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ファンであること
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「だよね。私もそう思う。ホント芸能界って恐ろしいよね」
花井さんは身体を震わせる動作をしては再び手を動かし始める。
あの笑顔の裏に隠されたの闇の部分。
確かにあることないことをでっち上げられて傷つかない人はいない。
こんなの相当な鋼のメンタルじゃないと勤まらないし、律仁さんは今までだってそういうのに耐えてきたんだと思うとやっぱり尊敬できた。
「あ、そうだ。渉太くん、大学で噂になってるじゃん?あれ週刊誌の写真、天文部の天体観測の時のだって噂になってるけど、天文部って確か渉太くんいるサークルだよね?」
暫く作業をしていると、思い出したかのように花井さんが話しかけてきて、急に先程まで穏やかだった心臓が竦み上がる。
「ああ、うん」
いくら構内は広いからと言って花井さんも同じ大学なら知らない筈はなかった。
それ程までに律は有名だし、律が天文サークルの活動の中に居たなんて言ったら尚更。
渉太はまた花井さんもサークルの子達のように問い詰めてくるんだろうかと身構えていた。
あれ以来、サークルには顔を出すのを辞めた。律が自分の部に居たかもしれないなんて知ったら彼女達が寄って集ってくるのはごく自然な心理にしても、漸く周りと打ち解けだした渉太にとっては恐怖だった。
知らないとシラを切って出ていった時の彼女達の冷たい視線が脳裏を過ぎる。
頭で理解しているのと心とは全く別物で、人の裏という裏を見るのは、やはり未だに抵抗がある。
「ごめんね。こんな探る真似、不愉快だよね。でもひとつだけ、あたし渉太くんに気になってたことがあったから……」
モップを持っている手に力が入り、無意識に花井さんを凝視していたのか、花井さんが苦笑いをし、言葉が窄みがちになる。
「この間、渉太くんを迎えに来てた人と似てたから、関係あるのかなー…って話したくなかったら別にいいよ。ちょっと気になっただけだから」
少しずつ律仁さんが残していった痕跡に周りが勘づき始めている。
その事に自分はどう答えることも出来ずに黙っていると花井さんは颯爽と話を終わらせて作業に戻ってしまった。
責められずにいた事に安堵すると同時に、罪悪感を感じた。
花井さんは悪い人じゃない、少なからず自分が武内さんを得意としていないのを感じてるのか、俺が律が好きだと知っても周りには絶対漏らしていなかった。
そんな人が、がっついて質問責めなんてしてくるなんて疑ってしまった自分に後悔した。
だけど、本当のことはいくら花井さんであっても容易く話せない。
渉太は黙って作業を続けることしか出来なかった。
「渉太」
気まずい気持ちを引きずりながらひたすらに床のモップがけをしていると、名前を呼ばれて顔を上げては振り返る。
数メートル先の突如現れた想い人に心臓が止まりそうになった。
花井さんも「えっ」と小さく呟いては両手で口許を覆い、瞬時に立ち上がる。
そこに居たのは紛れ目なく律仁さんだったが、いつも身分を隠すためだったのであろう帽子や眼鏡がない…。
一目見て、彼が律だと分かる姿だった。
花井さんは身体を震わせる動作をしては再び手を動かし始める。
あの笑顔の裏に隠されたの闇の部分。
確かにあることないことをでっち上げられて傷つかない人はいない。
こんなの相当な鋼のメンタルじゃないと勤まらないし、律仁さんは今までだってそういうのに耐えてきたんだと思うとやっぱり尊敬できた。
「あ、そうだ。渉太くん、大学で噂になってるじゃん?あれ週刊誌の写真、天文部の天体観測の時のだって噂になってるけど、天文部って確か渉太くんいるサークルだよね?」
暫く作業をしていると、思い出したかのように花井さんが話しかけてきて、急に先程まで穏やかだった心臓が竦み上がる。
「ああ、うん」
いくら構内は広いからと言って花井さんも同じ大学なら知らない筈はなかった。
それ程までに律は有名だし、律が天文サークルの活動の中に居たなんて言ったら尚更。
渉太はまた花井さんもサークルの子達のように問い詰めてくるんだろうかと身構えていた。
あれ以来、サークルには顔を出すのを辞めた。律が自分の部に居たかもしれないなんて知ったら彼女達が寄って集ってくるのはごく自然な心理にしても、漸く周りと打ち解けだした渉太にとっては恐怖だった。
知らないとシラを切って出ていった時の彼女達の冷たい視線が脳裏を過ぎる。
頭で理解しているのと心とは全く別物で、人の裏という裏を見るのは、やはり未だに抵抗がある。
「ごめんね。こんな探る真似、不愉快だよね。でもひとつだけ、あたし渉太くんに気になってたことがあったから……」
モップを持っている手に力が入り、無意識に花井さんを凝視していたのか、花井さんが苦笑いをし、言葉が窄みがちになる。
「この間、渉太くんを迎えに来てた人と似てたから、関係あるのかなー…って話したくなかったら別にいいよ。ちょっと気になっただけだから」
少しずつ律仁さんが残していった痕跡に周りが勘づき始めている。
その事に自分はどう答えることも出来ずに黙っていると花井さんは颯爽と話を終わらせて作業に戻ってしまった。
責められずにいた事に安堵すると同時に、罪悪感を感じた。
花井さんは悪い人じゃない、少なからず自分が武内さんを得意としていないのを感じてるのか、俺が律が好きだと知っても周りには絶対漏らしていなかった。
そんな人が、がっついて質問責めなんてしてくるなんて疑ってしまった自分に後悔した。
だけど、本当のことはいくら花井さんであっても容易く話せない。
渉太は黙って作業を続けることしか出来なかった。
「渉太」
気まずい気持ちを引きずりながらひたすらに床のモップがけをしていると、名前を呼ばれて顔を上げては振り返る。
数メートル先の突如現れた想い人に心臓が止まりそうになった。
花井さんも「えっ」と小さく呟いては両手で口許を覆い、瞬時に立ち上がる。
そこに居たのは紛れ目なく律仁さんだったが、いつも身分を隠すためだったのであろう帽子や眼鏡がない…。
一目見て、彼が律だと分かる姿だった。
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