19 / 27
博愛主義!ヤンデレンジャー!!
フィランスイエローになるまで(2)
しおりを挟むその日の夜、僕はいつものように連絡帳に今日の出来事を書いた。連絡帳って言うのは担任の先生との交換日記みたいなもので、低学年のクラスは全員やっているんだけど高学年のクラスは先生によってやったりやらなかったり、時々やったりする。僕の担任の先生は特別子供が大好きで明るい先生なので六年生のくせに毎週連絡帳をやりとりする。
『今週は、僕の誕生日だったので駅前のお店でパフェを食べに行きました。僕は本当はチーズケーキの方が好きだけど、子供の頃に誕生日はパフェを食べるとお兄ちゃんと約束をしたので毎年決まって誕生日はお兄ちゃんとパフェを食べに行きます。』
『向日葵さん誕生日おめでとう!優しいお兄さんですね、向日葵さんのところは兄妹の仲が良くて素敵!』
僕がお兄ちゃんとパフェを食べに行ったのは僕が小学校二年生の頃、確かお兄ちゃんもまだ小学生だった。何のアニメか忘れたけどパフェを食べるシーンを見てどうしても食べたくなったとわがままを言う僕を近くのファミリーレストランに連れて行ってくれた。
お母さんにお金をもらって、お兄ちゃんと手を繋いで出掛けた。僕は初めて子供だけでご飯を食べに行ったからドキドキしたのをよく覚えている。
その日は丁度僕の誕生日で、お兄ちゃんは来年も再来年もこれからずっと僕の誕生日は一緒にパフェを食べに行こうって言ってくれた。大人になったら食べ切れるか心配なくらいに大きなジャンボパフェも食べさせてくれると約束してくれた。
でも、お兄ちゃんと二人でパフェを食べに行ったのはその年が最初で最後になった。
中学生になって変わってしまったお兄ちゃん、多分僕との約束も誕生日も忘れてしまうくらいに毎日大変なんだとおもう。でも、いつかあの時の優しいお兄ちゃんに戻ってもう一度僕とパフェを食べに行ってくれるって信じてる。
だから今はただ、お兄ちゃんに嫌われないように頑張る。
そんな僕の毎日が終わったのは小学六年生の梅雨の時期だった。夏休みまであと一か月半くらいかな、とか思いながらお休みの日を過ごしていると突然辺りがぐにゃりと歪んだ。
多分それは普段なら眠っている夜のことで、その日は特別お兄ちゃんがイライラしていたから僕はお腹の痛みでなかなか眠りにつくことが出来なかった。明日も学校だからはやく眠らないとって思いながら過ごしていたら、急に家の中がおかしくなった。
何がおかしいのかわからないけど、どこかから変な声が聞こえるし、部屋の中がモノクロテレビみたいに色がなくなってしまったようだった。
「ど、どろぼう?」
家の様子がおかしいというだけで僕は勝手に泥棒だと勘違いし、布団の中にいるのが怖くなって自分の部屋のクローゼットに身を潜めた。本当に泥棒ならこれが安全な行動なのかわからないけど、とにかく混乱している僕は隠れようとしたんだと思う。
「・・・・・・」
僕が隠れてから三十分くらい経ったところで、再び世界がぐにゃりと歪んだ感じがした。クローゼットの中にいる間ずっと眼を瞑って両手で耳を塞いで丸まっていたから何が起きたのか全然わからないけど、なんとなくそろそろ安全そうだなって思い、僕は外に出た。
「お、お兄ちゃん・・・」
当然まだ夜遅い時間だから、こんな時間に起こしたら怒られるのはわかっていたけど。
もし本当に泥棒が入っていたのだったら何か盗まれているかもしれないし、とにかく僕は怖くて不安で、誰かと話がしたくてしょうがなかった。
「起きてる?ごめんね、僕だよ、向日葵」
すぐ隣の部屋をノックして外から声をかける。けど、返事は無い。
「ごめんね、入るよ」
無断で部屋に入るなんてどれだけ怒られるかわからないことだけど、お兄ちゃんへの恐怖と泥棒への恐怖がごちゃごちゃになって、いつもはしないような事ができた。僕は初めて自分の意思で兄の部屋に入り、ベッドで眠る兄に近づく。
「・・・っ!!!?」
布団から顔を覗かせている筈のお兄ちゃんの頭は綺麗になくなっていた。
首から上が綺麗にすっぱりと切り取られているみたいに、壊れたマネキンのように頭から上がなくなっている。
「ひぃっ・・・!」
思わず声を上げて一歩後ずさると、足元にゴツ、と動物の毛のような触感の重たい何かがぶつかる。
「・・・」
足元を見ると、大きな目を白黒に濁らせてだらんと舌を出した兄が無様に此方を仰いでいた。
「うわあああああああああ!!」
僕はショックのあまりその場で気を失ったらしい。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ヤクザの娘の本心を俺だけは知っている
青井風太
恋愛
赤城遥の通う高校には有名人がいた。
容姿端麗で成績優秀、ドラマでしか聞かなそうな才を持ち合わせた青崎楓は学校中から注目を集めていた。
しかし彼女を有名人たらしめる理由は他にある。
彼女は関東最大規模のヤクザ組織【青龍会】会長の愛娘であった。
『一人で暴走族を壊滅させた』『睨みつけるだけで不良が逃げ出した』などの噂が学校中に広まっていた。
ある日の放課後、忘れ物を取りに教室に戻ると遥は目撃してしまう。
ぬいぐるみに話しかけているヤクザの娘の姿を・・・
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比世界は大変らしい。(ただしイケメンに限る)
@aozora
ファンタジー
ひろし君は狂喜した。「俺ってこの世界の主役じゃね?」
このお話は、男女比が狂った世界で女性に優しくハーレムを目指して邁進する男の物語…ではなく、そんな彼を端から見ながら「頑張れ~」と気のない声援を送る男の物語である。
「第一章 男女比世界へようこそ」完結しました。
男女比世界での脇役少年の日常が描かれています。
「第二章 中二病には罹りませんー中学校編ー」完結しました。
青年になって行く佐々木君、いろんな人との交流が彼を成長させていきます。
ここから何故かあやかし現代ファンタジーに・・・。どうしてこうなった。
「カクヨム」さんが先行投稿になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる