91 / 243
近づく距離
14-5
しおりを挟む
もしかして間違ったことを言ってしまったのかと不安に駆られたが「だけど、渉太のそういうところ好きだな」と隣で呟かれては、悪い意味ではなかったのだと安堵したと同時に、サラッとそんなことを言って持ち上げてくる律仁さんは狡いと思った。
渉太が俯いては後の言葉に戸惑っていると、
律仁さんに「渉太、お腹空かない?」と問われて渉太は「空きました」と小さく頷いた。
確かにバイト終わりで何も食べていなかったし、律仁さんには気づかれてないかもしれないが微かにお腹も鳴っていた。
「渉太は何か作れる人?」
「簡単なものでしたらできますけど……」
「じゃあ渉太に甘えていい?渉太が作ったものが食べたい」
律仁さんはニッと口角をあげて笑う。
律仁さんのそんな笑顔をみて断ることができるわけもなく、かと言って嫌な気はしない。
渉太は立ち上がっては、キッチンの隣の冷蔵庫を開けると、今すぐ簡単に作れるものを探した。
「疲れてるのにわがまま言ってごめんね、材料費は出すからさ」と冷蔵庫を漁っている途中で背後から聞こえてきたが、渉太は大して気にしていなかった。
いつもこのくらいの時間から晩御飯を作り始める事が多いし、だいぶ前にお弁当を律仁さんに奢って貰った恩もある。こんなこと位でしか返せないが、お易い御用だった。
しかし、買い溜めはあまりしない派なので、渉太の冷蔵庫の中身で作れるものと言ったら限られていた。
辛うじて手早く作れそうなものが焼きそばくらいしか無くて、渉太は目に付いた焼きそばの袋を手に取った。
蒸し麺とソースか付いていて後は、具を切って炒めるやつ。
手料理ってほどの大袈裟なものかは、胸張って言い難いが、肉とキャベツともやしと人参があったので麺も全て使って具だくさんのものを作ることが出来た。
出来た焼きそばを大皿に盛ってテーブルに置くと律仁さんは「うまそー」と声を漏らしては「いただきます」と箸を取った。
渉太も律仁さんの隣に座ると「いただきます」と手を合わせる。
渉太が俯いては後の言葉に戸惑っていると、
律仁さんに「渉太、お腹空かない?」と問われて渉太は「空きました」と小さく頷いた。
確かにバイト終わりで何も食べていなかったし、律仁さんには気づかれてないかもしれないが微かにお腹も鳴っていた。
「渉太は何か作れる人?」
「簡単なものでしたらできますけど……」
「じゃあ渉太に甘えていい?渉太が作ったものが食べたい」
律仁さんはニッと口角をあげて笑う。
律仁さんのそんな笑顔をみて断ることができるわけもなく、かと言って嫌な気はしない。
渉太は立ち上がっては、キッチンの隣の冷蔵庫を開けると、今すぐ簡単に作れるものを探した。
「疲れてるのにわがまま言ってごめんね、材料費は出すからさ」と冷蔵庫を漁っている途中で背後から聞こえてきたが、渉太は大して気にしていなかった。
いつもこのくらいの時間から晩御飯を作り始める事が多いし、だいぶ前にお弁当を律仁さんに奢って貰った恩もある。こんなこと位でしか返せないが、お易い御用だった。
しかし、買い溜めはあまりしない派なので、渉太の冷蔵庫の中身で作れるものと言ったら限られていた。
辛うじて手早く作れそうなものが焼きそばくらいしか無くて、渉太は目に付いた焼きそばの袋を手に取った。
蒸し麺とソースか付いていて後は、具を切って炒めるやつ。
手料理ってほどの大袈裟なものかは、胸張って言い難いが、肉とキャベツともやしと人参があったので麺も全て使って具だくさんのものを作ることが出来た。
出来た焼きそばを大皿に盛ってテーブルに置くと律仁さんは「うまそー」と声を漏らしては「いただきます」と箸を取った。
渉太も律仁さんの隣に座ると「いただきます」と手を合わせる。
0
お気に入りに追加
79
あなたにおすすめの小説
婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
キンモクセイは夏の記憶とともに
広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。
小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。
田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。
そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。
純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。
しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。
「俺になんてもったいない!」
素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。
性描写のある話は【※】をつけていきます。
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
離したくない、離して欲しくない
mahiro
BL
自宅と家の往復を繰り返していた所に飲み会の誘いが入った。
久しぶりに友達や学生の頃の先輩方とも会いたかったが、その日も仕事が夜中まで入っていたため断った。
そんなある日、社内で女性社員が芸能人が来ると話しているのを耳にした。
テレビなんて観ていないからどうせ名前を聞いたところで誰か分からないだろ、と思いあまり気にしなかった。
翌日の夜、外での仕事を終えて社内に戻って来るといつものように誰もいなかった。
そんな所に『すみません』と言う声が聞こえた。
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる