218 / 243
甘くて醒めない気持ち
29-4
しおりを挟む
「藤咲くんと話して俺が藤咲くんが怖かったのは自分が彼と向き合わず逃げていたからだったんだなって気づいたんです……」
俺が藤咲に『友達になれていたか』と聞いたら、『なれていた』と返してくれた。あの穏やかな表情をしていた藤咲には嘘や偽りなんてないと思う。
「話してみたら彼も彼なりに苦しんでいて……藤咲くんのことをもっと理解したいと思ったら怖いとか言う感情はなくなってました」
あの時間、藤咲の苦しみを聞いて、痛みを知って、あの時の自分がもう少し……とか後悔はあるけど、ちゃんと想いを聞くことができた。最後に藤咲が心からの笑顔を見せてくれた姿を見て長年に渡って心に絡まって鍵のかかっていた鎖が取り除かれたようなそんな気持ちになれたのは間違いなかった。
「藤咲くんのことは好きだったけど、恋人になりたいとかよりも彼の友達でいれてたことの方が嬉しかったんです。藤咲くんに俺は藤咲くんの友達になれてたって言われて気づいたというか……藤咲くんはきっと誰かに助けて欲しいけど、それは俺じゃない。だから俺は俺で前を見なきゃって」
俺は藤咲くんの気持ちを理解出来ても救えることはできない。そっと寄り添ってあげることくらいしかできない。でもそれじゃあきっと彼は何も克服することが出来ないんだろう。
「そっかー。渉太、なんかどんどん男前になってるね」
頬杖をついている、律仁さんの双眸に見つめられる。
「そ、そうですか?そんな、律仁さんの方が男前じゃないですかっ……」
男前だと世間に認められている人に男前なんて言われるのは恐れ多くて、渉太は言われ慣れないことに動揺する。
強く否定をしても、律仁さんは一切動じずに
首をゆっくり左右に振った。
「ううん。渉太は元から優しかったけど、どこか弱くて放って置けなかったから俺が守らなきゃってなってたけど、いまは、優しさの中にも芯の強さがあって安心して見ていられるよ」
「嫌ですか?」
「嫌じゃないよ。寧ろだんだん格好よくなる彼氏にドキドキしちゃうくらいだよ」
推しの系統が変わって離れて行くファンが居るように、律仁さんの中で自分も変わったと見られた時のマイナスな事を考えてしまい、少しだけ不安を過ぎらせてしまったが、一撃でそんなのを打ち消される。
「言い過ぎですっ……」
「そんなことないよ。先陣切って藤咲くんを説得してくれた渉太は俺の自慢の恋人だよ。ありがとう。俺だけじゃなくて、そうやって人の事を考えられる渉太が好きだよ」
不安を抱いてしまった自分と直球でそれを打ち消してくる律仁さんに羞恥心を覚え、俯く。男前だとか格好良いだとか、数十倍もドキドキさせられているのは俺の方だった。
こういう自分が浮ついてしまう言葉をサラっと言いのけてしまう律仁に狼狽えてながらも内心では凄く喜んでいる自分もいる。
「俺だって、律仁さんは自慢の恋人です……
こんなに俺に行動力を与えてくれているのは律仁さんのおかげです」
自分の為だけだったら、藤咲とここまで向き合うことなんて出来てなかったと思う。律仁さんが居たから、律のコンサートの成功を願っていたから動けた。
律である彼も、彼自身も俺の好きな人だから……。
俺が藤咲に『友達になれていたか』と聞いたら、『なれていた』と返してくれた。あの穏やかな表情をしていた藤咲には嘘や偽りなんてないと思う。
「話してみたら彼も彼なりに苦しんでいて……藤咲くんのことをもっと理解したいと思ったら怖いとか言う感情はなくなってました」
あの時間、藤咲の苦しみを聞いて、痛みを知って、あの時の自分がもう少し……とか後悔はあるけど、ちゃんと想いを聞くことができた。最後に藤咲が心からの笑顔を見せてくれた姿を見て長年に渡って心に絡まって鍵のかかっていた鎖が取り除かれたようなそんな気持ちになれたのは間違いなかった。
「藤咲くんのことは好きだったけど、恋人になりたいとかよりも彼の友達でいれてたことの方が嬉しかったんです。藤咲くんに俺は藤咲くんの友達になれてたって言われて気づいたというか……藤咲くんはきっと誰かに助けて欲しいけど、それは俺じゃない。だから俺は俺で前を見なきゃって」
俺は藤咲くんの気持ちを理解出来ても救えることはできない。そっと寄り添ってあげることくらいしかできない。でもそれじゃあきっと彼は何も克服することが出来ないんだろう。
「そっかー。渉太、なんかどんどん男前になってるね」
頬杖をついている、律仁さんの双眸に見つめられる。
「そ、そうですか?そんな、律仁さんの方が男前じゃないですかっ……」
