憧れはすぐ側に

なめめ

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先輩と律仁さん

16-1

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大樹先輩を見失わないように背中を追い、ひたすらについて行く。
しばらく構内を彷徨う。講義室の目の前で足を止めて鍵を取り出し扉を開けては、中へと促された。
先輩も後を追って室内へ入ってくるとそそくさと鍵を閉め、深いため息を吐いた。

少し狭めの講義室。
渉太は先輩が鍵を持っていることに疑問げに首を傾げてみせると、大樹先輩は「優等生の特権?サークルで使いたいって言ったら貸してくれてさ」と鍵をチャラチャラと手の中で揺らして見せびらかしてきた。

先輩は頭も良くて先生にも好かれて信頼も厚いみたいだし、構内活動も積極的に取り組んでいる。絵に書いたような優等生でそれでいて優しくて、本当に文句なしな人。

先輩は堂々と室内に入っては前から真ん中辺りの長い机の椅子に座ると隣へ来るように促してきた。
渉太も誰もいない講義室に躊躇いながらも、
先輩の隣まで行き、一席分間隔を空けて座る。

「渉太、急にごめんな。びっくりしただろ?」

びっくりしたとは何を意味してることなのか、主語が無くても理解できた。
この流れからじゃ、一つしかない……。

「いいえ、俺も大樹先輩に訊きたいことがあったので……」

「そうだな。サークルの子達には適当にはぐらかして知らないフリしてやり過ごしたけど、渉太にはちゃんと話してやらないといけない」

机上で両手指を組んで真剣な表情をして一点を見つめている。

あんなに律仁さんのことをよく知っているような素振りだった先輩が彼の事を何も知らないわけはないとは思っていたが、渉太の勘は間違っていないようだった。

大樹先輩は律仁さんのことで何か知ってる……きっと、あの記事についても。

「……俺、さっき知ったばかりで情報が整理出来てないです。でも、皆が言ってた週刊誌のって……」

「半分嘘で半分本当ってとこだな」

こういう記事は嘘も多いってよく耳にする。
記者、または告発者のでっち上げということも有り得る。じゃなきゃ、律が……律仁さんが…先輩の彼女を奪ったことになるから……。

「そうだな…渉太には何から説明しようか。
ちょっと長くなるけど大丈夫か?」

渉太は深く頷いては膝の上で両拳を強く握った。この先の話はきっといい話ではないのは大樹先輩の雰囲気から読み取れる。

何となく今から言われてることに予想はついるし、聞くのが怖い。
だけど聞かずにはいられない。
事実を知らずして見て見ぬふりなんて自分にはとても出来るわけがないから……。
渉太は雰囲気に呑まれるように全身が緊張で硬直していた。

「まず、あの記事を見ての通り渉太の知ってる麻倉律仁はあの有名な浅倉律で間違いはないよ」

半分事実と半分虚偽の事実の方の話。そして、その事実が自分が望んでいないものであることも。訊きたかったけど一番聴きたくなかったこと。

薄々気がついてはそんなことはない。
そうであってほしくないと願っていたことが現実となって叩きつけられる。
律仁さんと話したり、触れ合ったのはあれは全部、俺自身が憧れていた律だったのだと思うと全身が震えた。

嬉しさからじゃなくて、とんでもない罪を犯してしまったようなそんな感覚だった。
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