憧れはすぐ側に

なめめ

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憧れの人

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『えーっと、なるほどね·····。俺もあんまりこういうの得意な方じゃないんですよ·········』

ラジオ越しに聴こえる『えぇ』と言う外野の声に渉太も同意見だった。
小さい頃から美少年だと注目されてきた彼、
芸能人との交友関係も広そうなだけに、この手の悩みには無縁だと思っていた。

『でも、初対面でもそうじゃなくても挨拶は自分からするように意識してるかな。その方が会話のきっかけにもあるし。自分から心を開いてみたら相手も自然と腹割って話してくれるようになるんじゃないかな·····だって話しかけられて嫌な人はいないと思うし。

まあ、でも好きな子には積極的に行動した方がいいよね。振られない後悔より振られた後悔の方がいい』

憧れの律が律の言葉で自分に向けて語られることが嬉しい。お便りの内容なんて正直どうでも良くなる。
浮かれ気分のまま完全にレポートそっちのけでラジオに集中しては気づいたらエンディングを迎えていた。
 
時報と共に次の番組が始まると渉太はスマホのアプリを落としてはイヤホンを外す。
律のラジオを終えてベッドに横たわっては、気づいたら先程の返答について考えていた。

自分に向けられた律の言葉、これまでも幾度の場面で律の歌に言葉に助けられてきた。

過去の恋愛をきっかけに塞ぎがちになり、学校へ行くことが億劫になっていた自分を地元から離れて、都心の大学へ進学することを決心できたのは律のお陰といっても過言ではなかった。
律が活躍する姿を見て元気を貰って自分もこのままじゃいけないと奮い立たせてくれた。

しかし入学から1年。自分は一般的な大学生よりは大学生活を充実させてはいないんだと思う。結局、顔見知り程度はいても深く関われる友達はいなくて、だけどこれが自分には最善だと納得している自分もいた。

最初の頃は興味があった天文サークルに入ってみたけど顔を出す頻度は少なくなって行った。既に内輪で人間関係が出来上がっていたのもあったが、最もな理由は気になる人が出来てしまったことだ。

恋愛をするのに臆病になってもなお、人を好きになってしまう。その度に辛かった日々を思い出してはその場で意味もなく叫びたくなる衝動に駆られるなんて頻繁にある。

そんな気持ちから逃げたくてサークルへの足は遠のいていた。


未だ癒えていない古傷が痛みだし、渉太は布団で背中を丸めては枕を力強く抱いた。

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