君のために僕は歌う

なめめ

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認めたくない相方

認めたくない相方④

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「……それでもサボったら吉澤さんに怒られるし、デビューまで時間ないんだから、ちゃんと受けようよ」

顔を上げた長山はベッドから立ち上がると律仁の元まで近づいてきた。
一見、口では真面目なことを言っているが此奴から表情に正気を感じられない。先程の呟きからも負の感情が滲み出ていて誰かに言われて仕方なくやっているような、どこか義務的なものを感じ、瞳の奥が澱んでいた。

あんな結果になってしまったけど、鈴奈は自らがやりたくて音楽をやっていた。表情がキラキラと輝いていて眩しくて、だから自分はそんな彼女に惹かれて自らも歌いたいと思えた。俺と歌っている時も鈴奈は楽しそうに歌っていた。俺だけじゃない、此処にいるやつらは、少なからず夢や希望を抱いて活動をしている人たちで活き活きとしているのは間違いなかった。

「吉澤に怒られるのが嫌だから受けるとか、そこにお前の意志はあるのか?
お前は俺と本気でアイドルやりたいと思って言って来てんの?」

初対面の中坊に意地悪い問いだと分かっていたが、仮にも此奴と組むことになるのだとしたら律仁が納得できるような人であってほしかったし、単純に己の意志を主張できない奴は律仁の一番苦手なタイプだった。


案の定、長山は俯いて黙り込む。「ほら、みたことか」と内心で呟きながらも律仁は再び青年に背を向けて、左腕を枕にすると瞼を閉じた。今日は色々ありすぎて精神的に参っている人のことなど構っている余裕はない。
考えるのは鈴奈のことばかりだった。

「ぼ、僕にだってやりたいことがあるんだっ」

暫くして静寂に包まれていた部屋から長山が緊迫感のある声音で訴えてきて、落としていた瞼を開いた。

「だから僕はどうしても君と組んで芸能人にならなきゃならないんだ。その為に今日までレッスンだってしてきたし……。もう家には帰りたくないから……」

どんな表情で言って来ているのかは分からなかったが、声音から真剣さは伝わってきた。それに写真で見る限りでは裕福そうな坊ちゃんである此奴が家に帰りたくないと言うのだから何か訳ありなんだろう。

律仁は上体を起こして、長山と向き合うと彼は両拳を握って真っすぐ前を見据えて来ていた。

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