憧れはすぐ側に

なめめ

文字の大きさ
上 下
188 / 243
初めての撮影現場

25-12

しおりを挟む
藤咲とまともに会うのは、大学で見かけたことを抜かせばこれで2回目。しかし、彼から向けられてる視線は相変わらず冷たくて、渉太を萎縮させていた。

慌てて離れたものの、確実に今の律仁さんとの距離感はただ会話をしていたのとは明らかに不自然。藤咲も気がついているようでとてもじゃないけど彼から険悪な雰囲気が醸し出されている。

「普通、いくら恋人だからって唯の一般人が撮影現場までついてくる?常識としてどうなの?」

藤咲は腕を組み、眉を下げて、皮肉ったように口角を上げて問いかけてくる。

「ノックして返信もないのに、入ってくる尚弥くんもどうかと思うけど?」

藤咲の挑発的な言葉を仕返すように律仁さんが乗っかる。

言われた本人も薄ら笑いを浮かべているし、
律仁さんは藤咲と上手くやれていると言っていたが、本当に仲良く出来ているのか疑いたくなるほど、不穏な空気に渉太は頭を抱えたくなった。

撮影前なのにこんな険悪ムードじゃ、仕事に影響しないか心配になる。
やっぱり俺は来ない方が良かったんじゃないだろうか……。

「尚弥くん相変わらず渉太には当たりが強いね。一応訂正しておくけど、ついてきたんじゃなくて、俺が連れてきたんだよ」

「仕事とプライベートの区別もつけられないなんて、つくづく貴方には幻滅します」

決して律仁さんは俺にかまけて、本業を疎かにするようなそんな中途半端な気持ちで仕事をしている訳じゃない。

メイク中も対談も兼ねた撮影だからか、藤咲くんのピアノの動画や彼のことを調べて勉強していたのを渉太は知っている。

「尚弥くん……あのさ」

「な、尚弥。違うんだっ。俺が尚弥に会って話したかったから……律仁さんが気を利かせてくれて入れてもらっただけなんだ。律さんは悪くない。それに律仁さんは尚弥と中途半端な気持ちで仕事している訳じゃないよ……」

律仁さんの言葉を遮って、渉太は緊張で心と身体を震わせながらも藤咲の目を見て話す。
藤咲に向かって強気に出るのは正直怖い。
だけど、俺のことならまだしも律仁さんのことまで、悪く言われるのは耐えられなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

キンモクセイは夏の記憶とともに

広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。 小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。 田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。 そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。 純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。 しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。 「俺になんてもったいない!」 素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。 性描写のある話は【※】をつけていきます。

愛などもう求めない

白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

理香は俺のカノジョじゃねえ

中屋沙鳥
BL
篠原亮は料理が得意な高校3年生。受験生なのに卒業後に兄の周と結婚する予定の遠山理香に料理を教えてやらなければならなくなった。弁当を作ってやったり一緒に帰ったり…理香が18歳になるまではなぜか兄のカノジョだということはみんなに内緒にしなければならない。そのため友だちでイケメンの櫻井和樹やチャラ男の大宮司から亮が理香と付き合ってるんじゃないかと疑われてしまうことに。そうこうしているうちに和樹の様子がおかしくなって?口の悪い高校生男子の学生ライフ/男女CPあります。

氷の騎士団長様の悪妻とかイヤなので離婚しようと思います

黄金 
BL
目が覚めたら、ここは読んでたBL漫画の世界。冷静冷淡な氷の騎士団長様の妻になっていた。しかもその役は名前も出ない悪妻! だったら離婚したい! ユンネの野望は離婚、漫画の主人公を見たい、という二つの事。 お供に老侍従ソマルデを伴って、主人公がいる王宮に向かうのだった。 本編61話まで 番外編 なんか長くなってます。お付き合い下されば幸いです。 ※細目キャラが好きなので書いてます。    多くの方に読んでいただき嬉しいです。  コメント、お気に入り、しおり、イイねを沢山有難うございます。    

処理中です...