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守れるのなら……

守れるのなら……⑦

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藤咲の背中を押しては右腕に強い痛みを感じながらも、一刻も早く宏明の元から彼を離したかった大樹は1階ラウンジまで降り、ソファ椅子に藤咲を座らせる。未だに呼吸が落ち着かない藤咲に自動販売機で水を買ってきてやると飲むように促した。

手を震わせながらもゆっくりとペットボトルの水を口に運ぶ藤咲の目には涙が浮かんでいる。その姿を見ていると自分は過去にとんだ過ちを犯したのだと痛感させた。ここまで藤咲に恐怖を抱かせてしまっていたのだと思いもせず、助けられなかった自分に罪悪感を感じ感傷に浸って何もしてこなかっただけ。

ただただ醜い……。

しばらくして落ち着いたのか、藤咲の呼吸も戻り、震えていた手や身体も治まりつつあった。顔を上げ、俺の姿を目視した藤咲は睨みつけてきていたが、表情が酷く困憊しているようだった。

「何であんたもあいつもいるんだよっ」

誰もいない静かなラウンジに藤咲の威勢が響き渡っては、同時にペットボトルを腹部に投げつけられた。ジャケットと絨毯へと転がったペットボトルの水が色濃くなって湿っていく。

藤咲が怒るのも無理はなかった。
彼の前に一切現れるなと忠告されたにも拘わらず、こんな形とはいえ顔を合わせることになってしまった。しかも、宏明までもだ。

「父親の代わりに呼ばれてきたんだ。だからなるべく藤咲とは避けるようにしてたんだけど、宏明まで来るとは知らなかった……。こんな形で鉢合わせて不愉快にさせてしまって申し訳ない」

大樹は床に転がったペットボトルを拾ってはソファのサイドテーブルに置くと、藤咲に向かって、もう何度下げたかも分からない頭を下げた。藤咲は「そうやって謝ってばっかだよな」と呟いただけでその先はない。

大樹もそれ以上の言葉が見つからない。
ゆっくりと状態を起こしては、「クローク行ってくるから、此処で待っててくれ」と藤咲に言い残し荷物を取りに行こうとしたとき、「あんたに助けられるくらいなら助けて欲しくなんかなかった……」と背後で呟かれ、思わず振り返えると反射的に藤咲の頬を叩いていた。

右下へと傾けられる藤咲の顔……しまったと思った時には既に遅かったが、憎まれ口を叩く藤咲にどうも我慢がならなかった。
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