俺以外美少女の戦隊ヒーローに入隊したけどヒロインもれなくヤンデレンジャー

寄紡チタン

文字の大きさ
上 下
14 / 27
博愛主義!ヤンデレンジャー!!

石竹桃という少女(4)

しおりを挟む


 *
「・・・桃?」

 先輩の声に振り返る。
「・・・」
「そ、それ・・・何をやっているんだ?」
 先輩は桃の手元に視線を寄せた。

「何って、握りつぶしているんですよ?茜さんを」

 ブチブチブチブチ、と糸がはち切れる音。

「茜さんって・・・フィランスレッドのぬいぐるみだよな、どうしたんだそれ」
 目の前に本物の桃がいるのに、どうして先輩は人形なんかを見ているのか。
「なんでそんなこと聞くんですかね?」
 頭と体を握り、思いっきり引っ張ったら今度は布が裂けた。
「それ、どこから持ってきたんだ」
 桃の手の中には茜さんの残骸しかなかったので、そのまま手を開いたら風に乗ってそれはどこかに飛んで行ってしまった。

「さっき助けた男の子が、持っていたんです」

「なんでそれを!助けた子供がもっていたぬいぐるみを壊しているんだ」
「・・・?」
 何故だろう、先輩は怒っている。
「どうしてフィランスレッドのぬいぐるみを壊してるんだ」
「だって、桃が助けたのにレッドが好きだっていうから」
「!?」
「おかしいじゃないですか。あの子は桃に惚れた筈なのに、確かに桃の可愛さを見た筈なのに・・・フィランスレッドのぬいぐるみを桃に渡してきたんです」
「何の話をしてるんだ?」
「さっき桃が助けた男の子・・・僕の宝物だからあげるって、よりによって茜さんのぬいぐるみを渡してきたんですよ!?おまけに『大事にしてね』だなんて、おかしくないですか?おかしいですよね、桃に助けられて、フィランスピンクを好きになったのならレッドのぬいぐるみなんてその場で滅茶苦茶にしてゴミにしてしまえばいいのに!どうして大好きな桃にそれを渡すんですか?おかしくないですか?宝物じゃないですよね?」

 桃が助けたのだからその心は桃が一方的に独占していい筈なのに。

「ど、どうしたんだよ桃・・・その子は今はピンクが一番好きになったんだろ?いいじゃないか。だいたい子供なんだから深く考えずに助けてくれた桃に感謝の気持ちとして一番お気に入りのおもちゃをくれただけだよ・・・」

「良くないですよ!桃の事が一番好きなのにレッドのぬいぐるみが宝物だなんて!大事にしてほしいと思うなんて!あり得ない!それじゃあなんですか?わざわざ助けに来た桃と画面越しにしか見ていないレッドが同レベルっていうことですか?」

「どれくらい好きとか別にいいじゃないか、ヒーローってそういうものじゃないのか?というか、知らない人からの人気とか、どうでもいいだろ」
 人気とかどうでもいい。どういう意味だろう。とんち、なぞなぞ、ひっかけクイズ?

「・・・」

 考えても桃にはさっぱりわからない。どうでもいいわけないのに。
 状況を整理する。少年は助けてくれた桃に大好きと言って宝物をあげるといった。その宝物というのはフィランスレッドのぬいぐるみだった。その子は桃が大好きなのにレッドのぬいぐるみが宝物だというのはおかしい。普通フィランスピンクである桃が好きになったのならレッドのぬいぐるみはゴミ同然になるのでその場で捨ててしまう。
 つまりあの少年は桃の可愛さを見ておきながら改心していない?

「・・・やっぱりおかしい」
 このことに怒るのは当たり前だと思う。それで先輩は人気とかどうでもいい、ヒーローはそういうものって言っていた。少年の行為を気にする必要はない、という意味?

「・・・!」

 もしかして、嫉妬?

「・・・桃?」
 空先輩こっちを見てる、なんだか不安そう。もう火事はひと段落ついたし不安になる要素なんてないはずなのに。あぁ、桃わかっちゃった。先輩、あの男の子に嫉妬してるんだ。桃があの男の子がフィランスレッドを好きなことに腹を立てているから、嫉妬してあんなこと言ったんだね。そっか、ヒーローはそういうものっていうのはヒーローと一般人にある大きな壁があるのは仕方がないからそんな奴らを見るなってこと。人気とかどうでもいいっていうのは、俺にとっての一番は桃だから他の有象無象からの人気なんて気にしないでっていうことだ!
 だから不安そうなんだ、彼氏でもないのに嫉妬して、むしろただの少年に嫉妬するなんてもう告白しているようなものだから。桃の返事が怖いんだ!

「ふふっ、先輩ってば可愛いです」
「え?」
「先輩の言いたいこと、全部わかりましたよ」
 そっか、先輩はもうとっくに桃のことが大好きだったんだ。仕方ないよね、桃は誰よりも可愛いんだから先輩が簡単にメロメロになっちゃうのも無理ないよ。ごめんね、茜さん。先輩の心はもう桃のものだし、桃は可愛さに油断なんてしないからこれからもっともっと先輩を愛してあげて、先輩の愛を独占するから。
「あの、お願いがあるんです」
「な、なに?」

「桃に会った時はたくさん、可愛いって言ってください」
 あぁ、可哀そうな茜さん。こんなに簡単に先輩を手に入れてしまって。可愛いって、ずるいですね。
「そしたら、もうこんなことしません」
 これからは先輩の恋人なんだから、あんまり嫉妬させないようにしないと。
「いいですか?空先輩」
 先輩は喜んで頷いてくれた。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2024.8.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

如月さんは なびかない。~クラスで一番の美少女に、何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~

メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」 俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。 学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。 その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。 少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。 ……どうやら彼は鈍感なようです。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 【作者より】 九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。 また、R15は保険です。 毎朝20時投稿! 【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】

処理中です...