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偽りの花言葉
偽りの花言葉②
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漠然とした不安と疑問を抱きながらも、彼女に連れられるまま開けられたリビングへと繋がる扉を抜けて中へと入る。
構造は自分の部屋と変わらない。キッチンダイニングだが、ミニテーブルにベッドにタンスだけのやけに生活感のない殺風景な部屋だった。鈴奈のことだから音楽関係のものを置いていてもおかしくないのに、まるで引越したてのような空っぽの部屋。
女の子の部屋と言えば、もっとピンクだとか化粧道具だとか可愛らしい部屋を想像していたが、キツい性格の鈴奈であれば生活必需品以外の余計なものを一切置かないのは彼女らしいといえばらしいが……。
「なんか、鈴奈らしい部屋だね」
「そう?女の子の部屋にしては何もないけどね」
鈴奈は苦笑を浮かべながらもベッドの前のミニテーブルの床に座布団を敷いてくれた。
律仁は何の気なしにそこへ座ると、キッチンへと向かい、お茶の準備をする彼女の背中に話しかける。
「それでも俺の部屋は楽器とか、参考資料とか床に散らばって足の踏み場がないくらいごちゃごちゃだからさ」
「そう……」
いつもであれば「あんたらしい」だとか「だらしない」だとか律仁を罵る言葉のひとつでも飛んできておかしくないのに、今日の彼女はやけに素っ気なく口数も少ない気がする。
食ってかかってくるような返事を期待していただけに調子が狂う。
ふとミニテーブルに添えられた丸い花瓶の花が目に入った。一枝のてっぺんには小さい白い花が咲いていて、その下にはまだ色付いていない緑色の袋状の実をつけている。
鈴奈は花を好む女性だっただろうか。
彼女の家族のことや、絵が上手であることは何となく知っているが日頃の会話と言えば音楽のことばかりで、花を好むイメージはなかった。
しかし、母親もよく花束を貰って帰ってきていたことから女性は花を好む傾向にあるのだろう。
白くて美しいと感じた花は彼女そのもののようで、根拠はないが眺めていて落ち着く。
なんて言う花だろうか……。
「鈴奈……。これ、花なんて言う花?」
テーブルの上の花瓶の花を指差して問う。
「ホオズキよ」
グラスに入れた麦茶をお盆に乗せて持ってきた鈴奈は律仁の隣にゆっくりと正座をして座った。
構造は自分の部屋と変わらない。キッチンダイニングだが、ミニテーブルにベッドにタンスだけのやけに生活感のない殺風景な部屋だった。鈴奈のことだから音楽関係のものを置いていてもおかしくないのに、まるで引越したてのような空っぽの部屋。
女の子の部屋と言えば、もっとピンクだとか化粧道具だとか可愛らしい部屋を想像していたが、キツい性格の鈴奈であれば生活必需品以外の余計なものを一切置かないのは彼女らしいといえばらしいが……。
「なんか、鈴奈らしい部屋だね」
「そう?女の子の部屋にしては何もないけどね」
鈴奈は苦笑を浮かべながらもベッドの前のミニテーブルの床に座布団を敷いてくれた。
律仁は何の気なしにそこへ座ると、キッチンへと向かい、お茶の準備をする彼女の背中に話しかける。
「それでも俺の部屋は楽器とか、参考資料とか床に散らばって足の踏み場がないくらいごちゃごちゃだからさ」
「そう……」
いつもであれば「あんたらしい」だとか「だらしない」だとか律仁を罵る言葉のひとつでも飛んできておかしくないのに、今日の彼女はやけに素っ気なく口数も少ない気がする。
食ってかかってくるような返事を期待していただけに調子が狂う。
ふとミニテーブルに添えられた丸い花瓶の花が目に入った。一枝のてっぺんには小さい白い花が咲いていて、その下にはまだ色付いていない緑色の袋状の実をつけている。
鈴奈は花を好む女性だっただろうか。
彼女の家族のことや、絵が上手であることは何となく知っているが日頃の会話と言えば音楽のことばかりで、花を好むイメージはなかった。
しかし、母親もよく花束を貰って帰ってきていたことから女性は花を好む傾向にあるのだろう。
白くて美しいと感じた花は彼女そのもののようで、根拠はないが眺めていて落ち着く。
なんて言う花だろうか……。
「鈴奈……。これ、花なんて言う花?」
テーブルの上の花瓶の花を指差して問う。
「ホオズキよ」
グラスに入れた麦茶をお盆に乗せて持ってきた鈴奈は律仁の隣にゆっくりと正座をして座った。
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