159 / 286
ピアノの戦慄
22-6
しおりを挟む
「ホントに?」
更に覗き込んで様子を伺ってくる律仁さんに、渉太は一度唇を強く噛み締めると顔を勢い良く上げては、ぎこちない笑顔で「本当に大丈夫なので戻りましょう」と応えてみせた。
何事もなかったかのようにその場を立ち去ろうと律仁さんを避けて出口へと向かおうとしたが、途端に右手首を捕まれる。
振り返って立ち止まると、律仁さんの表情は変わらず自分を見据えたままだった。
「渉太……無理にとは言わないけど、何かあったならちゃんと話して?俺は渉太が困ってたら力になりたい」
「………」
律仁さんの優しい言葉に感情が溢れて吐露したくなる。視線から目を逸らそうとしても、律仁さんの真剣な瞳は、優しくも鋭くて自分を逃がす選択肢を与えてくれない。
自分が話したところでどうにかなるわけでも
ないし、尚弥との仕事を辞めてなんて言うつもりもないし、辞めて欲しくない。
胸の内で葛藤しながらも、このまま隠している訳にはいかないような気がして、渉太は胸元にグッと手を当てて大きく深呼吸をすると、見据えてきている律仁さんと視線を合わせた。
「ふ、藤咲尚弥くん……は俺の同級生なんです……」
口から吐く言葉が震える。
今まで避けるかのように絶対声にはしなかった。『藤咲尚弥』なんて名前を口に出したのですら久しぶり過ぎて、自分はちゃんと立っていられているだろうか。
一度言葉にしてしまったからか、尚弥と過ごした思い出が封印を解かれたかのようにポンポンと浮かんでくる。律のことで楽しく話していたころ。ライブに行く約束をしたあの日。
尚弥が自分と関わりがあると知って、律仁さんはどう思うだろうか。
「それは……去年の夏に話してくれた渉太が過去に不登校になったことと関係ある?」
律仁さんに一瞬驚いたように目を丸くしていたが、直ぐに諭したのか眉を寄せては問いかけられる。渉太は恐る恐る頷くと「高校生の時に…俺が好きだった人です」と律仁さんに打ち明けた。
更に覗き込んで様子を伺ってくる律仁さんに、渉太は一度唇を強く噛み締めると顔を勢い良く上げては、ぎこちない笑顔で「本当に大丈夫なので戻りましょう」と応えてみせた。
何事もなかったかのようにその場を立ち去ろうと律仁さんを避けて出口へと向かおうとしたが、途端に右手首を捕まれる。
振り返って立ち止まると、律仁さんの表情は変わらず自分を見据えたままだった。
「渉太……無理にとは言わないけど、何かあったならちゃんと話して?俺は渉太が困ってたら力になりたい」
「………」
律仁さんの優しい言葉に感情が溢れて吐露したくなる。視線から目を逸らそうとしても、律仁さんの真剣な瞳は、優しくも鋭くて自分を逃がす選択肢を与えてくれない。
自分が話したところでどうにかなるわけでも
ないし、尚弥との仕事を辞めてなんて言うつもりもないし、辞めて欲しくない。
胸の内で葛藤しながらも、このまま隠している訳にはいかないような気がして、渉太は胸元にグッと手を当てて大きく深呼吸をすると、見据えてきている律仁さんと視線を合わせた。
「ふ、藤咲尚弥くん……は俺の同級生なんです……」
口から吐く言葉が震える。
今まで避けるかのように絶対声にはしなかった。『藤咲尚弥』なんて名前を口に出したのですら久しぶり過ぎて、自分はちゃんと立っていられているだろうか。
一度言葉にしてしまったからか、尚弥と過ごした思い出が封印を解かれたかのようにポンポンと浮かんでくる。律のことで楽しく話していたころ。ライブに行く約束をしたあの日。
尚弥が自分と関わりがあると知って、律仁さんはどう思うだろうか。
「それは……去年の夏に話してくれた渉太が過去に不登校になったことと関係ある?」
律仁さんに一瞬驚いたように目を丸くしていたが、直ぐに諭したのか眉を寄せては問いかけられる。渉太は恐る恐る頷くと「高校生の時に…俺が好きだった人です」と律仁さんに打ち明けた。
11
あなたにおすすめの小説
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
国民的アイドルの元ライバルが、俺の底辺配信をなぜか認知している
逢 舞夏
BL
「高校に行っても、お前には負けないからな!」
「……もう、俺を追いかけるな」
中三の卒業式。幼馴染であり、唯一無二のライバルだった蓮田深月(はすだ みつき)にそう突き放されたあの日から、俺の時間は止まったままだ。
あれから15年。深月は国民的アイドルグループのセンターとして芸能界の頂点に立ち、俺、梅本陸(うめもと りく)は、アパートでコンビニのサラミを齧る、しがない30歳の社畜になった。
誰にも祝われない30歳の誕生日。孤独と酒に酔った勢いで、俺は『おでん』という名の猫耳アバターを被り、VTuberとして配信を始めた。
どうせ誰も来ない。チラ裏の愚痴配信だ。
そう思っていた俺の画面を、見たことのない金額の赤スパ(投げ銭)が埋め尽くした。
『K:¥50,000 誕生日おめでとう。いい声だ、もっと話して』
『K』と名乗る謎の太客。
【執着強めの国民的アイドル】×【酒飲みツンデレおじさんV】
自己肯定感低めの不幸な義弟が完璧な義兄と大揉めに揉める話
あと
BL
「こんな僕をお兄ちゃんは嫌ってるだろうな」
トップ俳優な完璧超人の義理の兄×不幸な自己肯定感低めのネガティブ義理の弟です。
お金ない受けが追い詰められて変なアルバイトしようとしたら、攻めと再会して……?みたいな話です。
攻めがヤンデレ気味で、受けがマジで卑屈なので苦手な人はブラウザバックで。
兄弟は親が離婚してるため、苗字が違います。
攻め:水瀬真広
受け:神崎彼方
⚠️作者は芸能界にもお葬式ににもエアプなので、気にしないでください。
途中でモブおじが出てきます。
義理とはいえ兄弟なので、地雷の人はブラウザバックで。
初投稿です。
初投稿がちょっと人を選ぶ作品なので不安です。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
内容も時々サイレント修正するかもです。
定期的にタグ整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
【完結】かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい
日向汐
BL
番外編はTwitter(べったー)に載せていきますので、よかったらぜひ🤲
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
過保護なかわいい系美形の後輩。
たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡
そんなお話。
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
【攻め】
雨宮千冬(あめみや・ちふゆ)
大学1年。法学部。
淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。
甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。
【受け】
睦月伊織(むつき・いおり)
大学2年。工学部。
黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻本作品(オリジナル)の結末をif(運命の番)ルートに入れ替えて、他サイトでの投稿を始めました。タイトルは「一度目の結婚で愛も希望も失くした僕が、移住先で運命と出逢い、二度目の結婚で愛されるまで」に変えてます。
オリジナルの本編結末は完全なハッピーエンドとはいえないかもしれませんが、「一度目の〜…」は琳が幸せな結婚をするハッピーエンド一択です。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる