132 / 242
決意の欠片
決意の欠片②
しおりを挟む
一時サークル内で騒ぎになっていた律仁が渉太に会うために天体観測へ参加したときも、
暫く女子達の質問責めを受けて躱すのに必死だったが、彼女は輪の中に入らず毅然として通常通りに活動をしていた。
それには彼女自身にも身内に那月遼人という今注目の若手アイドルグループの一員である双子の兄がいる境遇だからかもしれないが·····。彼女も周りには公言していない。律仁とのことで自らヒール役に回ってくれていたのがきっかけで、今まで謎のベールに包まれていた彼女のことを知るようになった。
「星杏の気持ちも分かるが、あんまり否定的になるのも良くないぞ。好きな物同士がいがみ合ったって疲れるだけだろ?お前たちはお前たちのペースで楽しめばいい」
サークルにいた時から星杏に慕われていただけに愚痴を洩らす彼女を宥めるが、どこか腑に落ちない様子が伺える。
平和主義の大樹が部長の時は、同じ好きな物同士の仲間であることには変わりないから、温度差はあれど、お互いの意見がぶつかり、派閥が起きぬよう両者の意見を汲みながら上手く仲裁に入れていた。
サークルを離れる時も多少の心残りはそれだった。だから、部長に推薦する奴は慎重に選んだつもりだったが·····。
確かに成田は自分がいた時から少しばかりの傲慢さと自身の意見が正しいと過信する、我の強いところは目立っていた。
大嶺なら真面目で柔軟性はある方かと思ったから上手くやれそうな気はしていたのだが·····世の中上手くはいかないよな·····。
かと言って最早卒業して部外者の大樹が出てきたところで事態は悪化するのは想像できるだけに下手に手は出せない。
「はぁ·····先輩がいたときは平和で良かったなあー」
星杏はガクリと肩を落として、深い溜息をつくと「遼人みたいなちゃらんぽらんばっかりで嫌になっちゃう·····」と自身の双子の兄の素行と成田が似ているのか呆れ返っていた。
大樹が「星杏は期待の星なんだから大嶺を支えてやるんだぞー」と背中を押してやると小さく頷きながらもこの場は丸く収まったようだった。
「先輩珍しいですね、医学書ですか?」
ふと、星杏の視線が手元にで開いていた強迫性障害の本へと移されては問われる。勿論この本を手に取ったのは他でもない藤咲の重苦を少しでも理解し得たらという想いからだ。
「ああ·····知り合いに接触恐怖症の奴がいるんだ。そいつが克服したがってるから·····カウンセラーとか勧めてみたんだけどいい顔はしなかったんだ·····」
他人にこんな相談をしたところで何にもならないかもしれないが、手に取っている本のことを問われて誤魔化す訳にもいかず、特に返事を期待せずに流してくれさえすれば良かった。
しかし、星杏は顎に右手を当て、深く考え込むと何か思い立ったのか勢く顔を上げては平然とした顔で「それ読む意味ありますか?」と驚愕な発言が返ってきた。
暫く女子達の質問責めを受けて躱すのに必死だったが、彼女は輪の中に入らず毅然として通常通りに活動をしていた。
それには彼女自身にも身内に那月遼人という今注目の若手アイドルグループの一員である双子の兄がいる境遇だからかもしれないが·····。彼女も周りには公言していない。律仁とのことで自らヒール役に回ってくれていたのがきっかけで、今まで謎のベールに包まれていた彼女のことを知るようになった。
「星杏の気持ちも分かるが、あんまり否定的になるのも良くないぞ。好きな物同士がいがみ合ったって疲れるだけだろ?お前たちはお前たちのペースで楽しめばいい」
サークルにいた時から星杏に慕われていただけに愚痴を洩らす彼女を宥めるが、どこか腑に落ちない様子が伺える。
平和主義の大樹が部長の時は、同じ好きな物同士の仲間であることには変わりないから、温度差はあれど、お互いの意見がぶつかり、派閥が起きぬよう両者の意見を汲みながら上手く仲裁に入れていた。
サークルを離れる時も多少の心残りはそれだった。だから、部長に推薦する奴は慎重に選んだつもりだったが·····。
確かに成田は自分がいた時から少しばかりの傲慢さと自身の意見が正しいと過信する、我の強いところは目立っていた。
大嶺なら真面目で柔軟性はある方かと思ったから上手くやれそうな気はしていたのだが·····世の中上手くはいかないよな·····。
かと言って最早卒業して部外者の大樹が出てきたところで事態は悪化するのは想像できるだけに下手に手は出せない。
「はぁ·····先輩がいたときは平和で良かったなあー」
星杏はガクリと肩を落として、深い溜息をつくと「遼人みたいなちゃらんぽらんばっかりで嫌になっちゃう·····」と自身の双子の兄の素行と成田が似ているのか呆れ返っていた。
大樹が「星杏は期待の星なんだから大嶺を支えてやるんだぞー」と背中を押してやると小さく頷きながらもこの場は丸く収まったようだった。
「先輩珍しいですね、医学書ですか?」
ふと、星杏の視線が手元にで開いていた強迫性障害の本へと移されては問われる。勿論この本を手に取ったのは他でもない藤咲の重苦を少しでも理解し得たらという想いからだ。
「ああ·····知り合いに接触恐怖症の奴がいるんだ。そいつが克服したがってるから·····カウンセラーとか勧めてみたんだけどいい顔はしなかったんだ·····」
他人にこんな相談をしたところで何にもならないかもしれないが、手に取っている本のことを問われて誤魔化す訳にもいかず、特に返事を期待せずに流してくれさえすれば良かった。
しかし、星杏は顎に右手を当て、深く考え込むと何か思い立ったのか勢く顔を上げては平然とした顔で「それ読む意味ありますか?」と驚愕な発言が返ってきた。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる