君のために僕は歌う

なめめ

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シークレットライブ

シークレットライブ①

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「鈴奈……。吉澤に掛け合っても、やっぱダメだった」

吉澤を説得できなかった悔しさと鈴奈の顔をみた安堵で自然と瞳が潤む。泣きっ面なんて見せたくなくて伏し目がちに、彼女にそう告げると「そう、それは仕方ないわよ。大人の事情ってやつで簡単に許可出せないんでしょ?」と少し無理やりな笑顔を見せて励ましてきた。

やけに大人びた態度の鈴奈に悶々とした気持ちを抱きながらも、律仁は自分のギターケースを鈴奈から受け取ると先を行く彼女の背中を追うように後ろについて歩く。

「悔しくねぇの?あんだけ頑張ったのにさ」
「そりゃ·····。だけど、仕方ないこともあるのよ·····」
「仕方ない、仕方ないって。なんで、鈴奈はそんなに冷静なんだよっ。鈴奈は俺と活動することはそんな軽いもんだったのかよ。さっきだっていい加減に歌ってたって言うのか?」

全てを知ったような冷めた態度の鈴奈が腹立たしくて津人は彼女の肩を掴んで此方を振り向かせた。瞳を揺らし少しだけ怯えさてしまった自覚はあったが、鈴奈にも同じ熱量でいてほしかった想いから、悲しさと腹立たしさが織り交ざった得も言えぬ感情をただただ彼女にぶつけることしかできなかった。

「そんなわけないじゃないっ。あたしだって律仁との歌認めてほしかった。あんたと歌うのは楽しかったし、一緒に歌えたらって思ってた。練習だって決して手を抜いたことなんかないし、今ままで真剣にやってきたあたしのことを侮辱するつもり?あたしがそんな歌に対して無礼な真似するわけないじゃない」

目をかっぴらぎながら瞳に涙を浮かべて、今までの比ではないくらいの大声で訴えてきた鈴奈に圧倒させられる。

「鈴奈ごめん……。言いすぎた」

怒りの熱が上がっていたといえ、言いすぎたことに反省する。今まで一緒に準備をしてきて彼女がいい加減に律仁と練習をしているとは思えなかった。そんな鈴奈の訴えに目が覚めた律仁は頭を俯かせて謝ると、彼女に歩み寄る。

鈴奈は強がりなだけで、本当は傷つきやすい性格だと分かっていたはずなのに·····。

律仁は両手で涙を拭う彼女の頬に右手を添えて、親指で涙を拭った。


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