228 / 242
大樹の所在
大樹の所在⑨
しおりを挟む
「手、この前まで手袋してたでしょ?大樹と上手くいってんだと思って」
大樹と共に過ごしたベルギー以降、恐怖心から逃れるようにしていた手袋を外すように意識し始めた。触れる物や人に対してのトラウマの紐づけは完全に断ち切れたわけではないが、自分が一歩前へと踏み出す姿勢を見せれば彼は喜んでくれる。小さなことからでもいいから彼を喜ばせたい想いは強かった。
尚弥は小突かれて咄嗟に両手をテーブルの下へと隠す。
完全に浅倉さんのペースに飲み込まれ、予想をしていた望まぬ流れになってきている気がする·····。
「それとこれとは関係ないです」
関係大ありでは合ったが、これ以上突っ込まれるのは尚弥としては今すぐに机の下へと身を隠したいほどに羞恥を覚えるので嘘を突き通す。だが、目の前の浅倉さんは尚弥の言葉など鵜呑みしていないようで、頬杖をついてじっと見つめてくる。
「ふーん。じゃあこの曲は誰のこと想って作ったんだろー?明らかに誰かを想って書いたものに感じたんだけど?まさか渉太じゃないよね?」
「だって言ったら·····?」
尋問を受けているようで浅倉さんからの圧を感じる。尚弥の性分で反発心から煽るような事を発言すると浅倉さんの瞳が正気を失くしたような漆黒の色に変わる。なのに口元は笑ったままなのでこのまま貫き通すのは不味い予感しかしなかった。
「しょ、渉太なわけないだろっ。悪いのかよ·····僕だって人を好きになることくらい·····」
動物的本能が赤信号を鳴らすほどの圧に押し負けて、口をまごつかせながらも白状すると、向かい側からブッっと吹き出した音が聞こえて見遣る。浅倉さんはあろう事か腹部を抑えて高らかに笑っていた。
「ごめんごめん。ちょっとからかっただけ。
全く悪くないよ。渉太がさ、君と大樹のこと心配してたからさ気になっただけ。でも良かったよ、少しは進展はあったようだね」
僕が狼狽える姿がそんなに面白かったのか指で目元を拭いながら、僅かに癇に障るような発言をしてくる。アイドルらしからぬ底意地の悪さ。渉太はよくもまあこんな男と一緒に居れるものだと感心するくらいだ。
大樹と共に過ごしたベルギー以降、恐怖心から逃れるようにしていた手袋を外すように意識し始めた。触れる物や人に対してのトラウマの紐づけは完全に断ち切れたわけではないが、自分が一歩前へと踏み出す姿勢を見せれば彼は喜んでくれる。小さなことからでもいいから彼を喜ばせたい想いは強かった。
尚弥は小突かれて咄嗟に両手をテーブルの下へと隠す。
完全に浅倉さんのペースに飲み込まれ、予想をしていた望まぬ流れになってきている気がする·····。
「それとこれとは関係ないです」
関係大ありでは合ったが、これ以上突っ込まれるのは尚弥としては今すぐに机の下へと身を隠したいほどに羞恥を覚えるので嘘を突き通す。だが、目の前の浅倉さんは尚弥の言葉など鵜呑みしていないようで、頬杖をついてじっと見つめてくる。
「ふーん。じゃあこの曲は誰のこと想って作ったんだろー?明らかに誰かを想って書いたものに感じたんだけど?まさか渉太じゃないよね?」
「だって言ったら·····?」
尋問を受けているようで浅倉さんからの圧を感じる。尚弥の性分で反発心から煽るような事を発言すると浅倉さんの瞳が正気を失くしたような漆黒の色に変わる。なのに口元は笑ったままなのでこのまま貫き通すのは不味い予感しかしなかった。
「しょ、渉太なわけないだろっ。悪いのかよ·····僕だって人を好きになることくらい·····」
動物的本能が赤信号を鳴らすほどの圧に押し負けて、口をまごつかせながらも白状すると、向かい側からブッっと吹き出した音が聞こえて見遣る。浅倉さんはあろう事か腹部を抑えて高らかに笑っていた。
「ごめんごめん。ちょっとからかっただけ。
全く悪くないよ。渉太がさ、君と大樹のこと心配してたからさ気になっただけ。でも良かったよ、少しは進展はあったようだね」
僕が狼狽える姿がそんなに面白かったのか指で目元を拭いながら、僅かに癇に障るような発言をしてくる。アイドルらしからぬ底意地の悪さ。渉太はよくもまあこんな男と一緒に居れるものだと感心するくらいだ。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説


どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。


【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる