169 / 243
藤咲尚弥のこと
24-2
しおりを挟む
幾ら表面上では大丈夫そうに振舞っていても、やっぱりそんなことを調べてるなんて知ったら流石に引くよなー。
同性同士の付き合いに偏見がある人は少なからずはいるから……。
「だから、成功したのかなーって気になっちゃって。でもそんなことイチイチ話したくないよね」
渉太は恥ずかしさと、何処まで彼女に話すべきなのか考えては黙り込んでいると、花井さんは諦めたように「じゃあ、またバイトでね」と言って、その場を立ち去ろうとしていた。
「あの……花井さん、こういう話って嫌じゃないの?」
渉太は咄嗟に去りゆく背中に声を掛ける。
「全然。むしろ応援してるくらいだけど。渉太くんってさ、なんか庇いたくなっちゃうんだよね。ほら、小動物を愛でる感覚?」
花井さんは振り返ってくると、ケロッとした様子でそう応えた。
以前、大樹先輩にもそんなこと言われていたような気がする……。決してからかっている訳でも皮肉っているわけではないのだと判るにしても喜ぶべきなのか、複雑な気持ちだった。
「それに、ほら。渉太くん、彼氏の迎えがいる時と居ない時の『お疲れ様です』のトーンが明らかに違うし、嬉しそうに帰っていくからなんか、一生懸命に恋してて可愛いなーって、だからなんか頑張ってほしくて」
「……っ!?」
表では嬉しくてニヤけそうな顔も平常心を保って上手く取り繕っていたと思っていたが、花井さんにはお見通しのようだった。
女性の観察力は鋭いとはよく言うが、正しく頭が上がらない。
「男の子なのに可愛いとか嬉しくないよね。ごめんね」
渉太が何も返せずにいたせいか、花井さんは眉を下げて申し訳なさそうに謝ってきた。
別に不愉快に思ったわけじゃない、寧ろそんな風に思われていたのは嬉しいくらい。
誰かに応援してもらえるのは同性が好きな自分でも、恋をしていてもいいんだと思えるから。
「花井さん、ありがとう」
渉太は満面の笑顔で彼女にお礼を告げると、
彼女は目を見開き頬を染め、はにかんでは、「またね」と言い残して講義室を出ていった。
同性同士の付き合いに偏見がある人は少なからずはいるから……。
「だから、成功したのかなーって気になっちゃって。でもそんなことイチイチ話したくないよね」
渉太は恥ずかしさと、何処まで彼女に話すべきなのか考えては黙り込んでいると、花井さんは諦めたように「じゃあ、またバイトでね」と言って、その場を立ち去ろうとしていた。
「あの……花井さん、こういう話って嫌じゃないの?」
渉太は咄嗟に去りゆく背中に声を掛ける。
「全然。むしろ応援してるくらいだけど。渉太くんってさ、なんか庇いたくなっちゃうんだよね。ほら、小動物を愛でる感覚?」
花井さんは振り返ってくると、ケロッとした様子でそう応えた。
以前、大樹先輩にもそんなこと言われていたような気がする……。決してからかっている訳でも皮肉っているわけではないのだと判るにしても喜ぶべきなのか、複雑な気持ちだった。
「それに、ほら。渉太くん、彼氏の迎えがいる時と居ない時の『お疲れ様です』のトーンが明らかに違うし、嬉しそうに帰っていくからなんか、一生懸命に恋してて可愛いなーって、だからなんか頑張ってほしくて」
「……っ!?」
表では嬉しくてニヤけそうな顔も平常心を保って上手く取り繕っていたと思っていたが、花井さんにはお見通しのようだった。
女性の観察力は鋭いとはよく言うが、正しく頭が上がらない。
「男の子なのに可愛いとか嬉しくないよね。ごめんね」
渉太が何も返せずにいたせいか、花井さんは眉を下げて申し訳なさそうに謝ってきた。
別に不愉快に思ったわけじゃない、寧ろそんな風に思われていたのは嬉しいくらい。
誰かに応援してもらえるのは同性が好きな自分でも、恋をしていてもいいんだと思えるから。
「花井さん、ありがとう」
渉太は満面の笑顔で彼女にお礼を告げると、
彼女は目を見開き頬を染め、はにかんでは、「またね」と言い残して講義室を出ていった。
0
お気に入りに追加
84
あなたにおすすめの小説


キンモクセイは夏の記憶とともに
広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。
小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。
田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。
そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。
純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。
しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。
「俺になんてもったいない!」
素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。
性描写のある話は【※】をつけていきます。


俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。

【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。

黄色い水仙を君に贈る
えんがわ
BL
──────────
「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」
「ああ、そうだな」
「っ……ばいばい……」
俺は……ただっ……
「うわああああああああ!」
君に愛して欲しかっただけなのに……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる