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路上の天使
路上の天使⑧
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律仁は人見知りなわけではないし、年上でも初対面の人でも分け隔てなく接することができる性格ではあるが、幼い頃から人間の醜さを散々見ていている律仁は警戒心が強かったせいか浅く狭い交友関係だった。
その中でも廉介は裏表がなく、律仁が一番付き合いやすい友人。
眉が太く、彫りの深い目元に二重のゴリラ顔が特徴的で有名スポーツブランドのロゴが目につくエナメルバックを常に下げていることから、生粋のスポーツマンである。細身でスタイルのいい律仁と違い、サッカーのゴールキーパで体格も良く、どこかの割と有名なジュニアクラブチームに入っていて毎日サッカー漬けの彼は忙しいはずだが……。
「んーあるけどない」
予定は大ありではあったが、そんな廉介がこのタイミングで話しかけてくるのは大体遊びの誘いだと分かっていた。だからと言って小さなことでも嘘をつく後ろめたさからどっちとつかずな返答を返すと、机に突いていた廉介の右手がズルっと滑り出す。
「どっちだよ。それ」
「レッスンあるけど、遊びの誘いならいいよって話」
「正にそうなんだけどさ、それって大丈夫なのか?レッスンって歌のレッスンだろ?」
眉間に皺を寄せて問うてくる廉介に「いーの。いーの」と手を頭の後ろに組んで椅子でシーソーをする。廉介は律仁の事情をよく知っていて、だからこそ心配してくれるところがいい所でもありお節介なところもあるが……。
「で、何処に連れてってくれんの?れんちょん」
机に右肘をつけて頬杖をつくと、満面の笑みで廉介に問い掛ける。
誤魔化しアイテムでもあるこの笑顔をすれば、誰もが心を持っていかれ都合の悪いことは帳消しにできる律仁の特技であった。
それに可愛げのある名前で呼んであげればイチコロで、案の定廉介の耳朶が赤く染まり、動揺しているのがよく分かる。
「れ、れんちょんって。いい加減その腑抜けたあだ名どうにかしてくんね?」
呼び方ひとつで照れてる彼は顔に似合わず面白い。「やーだね」と舌を出して、悪戯に笑ってやると「この体形でれんちょんって呼ばれてる俺の身にもなってみろよ」と鼻息を荒らげて怒りを露わにしていた。
「れんちょん、れんちょ……れ……ゴ……ゴリ……ゴリちょん。確かに大傑作だわ……」
改めて廉介の体型を見ながら考えているうちに進化していった廉介のあだ名が、律仁は壺にはまりすぎて腹を抱えて笑う。
「律仁って憎たらしいけど、顔からしてイケメンだからホント人間たらしだよなあー」
「でしょ?」
小さい頃から刷り込まれるように美少年と言われ、中学に上がった今も周りの女子から陰ながらに黄色い歓声を受けていることは気づいているので否定はしない。割と自由奔放に生きてきたので人間たらしと言われれば、そうかもしれない。
いつもの調子で自信満々に応えると、あからさまに廉介が顔を引き攣らせたので、それが面白くてまた笑った。
その中でも廉介は裏表がなく、律仁が一番付き合いやすい友人。
眉が太く、彫りの深い目元に二重のゴリラ顔が特徴的で有名スポーツブランドのロゴが目につくエナメルバックを常に下げていることから、生粋のスポーツマンである。細身でスタイルのいい律仁と違い、サッカーのゴールキーパで体格も良く、どこかの割と有名なジュニアクラブチームに入っていて毎日サッカー漬けの彼は忙しいはずだが……。
「んーあるけどない」
予定は大ありではあったが、そんな廉介がこのタイミングで話しかけてくるのは大体遊びの誘いだと分かっていた。だからと言って小さなことでも嘘をつく後ろめたさからどっちとつかずな返答を返すと、机に突いていた廉介の右手がズルっと滑り出す。
「どっちだよ。それ」
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「で、何処に連れてってくれんの?れんちょん」
机に右肘をつけて頬杖をつくと、満面の笑みで廉介に問い掛ける。
誤魔化しアイテムでもあるこの笑顔をすれば、誰もが心を持っていかれ都合の悪いことは帳消しにできる律仁の特技であった。
それに可愛げのある名前で呼んであげればイチコロで、案の定廉介の耳朶が赤く染まり、動揺しているのがよく分かる。
「れ、れんちょんって。いい加減その腑抜けたあだ名どうにかしてくんね?」
呼び方ひとつで照れてる彼は顔に似合わず面白い。「やーだね」と舌を出して、悪戯に笑ってやると「この体形でれんちょんって呼ばれてる俺の身にもなってみろよ」と鼻息を荒らげて怒りを露わにしていた。
「れんちょん、れんちょ……れ……ゴ……ゴリ……ゴリちょん。確かに大傑作だわ……」
改めて廉介の体型を見ながら考えているうちに進化していった廉介のあだ名が、律仁は壺にはまりすぎて腹を抱えて笑う。
「律仁って憎たらしいけど、顔からしてイケメンだからホント人間たらしだよなあー」
「でしょ?」
小さい頃から刷り込まれるように美少年と言われ、中学に上がった今も周りの女子から陰ながらに黄色い歓声を受けていることは気づいているので否定はしない。割と自由奔放に生きてきたので人間たらしと言われれば、そうかもしれない。
いつもの調子で自信満々に応えると、あからさまに廉介が顔を引き攣らせたので、それが面白くてまた笑った。
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