俺以外美少女の戦隊ヒーローに入隊したけどヒロインもれなくヤンデレンジャー

寄紡チタン

文字の大きさ
上 下
6 / 27
博愛主義!ヤンデレンジャー!!

イエローは妹、グリーンは家族?(1)

しおりを挟む
「残りはグリーンとイエローですよね。どんな方なんでしょう」
「ふむ。どちらもその・・・いい子ではあるよ」
 含みのある言い方が気になる。といったところで目的地に着いた。
 廊下の途中にあるその部屋は『イエロー』と書かれている。
「フィランスイエローは身寄りが無くてね、この基地内に住んでいる」
「・・・へぇ」
 何故だろう、博士の様子が緊張しているような期待しているような、ソワソワしている気がする。受験の結果発表か告白の返事を待つ時みたいな不安と期待が入り雑じりつつもポジティブな想像を強く持っているような、変な表情。
「イエローは既に部屋の中にいる。ノックしたまえ」
「わ、わかりました」
 博士の表情の真意は読めないまま、俺は言われた通りに扉をノックした。

 ―――コンコン―――
「はーい」
 中から聞こえる軽快で幼い声。ガチャリ、と扉が開くとそこには黄味がかったこげ茶色のミディアムヘアを外側に元気よく跳ねさせた小さな女の子。
「あっ!ブルーの人だ!」
 見たところ中学生・・・下手したら小学生だろうか。基地に住んでいるというからもう少し大人を想像していたが何か訳ありの子供なのかもしれない。
「えっと、今日からフィランスブルーになりました。浅葱空です」
 まんまるいブラウンの目で俺の顔をじっと見つめる。見定めているのか知らないが、彼女が左右にゆらゆら揺れるたびに犬耳のように跳ねたサイドヘアがぴょこぴょこと動く。
「あさぎ、そら・・・」
「うん」
「ねぇ、兄弟はいる?」
「い、いないよ」
「・・・僕、もうすぐ誕生日なんだけど何か頂戴?」
「えっ」
 突然の催促に驚く。どうしよう、何も持っていないな。相手は子供とは言え女子、下手なことをしたら簡単に嫌われてしまうかもしれない。俺がイケメンだったら壁ドンか頭ポンポンでもしてやれたのに・・・いや、それはたとえイケメンでも初対面の男にされたら不愉快か。
「えーっと」
 自分の鞄に入っているものを改めて思い出すが、残念ながら彼女が喜びそうなものは無い。
「じゃあ、パフェでも食べに行くとか・・・どう?」
 無い頭でなんとか思い浮かんだ提案を出してみる。これなら気持ち悪くないよな、一応同僚になるわけだし一緒に食事くらい普通だろう。
「・・・」
 誕生日ならケーキのほうが良かったか?
「ねぇ、それ本当?」
 彼女は純粋な瞳で俺をとらえる。それが期待に満ちたものだということは俺にでもわかった。良かった、気に入ってくれたみたいだ。
「もちろん、君さえよければ」
「やった!ありがとうお兄ちゃん!」
「お兄ちゃん!?」
 がばっ、と唐突に抱き着かれてよろめく。俺の貧弱な両腕でなんとか小さい身体を支えてやると、少女はにこにこと嬉しそうにしている。
「お兄ちゃんはお兄ちゃんだよ?僕は朽葉向日葵(くちば ひまわり)、よろしくね!空お兄ちゃん!」
 なんだ、よくわからんが可愛いじゃないか。これが妹キャラというやつか。元気いっぱいで天真爛漫というか、パフェ一つでこんなに大喜びするだなんて、何て健気でいい子なんだ。
「よ、よろしく向日葵」
 お兄ちゃん呼びはごっこ遊びのようなものだろう、別に断る理由もないし親しい年上のことをお兄ちゃんと呼ぶことだってある。何よりうれしそうな向日葵の笑顔を見ていると野暮なことは言いたくないので特に気にしないで受け入れることにした。
「向日葵はフィランスイエローかな」
 戦隊ヒーローの元気担当と言えばイエロー。髪にも山吹色のインナーカラーが入っているし、そんな感じがする。
「そうだよ!よくわかったね!さすがお兄ちゃん」
 当たった。些細な事を褒められてしまった。
「今年から中学生で、大体一年くらいヒーローをやってるよ」
 小学生の頃からヒーロー活動していたということか。
「でも、僕あんまり強くないんだ・・・」
 ヒーローの強さは愛情の大きさだという。身寄りが無い子供が一人でこんな場所に暮らしている時点で、向日葵はいったい何に対する愛情をそんなに強く持っているんだろう。
「あんまり強くないけど、これからはどんどん強くなれる気がするよ!」
 これから?どいうことだろう。向上心があるというだけの話か。
「・・・だって、お兄ちゃんを見つけられたから」
「ん?」
 話が見えてこない。
「お兄ちゃんが僕のお兄ちゃんになってくれるなら、僕はたくさん頑張れるから・・・これからずっとずっと、僕のお兄ちゃんでいてね」
「えーっと、向日葵?」
「あっ!ごめんね、まだ挨拶の途中だよね?引き止めちゃってごめん」
「ああ、パフェは今度誘うから待っててくれ」
「うん!僕楽しみに待ってる!」
 なんだか一瞬だけ不穏な感じがしたが、気のせいか?
「じゃあ、また今度」
 少し違和感を残しつつ俺はフィランスイエローの部屋をあとにした。
「順調に好かれているみたいだね、空君」
 部屋から出ると外で待っていた竜胆博士がニヤニヤしていた。
「はぁ、嫌われてはいないかと」
「向日葵は何か言っていたか?」
「もうすぐ誕生日だっていうことと、俺の事お兄ちゃんって呼びたいって言っていました」
 俺の返事を聞くと博士はますます嬉しそうにする。
「やはり私の考えた通りだ、素晴らしい才能だ空君」
「え?ありがとうございます?」
 何もしていない気がするけど。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2024.8.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

如月さんは なびかない。~クラスで一番の美少女に、何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~

メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」 俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。 学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。 その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。 少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。 ……どうやら彼は鈍感なようです。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 【作者より】 九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。 また、R15は保険です。 毎朝20時投稿! 【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】

処理中です...