運ばれてきたので、口寂しさは紛らわせそうだった。
「俺は、正月は大人しく過ごしたい派なの」
「小さい頃はカズくんだって楽しそうに遊んでいたじゃん。あの頃みたいにまた楽しくしようよ……」
「それはガキの頃の話だろ。今は大人だぞ?つーか俺はお前に会いたくないから行かないのが九割占めてんの。おわかり?」
幼い頃の思い出を話していたところで今は立派な大人だし、お互いに騒いで遊ぶ年齢でもない。想い出に浸ろうと慎文を引き戻す為にわざと棘のある言い草で返してやると、怒り悲しんだように表情を歪ませていた。
和幸の問いがきっかけとなったのか慎文が饒舌に近況報告を始める。
「カズくんのお母さんってカズくんに似て綺麗だよね。そうだ、カズくんは今年も年末年始は帰らないの?」
母親似て綺麗ならまだ分かるが息子に似て母親が綺麗って……。慎文の言葉のニュアンスに疑問を抱きながらも深く突っ込むのはやめた。慎文の主観は全て和幸中心なのだろう。
「帰らない。どうせまたお前の家族と集まるんだろ」
去年だって一昨年だって帰省していないのにもかかわらず問うてくる慎文が鬱陶しくて、苛立ちを覚えた和幸はテーブルにあった灰皿を自分の目の前でまで持ってきては上着のポケットから煙草を出して咥える。
火をつけようとライターを着火させた途端に慎文に灰皿を取り上げられてしまった。「ダメだ」と言わんばかりに頬を膨らませて険しい顔をする。
「帰って来てよ……。おばさんだって何年も顔見てないって心配しているし。それに、久しぶりにカズくんと年を越したいな」
煙草を阻止されたことと叶わぬ願望を口にする慎文に苛立ちに拍車がかかり、思わず舌打ちをした。
確かにこれから飯だというのに吸うのも配慮がなかったとは言え、此奴のオヤジや兄貴は吸っていたのに和幸にだけダメだと言われるのが腑に落ちない。
観念して深く溜息をつきながら咥えた煙草を仕舞うと注文していた珈琲が運ばれてきたので、口寂しさは紛らわせそうだった。
「俺は、正月は大人しく過ごしたい派なの」
「小さい頃はカズくんだって楽しそうに遊んでいたじゃん。あの頃みたいにまた楽しくしようよ……」
「それはガキの頃の話だろ。今は大人だぞ?つーか俺はお前に会いたくないから行かないのが九割占めてんの。おわかり?」
幼い頃の思い出を話していたところで今は立派な大人だし、お互いに騒いで遊ぶ年齢でもない。想い出に浸ろうと慎文を引き戻す為にわざと棘のある言い草で返してやると、怒り悲しんだように表情を歪ませていた。
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