憧れはすぐ側に

なめめ

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近づく距離

14-6

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ソースとか粉を入れるだけだし、失敗とかないだろうけど、律仁さんの反応が気になる。

律仁さんは相当空腹だったのか、ひと口、ふた口と食べ進めると「渉太、すげぇ旨い」
と褒めすぎなくらいの反応を見せてきたので戸惑ったが、ホッとした。

自分も後に続いて箸を動かす。

「渉太は自炊してるんだね。偉いなー」
「律仁さんは自炊しないんですか?」
「あまりしないかな。出来合いが多いかも」

律仁さんは少し肩を竦めては、はにかんでみせた。

一人暮らしで自炊をしない人は珍しくない。律仁さんみたいに忙しそうな人は出来合いのものに頼りがちなのかもしれない。
今じゃコンビニやスーパーに行けば何でも売っていて普通に美味かったりするから出来合いだからって侮れなかったりする。

自分だって疲れて何もしたくない時はサボったりをするから恥ずかしいことではなかったけど、いつも余裕のある律仁さんのその表情が何だか新鮮で渉太をドキッとさせた。

今まで自分の中で謎に包まれていた、律仁さんの情報がひとつひとつ増えていく……。
何気ない律仁さんとの会話が純粋に楽しかった。

「もっと渉太のこと聞かせて?」と言われたので律仁さんに会わなかった間の話を話始めた。この間、律の撮影現場に居合わせて握手をしてもらったこと。

渉太は終始、興奮で暴走気味で話していたのにも拘わらず、律仁さんは大人しく頷いては時折、先程自分のレジで購入していたお酒を空けては呑んでいた。

ふと、何のお咎めなしに律仁さんはお酒を呑んでいるが、車で来てたんじゃなかったのだろうかと思い出した。

まさかそのまま帰るわけじゃないだろうし……
もしかして……。 
完全に寛ぎモードの律仁さんを見てそれ以外に考えられず、渉太は一息ついてから切り出す。

「あの……もしかして律仁さん。家に泊まる気ですか……?」
「もちろん。もう呑んじゃったし、運転できないから」

当たり前のように返ってきた返答に、渉太の頭は真っ白になった。
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