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博愛主義!ヤンデレンジャー!!
イエローは妹、グリーンは家族?(1)
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「残りはグリーンとイエローですよね。どんな方なんでしょう」
「ふむ。どちらもその・・・いい子ではあるよ」
含みのある言い方が気になる。といったところで目的地に着いた。
廊下の途中にあるその部屋は『イエロー』と書かれている。
「フィランスイエローは身寄りが無くてね、この基地内に住んでいる」
「・・・へぇ」
何故だろう、博士の様子が緊張しているような期待しているような、ソワソワしている気がする。受験の結果発表か告白の返事を待つ時みたいな不安と期待が入り雑じりつつもポジティブな想像を強く持っているような、変な表情。
「イエローは既に部屋の中にいる。ノックしたまえ」
「わ、わかりました」
博士の表情の真意は読めないまま、俺は言われた通りに扉をノックした。
―――コンコン―――
「はーい」
中から聞こえる軽快で幼い声。ガチャリ、と扉が開くとそこには黄味がかったこげ茶色のミディアムヘアを外側に元気よく跳ねさせた小さな女の子。
「あっ!ブルーの人だ!」
見たところ中学生・・・下手したら小学生だろうか。基地に住んでいるというからもう少し大人を想像していたが何か訳ありの子供なのかもしれない。
「えっと、今日からフィランスブルーになりました。浅葱空です」
まんまるいブラウンの目で俺の顔をじっと見つめる。見定めているのか知らないが、彼女が左右にゆらゆら揺れるたびに犬耳のように跳ねたサイドヘアがぴょこぴょこと動く。
「あさぎ、そら・・・」
「うん」
「ねぇ、兄弟はいる?」
「い、いないよ」
「・・・僕、もうすぐ誕生日なんだけど何か頂戴?」
「えっ」
突然の催促に驚く。どうしよう、何も持っていないな。相手は子供とは言え女子、下手なことをしたら簡単に嫌われてしまうかもしれない。俺がイケメンだったら壁ドンか頭ポンポンでもしてやれたのに・・・いや、それはたとえイケメンでも初対面の男にされたら不愉快か。
「えーっと」
自分の鞄に入っているものを改めて思い出すが、残念ながら彼女が喜びそうなものは無い。
「じゃあ、パフェでも食べに行くとか・・・どう?」
無い頭でなんとか思い浮かんだ提案を出してみる。これなら気持ち悪くないよな、一応同僚になるわけだし一緒に食事くらい普通だろう。
「・・・」
誕生日ならケーキのほうが良かったか?
「ねぇ、それ本当?」
彼女は純粋な瞳で俺をとらえる。それが期待に満ちたものだということは俺にでもわかった。良かった、気に入ってくれたみたいだ。
「もちろん、君さえよければ」
「やった!ありがとうお兄ちゃん!」
「お兄ちゃん!?」
がばっ、と唐突に抱き着かれてよろめく。俺の貧弱な両腕でなんとか小さい身体を支えてやると、少女はにこにこと嬉しそうにしている。
「お兄ちゃんはお兄ちゃんだよ?僕は朽葉向日葵(くちば ひまわり)、よろしくね!空お兄ちゃん!」
なんだ、よくわからんが可愛いじゃないか。これが妹キャラというやつか。元気いっぱいで天真爛漫というか、パフェ一つでこんなに大喜びするだなんて、何て健気でいい子なんだ。
「よ、よろしく向日葵」
お兄ちゃん呼びはごっこ遊びのようなものだろう、別に断る理由もないし親しい年上のことをお兄ちゃんと呼ぶことだってある。何よりうれしそうな向日葵の笑顔を見ていると野暮なことは言いたくないので特に気にしないで受け入れることにした。
「向日葵はフィランスイエローかな」
戦隊ヒーローの元気担当と言えばイエロー。髪にも山吹色のインナーカラーが入っているし、そんな感じがする。
「そうだよ!よくわかったね!さすがお兄ちゃん」
当たった。些細な事を褒められてしまった。
「今年から中学生で、大体一年くらいヒーローをやってるよ」
小学生の頃からヒーロー活動していたということか。
「でも、僕あんまり強くないんだ・・・」
ヒーローの強さは愛情の大きさだという。身寄りが無い子供が一人でこんな場所に暮らしている時点で、向日葵はいったい何に対する愛情をそんなに強く持っているんだろう。
「あんまり強くないけど、これからはどんどん強くなれる気がするよ!」
これから?どいうことだろう。向上心があるというだけの話か。
「・・・だって、お兄ちゃんを見つけられたから」
「ん?」
話が見えてこない。
「お兄ちゃんが僕のお兄ちゃんになってくれるなら、僕はたくさん頑張れるから・・・これからずっとずっと、僕のお兄ちゃんでいてね」
「えーっと、向日葵?」
「あっ!ごめんね、まだ挨拶の途中だよね?引き止めちゃってごめん」
「ああ、パフェは今度誘うから待っててくれ」
「うん!僕楽しみに待ってる!」
なんだか一瞬だけ不穏な感じがしたが、気のせいか?
