憧れはすぐ側に

なめめ

文字の大きさ
上 下
90 / 243
近づく距離

14-4

しおりを挟む
勇気づけてもらって、否定するのを変な気がして渉太は深く頷いては「ありがとうございます」と本人に聞こえるか聞こえないかのような声で呟いた。
進んだのは自分だったとしても、律仁さんのおかげには変わりないから……。

「渉太はさぁ……もし好きな人が芸能人で付き合えるってなったらどうする?」
「えっ……」

少しの沈黙の後、律仁さんは眉を寄せては真剣な面持ちでそう訊いてきた。
何で急に芸能人がでてくるのだろうか……。
好きな人って……?

律仁さんは芸能関係の人と関わりがあるみたいだから、律仁さんには本当は好きな人がいて……なんて本当かも分からない勝手な憶測を立てては物案じする。

もし、そうだったら嫌だと思ってしまう自分がいた。

「そんな本気にして身構えないでよ。例え話だから。渉太ならどう思うのか気になっただけだから軽い気持ちで答えて?」

余程険しい表情で考えてしまっていたのか、律仁さんに諭されててしまった。
緊張感をほぐすように、微笑まれる。

「分からないですけど、諦めると思います。そもそも俺と芸能の方とじゃ住む世界が違うと言うか……」

律仁さんがどういう意図で訊いてきているのは分からなかったが、訊かれたからには今自分が思ったまま答えた。

「じゃあ、それが渉太の好きな律だったら?」

「余計に想像出来ないし、ゲイの俺と付き合っちゃいけない気がします。世間のイメージがあるから」

もし、律と付き合えるってなったら自分は身を引く気がする。

どんなに律が好きで盲目になろうとも、推しに対しては付き合いたいとか恋人になりたいとかじゃなくて、あくまで演者とファンとの距離感でいたい。 
律にいくら認識を得られていたからって自分のことは一ファンとしか思われてないだろうし、渉太にとっては天と地の差くらい遠い存在だった。

そんな渉太の返答を聞いて、律仁さんは声音を落とすと「そっか……渉太はやっぱ真面目だなー」と苦笑いしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

白い部屋で愛を囁いて

氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。 シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。 ※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。

続きは第一図書室で

蒼キるり
BL
高校生になったばかりの佐武直斗は図書室で出会った同級生の東原浩也とひょんなことからキスの練習をする仲になる。 友人と恋の狭間で揺れる青春ラブストーリー。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

合鍵

茉莉花 香乃
BL
高校から好きだった太一に告白されて恋人になった。鍵も渡されたけれど、僕は見てしまった。太一の部屋から出て行く女の人を…… 他サイトにも公開しています

処理中です...