憧れはすぐ側に

なめめ

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初めての撮影現場

25-1

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尚弥と再会した日から日が経ち、暑い夏が過ぎ去り秋の兆しが見え始めた頃。

渉太は大学の入学式で買ったスーツにネクタイを絞めて我ながら着慣れない服装に窮屈さを抱きながら渉太は広いスタジオの片隅に突っ立っていた。
照明スタッフさんやらカメラマンさんなどなど大勢の人が慌ただしく動いている様子が見られる。

撮影場所は都内から2時間程の山の上の別荘。
例えるならばリスやクマ、ネコやら小さな動物達が可愛いお洋服を着て住んでいそうなそんな家。

部屋の広いリビング空間にはグランドピアノが置かれ、その先には外が一望できるテラスがある。

少し目線を戻すとピアノの前に置かれた二つの椅子の右側に立っては一際オーラを放ってヘアメイクさんに手直しをして貰っている律の姿があった。

思わず見惚れてしまうほど、白い上下のセットアップのジャケットが似合っている。
髪型もいつもはさらっと流しているが、前髪をかきあげて額が出るようなアップスタイルにドキドキしてしまう。

額が出ていて顔のパーツがはっきりと分かるせいか遠くから見ても目鼻立ちといい、羨ましいくらいに整っている。まさに黄金比率じゃないだろうか。

不意に目が合い、律に微笑まれては更に渉太の胸がキュンと矢で射抜かれたかのような感覚に気絶しそうになった。あくまで仕事現場であって気を緩ませて綻んではいけない。

渉太は慌てて逸らしては、俯いて律を見ないようにしていた。

これから、律と藤咲の対談撮影になる。
律はこの冬から10周年ファン感謝祭の締めくくりとして全国ツアーを控えていた。
藤咲とはそこのファイナル公演でコラボするらしい……。

これは既に情報は公開済で、渉太も律と藤咲との仕事の全貌はメディアで知った。

恋人だからって律の情報を、律を支えてきたファンよりも早く知りたいなんて思わない。
自分もファンとしては、他と違う特別扱いなんていらなかった。
律仁さんといるときはあまり律の話をしたくないし、律仁さんだってしたがらない。

プライベートの律仁さんと区別はつけているつもりだ。

そんな自分が初めて見る雑誌の撮影現場に居合わせて、律にドキドキしていることに矛盾をしているが目的はそうじゃなかった。
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