242 / 243
律仁さんと先輩と、藤咲と
30-7
しおりを挟む
「いい加減にしてもらえますか?律仁さんは大事な俺の恋人だし、尚弥は俺の唯一の友達です。この間のライブであんな素敵なもの観させてくれて俺感動したんです……なので仲良くしてもえますか。先輩も先輩です。いい加減、尚弥と仲直りしてくださいっ」
渉太が声を何時もより荒らげ訴えると、二人の口論がピタリと収まって、三人の視線が集まる。
こんな高級焼肉店で声を荒らげて怒るなんてことは滅多にない。いや、人生で初めてだった。個室で良かったと心底思うが、そんなの正直どうでもよかった。
しーんと静まり返える。一体に俺は間違ったことを言ったのだろうか。律仁さんも尚弥も大樹先輩も俺の中で大切な人達には変わりない。そんな大切な人達に囲まれて、こんな光景は見たくないのが本心だった。
こうやって偶然でも出会えた縁があるのだから……。
静寂の中、最初に割ってきたのは律仁さんだった。渉太自身は至って真剣なのにクスリと笑い出すので「なんで笑ってんですか?」と問いただすと「やっぱり俺の彼氏は最高だなーって」と返ってきて、勢いで怒っていたはずなのに途端に恥ずかしくなった渉太は俯いて耳朶を真っ赤にした。
「渉太って泣いてるか、怒ってるかのどっちかだよね。本当可愛い」
「二人の前でやめてください」
「馬鹿馬鹿しい」と溜息を吐く尚弥の隣で、先輩は目を丸くして暫く唖然としていたが律仁さんの笑いに誘われるように笑うと「お前ら本当に仲良いなー」と場の空気が和んだみたいで、結果オーライだったのだろうかと複雑な気持ちだった。
そんな賑わう中、店員さんがタイミングよく個室に入ってきては、今回のメインである注文したお肉を運んできたので渉太は大人しく座席に着いた。
渉太が声を何時もより荒らげ訴えると、二人の口論がピタリと収まって、三人の視線が集まる。
こんな高級焼肉店で声を荒らげて怒るなんてことは滅多にない。いや、人生で初めてだった。個室で良かったと心底思うが、そんなの正直どうでもよかった。
しーんと静まり返える。一体に俺は間違ったことを言ったのだろうか。律仁さんも尚弥も大樹先輩も俺の中で大切な人達には変わりない。そんな大切な人達に囲まれて、こんな光景は見たくないのが本心だった。
こうやって偶然でも出会えた縁があるのだから……。
静寂の中、最初に割ってきたのは律仁さんだった。渉太自身は至って真剣なのにクスリと笑い出すので「なんで笑ってんですか?」と問いただすと「やっぱり俺の彼氏は最高だなーって」と返ってきて、勢いで怒っていたはずなのに途端に恥ずかしくなった渉太は俯いて耳朶を真っ赤にした。
「渉太って泣いてるか、怒ってるかのどっちかだよね。本当可愛い」
「二人の前でやめてください」
「馬鹿馬鹿しい」と溜息を吐く尚弥の隣で、先輩は目を丸くして暫く唖然としていたが律仁さんの笑いに誘われるように笑うと「お前ら本当に仲良いなー」と場の空気が和んだみたいで、結果オーライだったのだろうかと複雑な気持ちだった。
そんな賑わう中、店員さんがタイミングよく個室に入ってきては、今回のメインである注文したお肉を運んできたので渉太は大人しく座席に着いた。
0
お気に入りに追加
84
あなたにおすすめの小説
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
あなたの隣で初めての恋を知る
ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

林檎を並べても、
ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。
二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。
ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。
彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる