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chapter3
chapter3-4
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食器を洗い終え、慎文とともに市街地の方へと繰り出す。家電や雑貨をみてウィンドーショッピングを楽しんでから大きな商業施設の中にあるゲームセンターへとたどり着いた。
慎文の希望通りにゲームセンター内にあるレースゲームの台の椅子に腰かける。隣の台の椅子には慎文が瞳を輝かせながら座っていた。
何年ぶりだろうか。大学生のとき、友人と遊び歩いていた時以来のような気がする。当然その時も友人と勝負してほぼ勝っていた記憶があった。
あれだけ慎文の前ではいい大人がと思っていたけど、いざハンドルを目の前にして、昔の血が騒いでワクワクとした。
「ねぇ、カズくん」
コインを入れようとしたところで慎文に問われて顔を上げる。
「なんだ?」
「俺が勝ったら、俺の望みを聞いてほしい」
目を伏せながらそう提案してきた慎文の意図がようやく理解できた。急にゲームをしたいと誘ってきたのは、この為だったのだと。
けれど、この勝負には負けない自信があった。
「へぇ。いいけど。じゃあ、その代わりにお前が負けたらすぐに実家に帰れよな」
「うん、いいよ」
どうせ勝利は見えているので望みの内容を訊いてやる必要もない。
しかし、慎文だけ対価があるのは面白くなくて、和幸は自分への対価を提案すると、慎文は躊躇いながらも頷いては、交渉が成立した。
一日中牧場で牛の世話をしていてゲームと縁もゆかりもない奴に負ける訳にいかない。和幸の闘争心に火がつく。
ゲームを開始してカウントダウンと共にアクセルを踏むと画面上の車が発進する。最初は順調であった。
慎文の前をキープして独走していたし、このまま最後まで行けば圧勝だった。
そう油断していると、慎文が怒涛の追い上げをみせてきては、カーチェイスが始まる。
和幸は声をあげながらもハンドルを回すが、隣からは一切何も声が聞こえなかったので一瞬だけ画面から目線を逸らすと、奴は真剣にハンドルを握って画面に集中している。
自分も負けてられないと奮起したものの目を離してしまったのが運の尽き、奴に弾き飛ばされてバランスを崩すと、瞬く間にクラッシュしてしまい、奴に優勝を奪われてしまった。
和幸はショックのあまり、ハンドルに拳を叩いて、額につける。ただの友人同士の戦いであったら何とも思わないのに、こんなに敗北が悔しいのは相手が奴であるからだった。
「勝った‼カズくんに勝ったよ‼」
ゲームが終わるなり、慎文は瞳をきらきらと輝かせながら此方に話し掛けてくる。
「お前ってそんなにゲーム巧かったっけ」
「カズくんがこういうゲームが得意なのを知っていたから、カズくんに会えないときは俺の隣町のデパートに連れて行ってもらって遊んでいたんだ。いつかカズくんに褒めてもらいたくて……」
次男坊の負けず嫌い説は有力なのか、意図もたやすく和幸の実力を追い抜かしていく奴が怖い。
そして、俺に対する執着心も。勝てると自信過剰に意気込んで奴の対価を受けてしまった自分に後悔する。
和幸が落ち込む暇もなく、上機嫌な奴は、ハンドルを握っていた和幸の手を強引に取ると、両手で包んできた。
慎文の希望通りにゲームセンター内にあるレースゲームの台の椅子に腰かける。隣の台の椅子には慎文が瞳を輝かせながら座っていた。
何年ぶりだろうか。大学生のとき、友人と遊び歩いていた時以来のような気がする。当然その時も友人と勝負してほぼ勝っていた記憶があった。
あれだけ慎文の前ではいい大人がと思っていたけど、いざハンドルを目の前にして、昔の血が騒いでワクワクとした。
「ねぇ、カズくん」
コインを入れようとしたところで慎文に問われて顔を上げる。
「なんだ?」
「俺が勝ったら、俺の望みを聞いてほしい」
目を伏せながらそう提案してきた慎文の意図がようやく理解できた。急にゲームをしたいと誘ってきたのは、この為だったのだと。
けれど、この勝負には負けない自信があった。
「へぇ。いいけど。じゃあ、その代わりにお前が負けたらすぐに実家に帰れよな」
「うん、いいよ」
どうせ勝利は見えているので望みの内容を訊いてやる必要もない。
しかし、慎文だけ対価があるのは面白くなくて、和幸は自分への対価を提案すると、慎文は躊躇いながらも頷いては、交渉が成立した。
一日中牧場で牛の世話をしていてゲームと縁もゆかりもない奴に負ける訳にいかない。和幸の闘争心に火がつく。
ゲームを開始してカウントダウンと共にアクセルを踏むと画面上の車が発進する。最初は順調であった。
慎文の前をキープして独走していたし、このまま最後まで行けば圧勝だった。
そう油断していると、慎文が怒涛の追い上げをみせてきては、カーチェイスが始まる。
和幸は声をあげながらもハンドルを回すが、隣からは一切何も声が聞こえなかったので一瞬だけ画面から目線を逸らすと、奴は真剣にハンドルを握って画面に集中している。
自分も負けてられないと奮起したものの目を離してしまったのが運の尽き、奴に弾き飛ばされてバランスを崩すと、瞬く間にクラッシュしてしまい、奴に優勝を奪われてしまった。
和幸はショックのあまり、ハンドルに拳を叩いて、額につける。ただの友人同士の戦いであったら何とも思わないのに、こんなに敗北が悔しいのは相手が奴であるからだった。
「勝った‼カズくんに勝ったよ‼」
ゲームが終わるなり、慎文は瞳をきらきらと輝かせながら此方に話し掛けてくる。
「お前ってそんなにゲーム巧かったっけ」
「カズくんがこういうゲームが得意なのを知っていたから、カズくんに会えないときは俺の隣町のデパートに連れて行ってもらって遊んでいたんだ。いつかカズくんに褒めてもらいたくて……」
次男坊の負けず嫌い説は有力なのか、意図もたやすく和幸の実力を追い抜かしていく奴が怖い。
そして、俺に対する執着心も。勝てると自信過剰に意気込んで奴の対価を受けてしまった自分に後悔する。
和幸が落ち込む暇もなく、上機嫌な奴は、ハンドルを握っていた和幸の手を強引に取ると、両手で包んできた。
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