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精一杯のごめんなさい

精一杯のごめんなさい⑤

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渉太に背中を軽く小突かれ、後押しされるように中へと入ってくると、ゆっくりと近づいてくる。藤咲はベッドの傍に近寄ってきたが、俯いたままで目を合わせてはくれなかった。

「じゃあ、俺たちはこれで」

大樹と藤咲の間に沈黙が流れる中、律仁がそう告げると藤咲は一瞬だけ戸惑ったように「えっ」と呟いては渉太の方を見た。しかし、渉太もニコニコと笑顔のままで何も言わずにいたので、藤咲はすぐに黙り込んでしまう。

やっぱり急に二人きりになるのは向こうも拒絶するくらいだし、嫌なんだろうと感じ取れる。

「もう帰るのか、別に居てもいいんだが·····」

「大樹が名残惜しんでくれるの嬉しいけど、俺が渉太と二人きりになりたいんだよね、ね?」

そんな藤咲の様子を見て、それとなく引き止めてみたが、あっさりと躱され、律仁と渉太がお互いに目を見合わせてコンタクトをとっていた。

おまけに律仁が俺に向かって、「大樹だって尚弥くんと積もる話あるだろ?」と凄まじい眼力で同意を求めてきたので、大樹自身も二人がこの場から居なくなるのは正直、困ったが「まぁ.......そうか」と頷くしかなかった。

大樹が頷くや否や律仁は「病院近くのコーヒーショップにいるから尚弥くん終わったら、俺か渉太のどっちでもいいから連絡入れてね?」と藤咲に向かって話しかけると「じゃあ、大樹またな」と言葉を残しては颯爽と病室を出ていく。渉太も「先輩、お大事にしてください」と一礼してその場を去ってしまった。

嵐のように去っていった二人によって、静かになった個室内。とりあえず藤咲を近くの丸椅子に座るように促したが、首を左右に振って、座ることを拒否していた。

あんまり長居をする気がないんだろうと窺えるその様子に、当たり前ではあるが何処か寂しいような·····。

積もる話も無いわけではないが、藤咲は俺と話したくないだろうし、俺と藤咲の仲を取り持とうとする律仁が強引に連れてきたんだろう·····。

だからと言ってこのまま無言を貫くのも、耐え難い·····。

「藤咲、あの後大丈夫だったか?勢いとはいえ·····叩いてしまってすまなかった·····」

まず話すべきことはこの間のパーティの出来事。不安げに瞳を揺らして別れたタクシーのその後の藤咲も心配だったが、それ以上に感情が昂って藤咲を叩いてしまったことを謝らなければいけなかった。

大樹が謝罪をしても藤咲は俯いたままで何も返答がないので、沈黙が不安になる。


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