これが恋だとしても·····

なめめ

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守れるのなら……

守れるのなら……⑤

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誰かが使う予定が入っていないのか、全く人気のない廊下を歩き、小ホール前までたどり着いたが、藤咲と宏明がいる様子は見られなかった。

気持ちが焦る中、皆目見当もつかないこのホテル内に手詰まりして大樹は頭を抱えながら壁に凭れると大樹の直ぐ隣にあったステンレス製の円柱型のゴミ箱が目に付いた。見覚えのある黒い手袋が捨てられている……これは此処に藤咲が来たという証拠だ……。大樹はゴミの中から手袋を取り出すと、遠目で見ていたものと間違えないことを確認する。

ふと、向かいの扉に目線を移した。

まさか……誰もいないホールに勝手に入るなんてことはあるだろうか……。でも、探してみるに越したことはないとドアノブに手をかけた時、扉の向こう側からガタンと大きな音が聞こえてきて、大樹はその音に急かされるように扉を開けた。

外からの月明かりだけで薄暗くて見えないが人がいるのは間違いない。誰かの息苦しくしそうな喘鳴音と「尚弥、昔みたいに大人しくしようか?」と囁いている声で、完全に探していた二人だと認識した。

次第に目が部屋の明るさになれてくると、本来は積み上げられ、整理されているはずのていたはずのパイプ椅子ラックが倒され、藤咲が壁際に手首を押さえつけられ、声を荒らげることもままならないのか、下肢をじたばたさせながら抵抗していた。

「兄さん何してるんですか?」

後ろ姿でもわかる、兄の姿。

問いかけたことで大樹の存在に気づいたのか、あからさまな舌打ちに此方へ顔を向けてくる。視線が冷たいことは、雰囲気から感じ取れ、途端に足が震える程の恐怖が襲う。
しかしここで、怖気付いてはダメだと拳を強く握ることで自分を奮い立たせていた。

「なんだー。大樹かー。何って見ての通り尚弥くんと遊んでいるんだよ。懐かしなーって世間話に花を咲かせてただけさ」

藤咲を捕まえていた手が離され、両手を広げ揚々と話しながらも此方へと向かってくる宏明。後ろの藤咲は腰が抜け、喉元を必死に抑えて呼吸をし、壁に沿いながら座り込んでしまった。

呼吸が浅く過呼吸を起こしているようで、いつもの様子と明らかに違う。早く誰かに摩ってもらうなり気持ちを落ち着かせてやらなきゃいけないが、兄の存在も見過ごせない。

「そんな風には見えないですけど」

言い返すだけの勇気はまだある。しかし、宏明は動じるどころか口元だけ笑みを浮かべながら、自分の目の前で足を止めた宏明は、大樹の肩を叩いた途端に笑顔が消えていた。

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