男前だと世間に認められている人に男前なんて言われるのは恐れ多くて、渉太は言われ慣れないことに動揺する。
強く否定をしても、律仁さんは一切動じずに
首をゆっくり左右に振った。
「ううん。渉太は元から優しかったけど、どこか弱くて放って置けなかったから俺が守らなきゃってなってたけど、いまは、優しさの中にも芯の強さがあって安心して見ていられるよ」
「嫌ですか?」
「嫌じゃないよ。寧ろだんだん格好よくなる彼氏にドキドキしちゃうくらいだよ」
推しの系統が変わって離れて行くファンが居るように、律仁さんの中で自分も変わったと見られた時のマイナスな事を考えてしまい、少しだけ不安を過ぎらせてしまったが、一撃でそんなのを打ち消される。
「言い過ぎですっ……」
「そんなことないよ。先陣切って藤咲くんを説得してくれた渉太は俺の自慢の恋人だよ。ありがとう。俺だけじゃなくて、そうやって人の事を考えられる渉太が好きだよ」
不安を抱いてしまった自分と直球でそれを打ち消してくる律仁さんに羞恥心を覚え、俯く。男前だとか格好良いだとか、数十倍もドキドキさせられているのは俺の方だった。
こういう自分が浮ついてしまう言葉をサラっと言いのけてしまう律仁に狼狽えてながらも内心では凄く喜んでいる自分もいる。
「俺だって、律仁さんは自慢の恋人です……
こんなに俺に行動力を与えてくれているのは律仁さんのおかげです」
自分の為だけだったら、藤咲とここまで向き合うことなんて出来てなかったと思う。律仁さんが居たから、律のコンサートの成功を願っていたから動けた。
律である彼も、彼自身も俺の好きな人だから……。
0
お気に入りに追加
79
あなたにおすすめの小説
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
キンモクセイは夏の記憶とともに
広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。
小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。
田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。
そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。
純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。
しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。
「俺になんてもったいない!」
素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。
性描写のある話は【※】をつけていきます。
初夜の翌朝失踪する受けの話
春野ひより
BL
家の事情で8歳年上の男と結婚することになった直巳。婚約者の恵はカッコいいうえに優しくて直巳は彼に恋をしている。けれど彼には別に好きな人がいて…?
タイトル通り初夜の翌朝攻めの前から姿を消して、案の定攻めに連れ戻される話。
歳上穏やか執着攻め×頑固な健気受け
離したくない、離して欲しくない
mahiro
BL
自宅と家の往復を繰り返していた所に飲み会の誘いが入った。
久しぶりに友達や学生の頃の先輩方とも会いたかったが、その日も仕事が夜中まで入っていたため断った。
そんなある日、社内で女性社員が芸能人が来ると話しているのを耳にした。
テレビなんて観ていないからどうせ名前を聞いたところで誰か分からないだろ、と思いあまり気にしなかった。
翌日の夜、外での仕事を終えて社内に戻って来るといつものように誰もいなかった。
そんな所に『すみません』と言う声が聞こえた。
クズ彼氏にサヨナラして一途な攻めに告白される話
雨宮里玖
BL
密かに好きだった一条と成り行きで恋人同士になった真下。恋人になったはいいが、一条の態度は冷ややかで、真下は耐えきれずにこのことを塔矢に相談する。真下の事を一途に想っていた塔矢は一条に腹を立て、復讐を開始する——。
塔矢(21)攻。大学生&俳優業。一途に真下が好き。
真下(21)受。大学生。一条と恋人同士になるが早くも後悔。
一条廉(21)大学生。モテる。イケメン。真下のクズ彼氏。
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる