憧れはすぐ側に

なめめ

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渉太の過去

9-12

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※この先、多少過激な表現が含まれてます。
ご了承の上、読み進めることをオススメします。


夏休み前の暑い日、前の授業のレポートが纏めきらず、ギリギリまで粘って提出し終えては、先に教室へ戻っていった友人達の元へ向かうため急ぎ足で向かう。
昼休み、大勢の生徒がそれぞれの座席で集う中、窓際の教室の後方席では友人達が屯っていた。

皆スマホの画面に身を寄せあって何かを見ているようだった。尚弥も後ろで窓辺に凭れ掛かっては、輪の中の様子を眺めている。

「渉太、こいよ」

近づく渉太に気づいた日野が手招きしてきた。自分の座席は誰もが憧れる窓側の一番後ろの席。隣には、俺たちグループの中心である日野ひの。その日野の席を囲うように岡本と佐藤が周りの座席の椅子を借りて座っていた。

手を引かれ着席すると、画面を見せられる。
渉太はその画面を見た途端、驚きの余り周りを見渡す。

「えっ·····」

こんな公共の場で見ていい動画ではない。
音量は差程大きくしていないにしても、内輪で動画を見ているやつには明らかに聴こえる、女性の甘く撫でるような喘ぐ声。渉太は周りの生徒に聴こえてしまうのではないかと気が気じゃなかった。

画面の中は黒髪の明らかに同じくらいの歳の女子の顔面のアップ。肩までしか写ってないものの
体は上下に揺れ、明らかに最中と伺えるようなもので、それが生々しくて渉太は思わず目を背けてしまった。

「俺さ、昨日彼女としたんだよ」

自信満々に見せびらかしてくる日野。
そういうことに興味を持ち始める年頃だと分かっていても渉太にとっては苦手分野だった。

前の二人は興奮して「すげぇー」なんて野次馬の様に画面に食らいついているが、日野の彼女が自分達の行為を友人に見せてると知ったら、傷つくだろうなと思っては友人のデリカシーの無さに幻滅した。

「渉太ーいいだろ」
「まーそうだね」

同意などしたくはなかったが、わざわざ場の空気を壊すようなことはしたくはなくて適当に相槌を打っては窓側で立っている尚弥に視線を移す。

尚弥もそういうノリには興味はないのか、自分のスマホを眺めては、輪の中の話を耳だけは聴いているような状態だったので渉太はホッとした。
日野達の相手を真面にしていたら不愉快極まりない思いをしそうで、渉太は座席を立ち上がると尚弥の隣に並んだ。

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