憧れはすぐ側に

なめめ

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甘くて醒めない気持ち

29-1

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律の10周年コンサートの本編が終わり、会場のお客さんがアンコールを求める声を向ける中、自分たちの周りの座席の人達はぞろぞろと帰っていく。

中にはテレビで見覚えがあるような人物もいたが、渉太は律以外の芸能人には興味が薄いので、大物俳優とかじゃない限り、そこら辺は疎い。

それよりも自分の辺りが居なくなるので、自分も出たほうがいいのではないかとさえ思えてくる。そんな渉太の様子を見てからか、先輩から「渉太はもうちょっと、律の姿見たいだろ?」と問われたので、考えていたことを止めて大きく首を振って頷いた。

あまり最後までいると会場を出る人で混雑するのを読んで、避けるためにアンコールを少しだけ観て会場を後にした。先輩に藤咲との話、律のコンサートについて話しながら同じ電車に乗り、大学の最寄りで降りると、大学に用事があるからと言って先輩と別れる。

時刻は22時半、こんな時間まで勉強熱心な先輩に関心しながら、駅の駐輪場で自転車の鍵を外していると、ポケットのスマホが鳴ったことに気づいて確認する。アプリを開くと律仁さんからのメッセージが来ていた。

『渉太、もう家?』
「今、最寄り駅に着いて家に帰るところです」

送って直ぐに既読がついたので、驚いていると、時間をあまり置かないうちに直ぐに返事が返される。

『じゃあ、アトリエに来れる?』
「大丈夫ですけど律仁さん、疲れてるんじゃ……」
『渉太に会いたいからさ、じゃあ待ってて。俺も真っ直ぐ向かうから』

アライグマが投げキッスをしているスタンプと共に送られてきては、誰も見ていないはずなのに妙に恥ずかしくて、思わず周りを見渡してしまう。

渉太は律仁さんの愛情表現にむず痒さを覚えながらも、律仁さんのこういう所は意地らしくて愛おしい。今日は会えないと思っていたので会える約束は素直に嬉しかった。

ほぼコンサートは見れてはいなかったけど、あの曲の感動は本人に伝えたい。せめてメッセージだけは今日のうちに残そうと思っていたので、熱が覚めないうちに伝えることが出来ると思うと胸が高鳴っていた。
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