憧れはすぐ側に

なめめ

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律仁さんと先輩と、藤咲と

30-5

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「へ?それ渉太、どういうこと?」

恐る恐る隣に目線を移すと律仁さんは此方を見て不穏な雰囲気を漂わせていた。
声音から動揺している。ちゃんと律仁さんが心配するような事などないと、事の経由を説明しなきゃいけないのに不意の出来事に冷静さを欠いてしまった渉太は、口をどもらせてしまう。

「違いますっ。いや、違くないけど……隠してた訳じゃないんです」

「僕と渉太は昔、好き同士だったから一緒にいたら自然とそうなるよね」

藤咲の意味深なことを匂わせる言葉で一瞬にして変な汗が吹き出てくる。確かに好き同士ではあったけど、だからってその先はないと、この間の観覧車で完結したはずだ。訝しんだ目で此方を見つめてくる律仁さんの視線に動揺している渉太の傍ら、藤咲は澄ました顔をしている。

藤咲はどういうつもりなんだろうか……。


「尚弥……ご、誤解生むようなこと言わないでよ。観覧車で尚弥と学生の頃の話をしただけで、律仁さんが疑うようなことは何も無いです」

これじゃあまるで疚しいことがあったみたいな言い訳に聞こえても仕方がないが、そんな事を考えるよりも弁解するために本当のことを話すのに精一杯だった。

「尚弥?」
「あ、つい昔のくせで……」

動揺に動揺を重ね、今まで律仁さんの前では藤咲くんと呼んでいたのをうっかり昔の馴染みで名前で呼んでしまっていたことに律仁さんのより一層の深まる眉間の皺で気がつく。

どうしたら信じて貰えるか、何をしても裏目に出てしまうかと八方塞がりでいると、向かいの席から笑い声が聞こえてきた。

「渉太って揶揄いがいあって面白いよね」

口元を抑えて控えめではあるが、藤咲が声を出して笑っている。この渉太が慌てている状況を面白がっているようだった。

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