これが恋だとしても·····

なめめ

文字の大きさ
上 下
237 / 242
大樹の所在

大樹の所在⑱

しおりを挟む
大樹は長々と雑談をしていたところを上司に呼び出され、業務に戻っていった。
上司であろう女性従業員が目尻を釣り上げて腰に手を当てご立腹のようだったので、もしかしたら裏で怒られてしまったのではないだろうか。

大樹との話し合いの件は彼の業務が終わるまで待つこととし、一先ず尚弥は浅倉さんと店で食事をすることにした。

意気消沈気味の尚弥を察してか「補足だけど尚弥君自身を俺は恨んでる訳じゃないから、これからも仕事以外でも仲良くしていきたいと思ってるよ」と過去の話はこれっきりにして、食事中も飽きたらず音楽談義を繰り広げていると「浅倉さんじゃなくて、律か律仁でいいよ。その方が尚弥くんと距離縮まった感じするから」と呼び名を訂正される。

お互いに共通の友人がいることが大きいであろうが、尚弥もごくたまに半年に一度放送している音楽祭などといった番組に呼ばれることもある。しかし、共演者とは挨拶程度のだけでここまで関わりのある芸能人は律さん以外にいない。学生時代なんて腹を割って対等に話のできる友人は一切いなかった。

心のどこかで境界線を引き、同性に対して敵意のようなものを向けていたし、表ではいい顔をしていた奴らもどこか裏で自分のことを妬み恨んでいるんだろうことは微かに感じていた。異性は異性で僕のことをアイドルでも崇めるかのように群がって囲って騒いでいた記憶しかない。

本当に僕と対等に接してくれていたのは、渉太と律さんこの人だけだ。

こういう人達を大事にしていきたいと思えたのも大樹の存在があるおかげでもあるんだろうか·····。

食事を済ませると律さんは長居をせずに早々にご飯代を置いて店を出て行った。僕はというと律さんがいなくなった後も、珈琲を飲んでは時折大樹の働く姿に目をやりながらも大樹のことを待つ。

深夜帯になり、人が疎らどころか1組、2組いるかいないかの店内。大樹が仕事を終えたのは深夜三時を超えてからだった。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

闇に咲く花~王を愛した少年~

めぐみ
BL
―暗闇に咲き誇る花となり、その美しき毒で若き王を  虜にするのだ-   国を揺るがす恐ろしき陰謀の幕が今、あがろうとしている。 都漢陽の色町には大見世、小見世、様々な遊廓がひしめいている。 その中で中規模どころの見世翠月楼は客筋もよく美女揃いで知られて いるが、実は彼女たちは、どこまでも女にしか見えない男である。  しかし、翠月楼が男娼を置いているというのはあくまでも噂にすぎず、男色趣味のある貴族や豪商が衆道を隠すためには良い隠れ蓑であり恰好の遊び場所となっている。  翠月楼の女将秘蔵っ子翠玉もまた美少女にしか見えない美少年だ。  ある夜、翠月楼の二階の奥まった室で、翠玉は初めて客を迎えた。  翠月を水揚げするために訪れたとばかり思いきや、彼は翠玉に恐ろしい企みを持ちかける-。  はるかな朝鮮王朝時代の韓国を舞台にくりひげられる少年の純愛物語。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

幼馴染み

BL
高校生の真琴は、隣に住む幼馴染の龍之介が好き。かっこよくて品行方正な人気者の龍之介が、かわいいと噂の井野さんから告白されたと聞いて……。 高校生同士の瑞々しくて甘酸っぱい恋模様。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...