123 / 243
ファンであること
18-6
しおりを挟む
渉太は自転車を目の前のガードレールに停車させ、鍵を括り付けると、珈琲店の中へと意を決して入る。
ドアを開けると同時にカランと鈴が鳴った。
前々から外から見た時から雰囲気のありそうなお店だと思っていたが、まさにその通りで、昭和レトロ感のある内装と暖かみのあるオレンジ色の照明が緊張していた渉太の心を少し和ませた。
店主っぽい男の人が1人と、カウンター席に座って店主と仲良さげに話している女性客が一人いるくらいの物静かさ。
店主は清潔感のある白いワイシャツに紺色のエプロンに白髪混じりの髪の毛や顎髭に丸眼鏡の貫禄のある、けど人が良さそうなのが滲み出てた。
渉太はどうすべきか、呆気にとられて立ち往生していると、外から自分の様子を見ていたのか「渉太、こっち」と律仁さんが入口まで迎えに来てくれていた。
渉太は店主の方に一礼をすると律仁さんの後に続いて窓際の席の方へと向かう。
座席に着くと珈琲と灰皿に溜まったタバコの吸殻が目に入った。
律仁さんがいつ頃からここに居たのかは知らないが、最低でも一時間以上はここに居る。
それなりに吸殻が多いことから大分待たせてしまっていたのだと心苦しくなった。
「遅かったね」
渉太が座ったタイミングで向かいに座る律仁さんに問いかけられる。
テーブルに両腕を置いては、明らかに自分に向けられている視線を透かさず逸らした。憧れの存在がこんな近距離にいる、自分を見ている、想いを寄せられている。
誰しもが一度は推しと付き合えたらなんて妄想するけど、本気で望んでる訳じゃない。
中には大樹先輩の元カノさんみたいに本気でアイドルと繋がろうとする人はいるけど、現実はそんな綺麗事ではないから……。
「すみません……」
行くべきか、否かを迷っていたなんて理由は言えずただ謝る事しかできなかった。
少しでも隙を作って、勘のいい律仁さんに自分の心を見透かされでもしたら、鋭く突っつかれてボロが出てきてしまう気がしたから……。
「いいよ……気にしないで」
理由がどうであれ遅刻したことには変わりないし、何か問い詰められるかと身構えていたが、それどころか優しい言葉を掛けてくる律仁さんに返す言葉が見つからない。
ドアを開けると同時にカランと鈴が鳴った。
前々から外から見た時から雰囲気のありそうなお店だと思っていたが、まさにその通りで、昭和レトロ感のある内装と暖かみのあるオレンジ色の照明が緊張していた渉太の心を少し和ませた。
店主っぽい男の人が1人と、カウンター席に座って店主と仲良さげに話している女性客が一人いるくらいの物静かさ。
店主は清潔感のある白いワイシャツに紺色のエプロンに白髪混じりの髪の毛や顎髭に丸眼鏡の貫禄のある、けど人が良さそうなのが滲み出てた。
渉太はどうすべきか、呆気にとられて立ち往生していると、外から自分の様子を見ていたのか「渉太、こっち」と律仁さんが入口まで迎えに来てくれていた。
渉太は店主の方に一礼をすると律仁さんの後に続いて窓際の席の方へと向かう。
座席に着くと珈琲と灰皿に溜まったタバコの吸殻が目に入った。
律仁さんがいつ頃からここに居たのかは知らないが、最低でも一時間以上はここに居る。
それなりに吸殻が多いことから大分待たせてしまっていたのだと心苦しくなった。
「遅かったね」
渉太が座ったタイミングで向かいに座る律仁さんに問いかけられる。
テーブルに両腕を置いては、明らかに自分に向けられている視線を透かさず逸らした。憧れの存在がこんな近距離にいる、自分を見ている、想いを寄せられている。
誰しもが一度は推しと付き合えたらなんて妄想するけど、本気で望んでる訳じゃない。
中には大樹先輩の元カノさんみたいに本気でアイドルと繋がろうとする人はいるけど、現実はそんな綺麗事ではないから……。
「すみません……」
行くべきか、否かを迷っていたなんて理由は言えずただ謝る事しかできなかった。
少しでも隙を作って、勘のいい律仁さんに自分の心を見透かされでもしたら、鋭く突っつかれてボロが出てきてしまう気がしたから……。
「いいよ……気にしないで」
理由がどうであれ遅刻したことには変わりないし、何か問い詰められるかと身構えていたが、それどころか優しい言葉を掛けてくる律仁さんに返す言葉が見つからない。
0
お気に入りに追加
84
あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
きみが隣に
すずかけあおい
BL
いつもひとりでいる矢崎は、ある日、人気者の瀬尾から告白される。
瀬尾とほとんど話したことがないので断ろうとすると、「友だちからでいいから」と言われ、友だちからなら、と頷く。
矢崎は徐々に瀬尾に惹かれていくけれど――。
〔攻め〕瀬尾(せお)
〔受け〕矢崎(やざき)
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
あなたの隣で初めての恋を知る
ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

林檎を並べても、
ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。
二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。
ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。
彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる