36 / 92
シークレットライブ
シークレットライブ③
しおりを挟む
「顔で売り出してもらえるだけでもいいじゃない。それでいて歌も上手かったら上出来だし、アイドルだってそう簡単にできるものじゃないのよ」
「それは分かってるけど·····。鈴奈だってさっきは俺との歌認めて欲しかったって言ってただろ?このまま話が流れて俺が他のやつと活動始めてしまってもいいのかよ。アイドルって女にキャーキャー言われんだろ?鈴奈はそんな俺のことどう思うんだよ……」
鈴奈の細い指を払うと不貞腐れたようにそっぽを向いて呟く。本来であれば全て順調にいけば鈴奈に告白して恰好がついたのに……。この際、恰好が悪くても鈴奈の本心は知りたかった。「嫌よ、あたしの律仁じゃなきゃ」だなんて鈴奈が瞳を潤ませて縋ってくるのを期待して鼻の下が伸びてしまうのを必死に歯を食いしばって堪える。
「どう思うって……。あんた馬鹿なの、アイドルはキャーキャー言われてなんぼじゃない」
そんな浮かれた想像をしていた律仁の心を見透かしてなのか、突如鈴奈の指で額を弾かれて、一瞬だけ頭部が後ろに傾いた。やっぱり鈴奈を前にしていい雰囲気に持ってこようとするのは一万年早いらしい。
「馬鹿って、相変わらず口悪っ。これでも本気で凹んでるんだから年上なら慰めるくらいしろよ……」
「ふーん」
背けた顔を覗き込むように鈴奈がじっと眺めてくる。
その視線がやけに緊張して、鼻毛が出てるのではないかと良からぬ心配をしてしまう。
「よしよし、律仁は顔なんかじゃない歌の方が上手いから元気だして?」
律仁の言葉通りに鈴奈が頭を撫でて慰めてくる。
いつもはおちょくって犬も食わないような口喧嘩を始まると言うのに、
自分が子供のように扱われて恥ずかしいのに、心地よく感じてしまっている自分がいる。
律仁は鈴奈に頭を撫でられて羞恥心で我慢できずに、崩れるように屈むと両手で顔を覆った。
「鈴奈、いざ慰められたら恥ずかしい……からやめろよ……。変な気起こしそう……」
「ちょ、変な気ってあんたが言ったんじゃない。道端で変なこと言わないでよ」
「変なことってこれでも俺だって男の子なんだけど……。好きな人に頭撫でられたらそりゃ……」
膝の上に腕を置き、顎を乗せる。
鈴奈に触れたい、抱き締めたい。愛おしい。甘えたい。
理性と煩悩の狭間でどうにかなってしまいそうになる。
ふと鈴奈も律仁と同じ目線まで屈んでくると、少しだけ身を乗り出して先ほど指ではじかれた額にキスを落とされた。
「これでどうにかおさめてよ。それに……あんたがキャーキャー言われるのはあんまりいい気はしないかも……」
口を尖らせながらも頬を赤らめて呟く彼女に胸を強く締め付けられる。
事務所とのユニットの話はうまくいかなかったけど、鈴奈の本音がみれたところは大きな進歩だった。
「それは分かってるけど·····。鈴奈だってさっきは俺との歌認めて欲しかったって言ってただろ?このまま話が流れて俺が他のやつと活動始めてしまってもいいのかよ。アイドルって女にキャーキャー言われんだろ?鈴奈はそんな俺のことどう思うんだよ……」
鈴奈の細い指を払うと不貞腐れたようにそっぽを向いて呟く。本来であれば全て順調にいけば鈴奈に告白して恰好がついたのに……。この際、恰好が悪くても鈴奈の本心は知りたかった。「嫌よ、あたしの律仁じゃなきゃ」だなんて鈴奈が瞳を潤ませて縋ってくるのを期待して鼻の下が伸びてしまうのを必死に歯を食いしばって堪える。
「どう思うって……。あんた馬鹿なの、アイドルはキャーキャー言われてなんぼじゃない」
そんな浮かれた想像をしていた律仁の心を見透かしてなのか、突如鈴奈の指で額を弾かれて、一瞬だけ頭部が後ろに傾いた。やっぱり鈴奈を前にしていい雰囲気に持ってこようとするのは一万年早いらしい。
「馬鹿って、相変わらず口悪っ。これでも本気で凹んでるんだから年上なら慰めるくらいしろよ……」
「ふーん」
背けた顔を覗き込むように鈴奈がじっと眺めてくる。
その視線がやけに緊張して、鼻毛が出てるのではないかと良からぬ心配をしてしまう。
「よしよし、律仁は顔なんかじゃない歌の方が上手いから元気だして?」
律仁の言葉通りに鈴奈が頭を撫でて慰めてくる。
いつもはおちょくって犬も食わないような口喧嘩を始まると言うのに、
自分が子供のように扱われて恥ずかしいのに、心地よく感じてしまっている自分がいる。
律仁は鈴奈に頭を撫でられて羞恥心で我慢できずに、崩れるように屈むと両手で顔を覆った。
「鈴奈、いざ慰められたら恥ずかしい……からやめろよ……。変な気起こしそう……」
「ちょ、変な気ってあんたが言ったんじゃない。道端で変なこと言わないでよ」
「変なことってこれでも俺だって男の子なんだけど……。好きな人に頭撫でられたらそりゃ……」
膝の上に腕を置き、顎を乗せる。
鈴奈に触れたい、抱き締めたい。愛おしい。甘えたい。
理性と煩悩の狭間でどうにかなってしまいそうになる。
ふと鈴奈も律仁と同じ目線まで屈んでくると、少しだけ身を乗り出して先ほど指ではじかれた額にキスを落とされた。
「これでどうにかおさめてよ。それに……あんたがキャーキャー言われるのはあんまりいい気はしないかも……」
口を尖らせながらも頬を赤らめて呟く彼女に胸を強く締め付けられる。
事務所とのユニットの話はうまくいかなかったけど、鈴奈の本音がみれたところは大きな進歩だった。
1
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
坊主頭の絆:学校を変えた一歩【シリーズ】
S.H.L
青春
高校生のあかりとユイは、学校を襲う謎の病に立ち向かうため、伝説に基づく古い儀式に従い、坊主頭になる決断をします。この一見小さな行動は、学校全体に大きな影響を与え、生徒や教職員の間で新しい絆と理解を生み出します。
物語は、あかりとユイが学校の秘密を解き明かし、新しい伝統を築く過程を追いながら、彼女たちの内面の成長と変革の旅を描きます。彼女たちの行動は、生徒たちにインスピレーションを与え、更には教師にも影響を及ぼし、伝統的な教育コミュニティに新たな風を吹き込みます。
冬の夕暮れに君のもとへ
まみはらまさゆき
青春
紘孝は偶然出会った同年代の少女に心を奪われ、そして彼女と付き合い始める。
しかし彼女は複雑な家庭環境にあり、ふたりの交際はそれをさらに複雑化させてしまう・・・。
インターネット普及以後・ケータイ普及以前の熊本を舞台に繰り広げられる、ある青春模様。
20年以上前に「774d」名義で楽天ブログで公表した小説を、改稿の上で再掲載します。
性的な場面はわずかしかありませんが、念のためR15としました。
改稿にあたり、具体的な地名は伏せて全国的に通用する舞台にしようと思いましたが、故郷・熊本への愛着と、方言の持つ味わいは捨てがたく、そのままにしました。
また同様に現在(2020年代)に時代を設定しようと思いましたが、熊本地震以後、いろいろと変わってしまった熊本の風景を心のなかでアップデートできず、1990年代後半のままとしました。
僕と君の思い出は紫陽花の色
星名雪子
青春
古都・鎌倉に住む幼馴染の青春物語。巡る季節の中で年を重ねていく二人の姿を綴っていきます。
※既出の「雨上がりと紫陽花と」「再び出会う、満月の夜に」に新作を加えて連作短編にしました。
【推しが114人もいる俺 最強!!アイドルオーディションプロジェクト】
RYOアズ
青春
ある日アイドル大好きな女の子「花」がアイドル雑誌でオーディションの記事を見つける。
憧れのアイドルになるためアイドルのオーディションを受けることに。
そして一方アイドルというものにまったく無縁だった男がある事をきっかけにオーディション審査中のアイドル達を必死に応援することになる物語。
果たして花はアイドルになることができるのか!?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる