君のために僕は歌う

なめめ

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鈴奈と共に

鈴奈と共に③

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今までは鈴奈の声を聞けるだけで幸せになっていた。
自らが歌うだなんて、既に頭の中では抹消していたはずなのに鈴奈の歌声を聴いていると不思議と自分も彼女のように歌えるのではないかと思えてくる。

優しい彼女の歌声に先導されて、彼女のことを見つめながら喉を鳴らし、大きく息を吸う。曲のサビに入ると同時に彼女の声に調和させるように自分の
声を重ねた。

律仁が歌い出した直後に、鈴奈は一瞬だけ目を瞠って驚いた様子をみせていたが直ぐに口元がフッと綻んだのがみえた。嫌いな歌を歌っている筈なのに心地よくて、目の前の鈴奈に語り掛けるように、詞の言葉を自分の声に乗せる。

ひとつひとつの言葉が宝物のように思えてきて、傷をつけぬように優しく声で言葉を包んで届たい。歌を通して鈴奈の心も通じ合えているような気がして
胸が熱くなる。

鈴奈と一緒に歌いたい、届けたい……。




演奏が終わり、ふと鈴奈と視線があったが律仁はすぐに目を逸らした。
今で以上に気持ちを昂らせて歌っていた気がして、正気に返った途端に恥ずかしくなる。こんな感覚は初めてで律仁には素直に受け止められるほどの心の許容は持ち合わせていなかった。

「律仁、できてんじゃん。あんなに嫌々って言ってたけど、勿体ないくらい凄くいい歌声してる。なんかじーんときちゃった」
「別に……。俺の歌なんか……」

鈴奈に拳で肩のあたりを軽く押される。ギターを返され受け取った律仁は素っ気なく返事をするとギターをケースに仕舞った。

「なんかって言わないの。もっと自信持ちなさいよ。律仁との歌、凄く心地よかった。あんたちゃんと気持ち乗せられるんじゃん」

彼女も今のデュエットが心地の良いものだと感じてくれたのか、僅かに染めた頬がさくらんぼのようで可愛かった。

それは鈴奈が先導してくれたから。鈴奈が居なかったらちゃんと歌えていなかったと思う。何時もみたいに心のこもっていない歌声で歌っていたと思う。

もしかしたら自分は鈴奈と一緒であれば、ちゃんと歌えるかもしれない。
自分にもちゃんと歌う心はあるのだと鈴奈の歌声が思わせてくれた。

「鈴奈……。やっぱり俺、鈴奈と組みたい。鈴奈と組むなら
歌うのも怖くないかもしれない……」
「それは……。今のであんたの歌が開花したなら嬉しいけど……」
「したも何も、鈴奈が俺を先導してくれたから……」

満更でもなさそうな鈴奈の態度に胸が波打つ。
律仁は然と体が前のめりになり、地面に手を突きながらゆっくりと鈴奈の顔に近づ
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