君のために僕は歌う

なめめ

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志すもの

志すもの⑭

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「おやじー。すげぇ美味そうなんだけど。俺にも作ってよ」

育ち盛りの年頃である律仁にとって、ホットサンドを3枚なんて余裕だった。あっという間に大樹から貰ったサンドを平らげると皿を突き出しておかわりを乞う。
そんな律仁を見て、黒田は愕然としていた。

「律仁、大丈夫なのか?お前は何皿食うつもりなんだ。そんなに食べて肥えてでもしたら吉澤さんに怒られるんじゃないのか?」

吉澤と名前を聞いて胸騒ぎがしたが、肥えてアイドルに相応しくない体型にでもなれば奴も諦めてくれるのではと良からぬ思考が働いてしまう。

「大丈夫だって、俺、育ちざかり真っ只中じゃん?その分、動いてるから問題ないっしょ?」

絶対怒られると分かっているからこそ、抗いたくなる。もしかしたらあの吉澤であれば、強行突破で太ましいアイドルとしてデビューをさせるかもしれない。

それはそれで面白いけど……。

「麻倉くん、辞めときなよ。吉澤さんもうすぐ来るかもしれないし·····」

「大丈夫だって。なぁ、おやじぃ。大樹と同じやつもうひと皿……いや、二皿作ってよ?」

止めてくる大樹を振り払って、黒田に向かって両手を組み、上目遣いで見つめてはウィンクをして催促をした。

黒田は「しかしなぁー」と言いながら渋っているのは一応、吉澤の友達であるから彼の顔を立てようとしているのだろう。
けれど律仁自身はホットサンドを一、二枚食べたところで満腹まではいかない。
ふた皿など余裕のお腹であった。

「お前はこれ以上肥えて、どすこいアイドルとしてデビューでもするつもりなのか?」
「げっ·····」

渋る黒田に根気よく懇願していると、背後から声をかけられて振り返る。そこには現場終わりの吉澤の姿があった。

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