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交渉決裂
交渉決裂⑤
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「こっちにも色々事情があるんだよ。この話は終わりだ。三郷さんもタレントを持ち上げるのは大いに大事だけど会社の方針も忘れないように」
吉澤は律仁と鈴奈に言うだけ言って商談室から出て行ってしまった。吉澤はああ言ってはいたが、会社の方針以前にマネージャーはタレントの気持ちを汲んでくれるものなのではないのかと吉澤のあまりの淡白さに心が荒んでいく。
「律仁、吉澤さんが言ってるなら仕方ないわ……。三郷さんだけじゃどうにかならないですよね……」
「そうね、私も悪い話じゃないとは思うし、後押しはしてあげたいけど……
吉澤さんの考えもあるから……」
「律仁、一度諦めよう?また違う方法で……」
制服の裾を引っ張られて振り返ると鈴奈は残念そうに眉を下げて、奮起している律仁を宥めてきたが、素直に納得できるような性分ではなかった。テーブルに拳を叩きつけると鈴奈の手を振り払う。
吉澤の態度にもだが、鈴奈の反応が律仁にはショックだった。
忙しいながらも受験勉強と並行して作り上げてきた自分たちの曲。
何度も公園で練習してこの日の為に万全を期してきた。全部鈴奈と一緒に音楽をするために……。
その数ヵ月の努力が吉澤の一言で白紙になってしまうなんて嫌だ。
「はぁ?簡単に引き下がれるわけないだろ?鈴奈だってこの数ヵ月全部無駄になってもいいのかよ?俺、追っかけてくる」
「ちょっと、律仁っ‼」
ダメだったとしても律仁が納得できるような正当な理由が欲しい。
呼び止める鈴奈の声を無視して、律仁は吉澤の後を追うように部屋を出ると彼はまだ二階のエレベーター前で立ち止まっていた。律仁は彼に駆け寄り、手を掴んで引き止める。
「おい、吉澤さん。なんでダメか理由を言えよ。そっちの事情ってだけで片付けられたって俺は納得しない。俺たちの曲聞いて悪いと思わなかったくせに何がダメなんだよ。俺は本気で鈴奈となら音楽をやってもいいと思ってる。そこに水を差すつもりかよ」
吉澤に鬱陶しいと思われようが、快諾を得られるまで諦めるつもりはなかった。昔からの付き人でまだ中学を卒業したばかりの子供だと思われているのかもしれないが、律仁だって吉澤の考えを知る義務があるはずだ。
威嚇するように吉澤のことを強く睨んで問い詰めてやると、彼は観念したのか深く溜息を吐いた。
「分かった。なら俺についてこい。俺のデスクで話してやる」
吉澤は律仁と鈴奈に言うだけ言って商談室から出て行ってしまった。吉澤はああ言ってはいたが、会社の方針以前にマネージャーはタレントの気持ちを汲んでくれるものなのではないのかと吉澤のあまりの淡白さに心が荒んでいく。
「律仁、吉澤さんが言ってるなら仕方ないわ……。三郷さんだけじゃどうにかならないですよね……」
「そうね、私も悪い話じゃないとは思うし、後押しはしてあげたいけど……
吉澤さんの考えもあるから……」
「律仁、一度諦めよう?また違う方法で……」
制服の裾を引っ張られて振り返ると鈴奈は残念そうに眉を下げて、奮起している律仁を宥めてきたが、素直に納得できるような性分ではなかった。テーブルに拳を叩きつけると鈴奈の手を振り払う。
吉澤の態度にもだが、鈴奈の反応が律仁にはショックだった。
忙しいながらも受験勉強と並行して作り上げてきた自分たちの曲。
何度も公園で練習してこの日の為に万全を期してきた。全部鈴奈と一緒に音楽をするために……。
その数ヵ月の努力が吉澤の一言で白紙になってしまうなんて嫌だ。
「はぁ?簡単に引き下がれるわけないだろ?鈴奈だってこの数ヵ月全部無駄になってもいいのかよ?俺、追っかけてくる」
「ちょっと、律仁っ‼」
ダメだったとしても律仁が納得できるような正当な理由が欲しい。
呼び止める鈴奈の声を無視して、律仁は吉澤の後を追うように部屋を出ると彼はまだ二階のエレベーター前で立ち止まっていた。律仁は彼に駆け寄り、手を掴んで引き止める。
「おい、吉澤さん。なんでダメか理由を言えよ。そっちの事情ってだけで片付けられたって俺は納得しない。俺たちの曲聞いて悪いと思わなかったくせに何がダメなんだよ。俺は本気で鈴奈となら音楽をやってもいいと思ってる。そこに水を差すつもりかよ」
吉澤に鬱陶しいと思われようが、快諾を得られるまで諦めるつもりはなかった。昔からの付き人でまだ中学を卒業したばかりの子供だと思われているのかもしれないが、律仁だって吉澤の考えを知る義務があるはずだ。
威嚇するように吉澤のことを強く睨んで問い詰めてやると、彼は観念したのか深く溜息を吐いた。
「分かった。なら俺についてこい。俺のデスクで話してやる」
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