君のために僕は歌う

なめめ

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偽りの花言葉

偽りの花言葉⑤

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夕刻17時から開演が始まるライブはリハーサルが昼過ぎ入り。鈴奈とは入り時間の15分前に現地集合で約束をしていた。

寮から迎えに行くと提案したものの彼女も彼女で準備があるらしく、律仁はそれ以上に無理強いはしなかった。

それに昨夜はあの流れのまま彼女との初めてを迎えることが出来た。律仁自身、好きな人と心だけではなく身体でも想いを交わらせることなどなく、たどたどしいながらも最後まで遂げることができた。

恥ずかしさはあったけれども、幸福感の方が大きい。言葉では貰えなかったけど、鈴奈も俺のことを想ってくれているように感じた。

ひとつだけ違和感があったことといえば、事が終わった後に鈴奈の項にキスをしようとした時、つけた覚えのない鬱血痕のようなものに違和感を覚えたことだった。

彼女に問うたら「虫に刺されたかも……」と言っていたので過度に気にする程のことでもなかった。

それよりも昨夜の鈴奈のことを思い出しては道中で何度も顔がニヤけてしまいそうになるほど律仁の気持ちは浮ついていた。

きっとこのライブを無事成功に終えられれば二人の未来は明るい気さえしてくる。

律仁は待ち合わせ場所のライブ会場の前まで到着すると先に挨拶を済ませようと中に入る。地下へと繋がる階段を下り、ロッカールームを抜けて会場内へと足を踏み入れると、バーカウンターで準備をしている髭面のふくよかな体型をしたライブハウスのオーナーを見つけた。

此処のライブハウスでは対バンではあったが、一度だけ鈴奈とライブをした事があり、律仁もオーナーとは面識はあった。

「どうも、今日はよろしくお願いします。律仁です」

律仁はオーナーを見つけるなり、近寄って挨拶を交わすと向こうも認識してくれていたのか「おぉー。律仁くん。来たのかー。鈴奈ちゃんの相方だろ?」と迎えてくれては挨拶がわりに握手を求められた。

「それにしても残念だったよなー」

握手を交わすと同時に掛けられた言葉に律仁は顔をあげる。
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