「じゃあ、また今度」
少し違和感を残しつつ俺はフィランスイエローの部屋をあとにした。
「順調に好かれているみたいだね、空君」
部屋から出ると外で待っていた竜胆博士がニヤニヤしていた。
「はぁ、嫌われてはいないかと」
「向日葵は何か言っていたか?」
「もうすぐ誕生日だっていうことと、俺の事お兄ちゃんって呼びたいって言っていました」
俺の返事を聞くと博士はますます嬉しそうにする。
「やはり私の考えた通りだ、素晴らしい才能だ空君」
「え?ありがとうございます?」
何もしていない気がするけど。
「ふむ。どちらもその・・・いい子ではあるよ」
含みのある言い方が気になる。といったところで目的地に着いた。
廊下の途中にあるその部屋は『イエロー』と書かれている。
「フィランスイエローは身寄りが無くてね、この基地内に住んでいる」
「・・・へぇ」
何故だろう、博士の様子が緊張しているような期待しているような、ソワソワしている気がする。受験の結果発表か告白の返事を待つ時みたいな不安と期待が入り雑じりつつもポジティブな想像を強く持っているような、変な表情。
「イエローは既に部屋の中にいる。ノックしたまえ」
「わ、わかりました」
博士の表情の真意は読めないまま、俺は言われた通りに扉をノックした。
―――コンコン―――
「はーい」
中から聞こえる軽快で幼い声。ガチャリ、と扉が開くとそこには黄味がかったこげ茶色のミディアムヘアを外側に元気よく跳ねさせた小さな女の子。
「あっ!ブルーの人だ!」
見たところ中学生・・・下手したら小学生だろうか。基地に住んでいるというからもう少し大人を想像していたが何か訳ありの子供なのかもしれない。
「えっと、今日からフィランスブルーになりました。浅葱空です」
まんまるいブラウンの目で俺の顔をじっと見つめる。見定めているのか知らないが、彼女が左右にゆらゆら揺れるたびに犬耳のように跳ねたサイドヘアがぴょこぴょこと動く。
「あさぎ、そら・・・」
「うん」
「ねぇ、兄弟はいる?」
「い、いないよ」
「・・・僕、もうすぐ誕生日なんだけど何か頂戴?」
「えっ」
突然の催促に驚く。どうしよう、何も持っていないな。相手は子供とは言え女子、下手なことをしたら簡単に嫌われてしまうかもしれない。俺がイケメンだったら壁ドンか頭ポンポンでもしてやれたのに・・・いや、それはたとえイケメンでも初対面の男にされたら不愉快か。
「えーっと」
自分の鞄に入っているものを改めて思い出すが、残念ながら彼女が喜びそうなものは無い。
「じゃあ、パフェでも食べに行くとか・・・どう?」
無い頭でなんとか思い浮かんだ提案を出してみる。これなら気持ち悪くないよな、一応同僚になるわけだし一緒に食事くらい普通だろう。
「・・・」
誕生日ならケーキのほうが良かったか?
「ねぇ、それ本当?」
彼女は純粋な瞳で俺をとらえる。それが期待に満ちたものだということは俺にでもわかった。良かった、気に入ってくれたみたいだ。
「もちろん、君さえよければ」
「やった!ありがとうお兄ちゃん!」
「お兄ちゃん!?」
がばっ、と唐突に抱き着かれてよろめく。俺の貧弱な両腕でなんとか小さい身体を支えてやると、少女はにこにこと嬉しそうにしている。
「お兄ちゃんはお兄ちゃんだよ?僕は朽葉向日葵(くちば ひまわり)、よろしくね!空お兄ちゃん!」
なんだ、よくわからんが可愛いじゃないか。これが妹キャラというやつか。元気いっぱいで天真爛漫というか、パフェ一つでこんなに大喜びするだなんて、何て健気でいい子なんだ。
「よ、よろしく向日葵」
お兄ちゃん呼びはごっこ遊びのようなものだろう、別に断る理由もないし親しい年上のことをお兄ちゃんと呼ぶことだってある。何よりうれしそうな向日葵の笑顔を見ていると野暮なことは言いたくないので特に気にしないで受け入れることにした。
「向日葵はフィランスイエローかな」
戦隊ヒーローの元気担当と言えばイエロー。髪にも山吹色のインナーカラーが入っているし、そんな感じがする。
「そうだよ!よくわかったね!さすがお兄ちゃん」
当たった。些細な事を褒められてしまった。
「今年から中学生で、大体一年くらいヒーローをやってるよ」
小学生の頃からヒーロー活動していたということか。
「でも、僕あんまり強くないんだ・・・」
ヒーローの強さは愛情の大きさだという。身寄りが無い子供が一人でこんな場所に暮らしている時点で、向日葵はいったい何に対する愛情をそんなに強く持っているんだろう。
「あんまり強くないけど、これからはどんどん強くなれる気がするよ!」
これから?どいうことだろう。向上心があるというだけの話か。
「・・・だって、お兄ちゃんを見つけられたから」
「ん?」
話が見えてこない。
「お兄ちゃんが僕のお兄ちゃんになってくれるなら、僕はたくさん頑張れるから・・・これからずっとずっと、僕のお兄ちゃんでいてね」
「えーっと、向日葵?」
「あっ!ごめんね、まだ挨拶の途中だよね?引き止めちゃってごめん」
「ああ、パフェは今度誘うから待っててくれ」
「うん!僕楽しみに待ってる!」
なんだか一瞬だけ不穏な感じがしたが、気のせいか?
「じゃあ、また今度」
少し違和感を残しつつ俺はフィランスイエローの部屋をあとにした。
「順調に好かれているみたいだね、空君」
部屋から出ると外で待っていた竜胆博士がニヤニヤしていた。
「はぁ、嫌われてはいないかと」
「向日葵は何か言っていたか?」
「もうすぐ誕生日だっていうことと、俺の事お兄ちゃんって呼びたいって言っていました」
俺の返事を聞くと博士はますます嬉しそうにする。
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「え?ありがとうございます?」
何もしていない気がするけど。
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