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夏の陽射しとワンピース
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水曜日の朝、俺と南那は一緒にホテルを出発し、俺はスーツで会社へ向かう。
「秋馬のスーツ姿、久しぶりに見た。似合ってる」
「スーツなんていいもんじゃないよ。蒸し暑いし」
そんな愚痴をこぼしながら会社の最寄り駅までくっついてきた南那は、近くでカフェを見つけて入ると言っていた。
くそつまらない会議をなんとか終え、会社を出る。
南那に終わったことをLINEで告げると、
『お疲れ様! 今から出るね!』
という一言と、『NANA』と描かれたスタンプが送られてきた。
少し前に流行った漫画を思い出す字画だ。
南那は俺の会社の場所も知っている。
『歩道橋の上通って向かうね!』
というLINEが続けてきたので、俺も歩道橋の階段を昇る。
太陽が一番高い。秋に近いといってもまだまだ気候は残暑厳しい。
スーツの俺にはこの階段が結構堪えた。
昇りきったところで南那の姿を見つけた。
向こうの端から、南那も俺に気づき、手を振りながらこっちへ向かって歩いてくる。
その姿はまるでドラマのワンシーンを見ているようだった。
俺から見ると、南那はその辺のアイドルよりも可愛い。
夏の陽射しとワンピースって、どうしてこんなに厨二病男子をムラムラさせるんだろう。
南那と過ごす1週間なんて、楽し過ぎて幸せすぎて2日くらいにしか感じられない。
あっという間に帰る日になってしまった。
「そんな顔しないでよ! また会えるんだし」
こういう時の女は、気丈に振る舞うことが得意なのかそういう生き物なのか、本当に強いなと思う。
「そうなんだけどさ」
南那の首元には、俺が誕生日プレゼントとして買ったネックレスが光っている。
南那がリクエストした『アクセサリー』というお題に沿って、俺が選んだものだ。
そんなに高いものではないが、ガラス製なのでよく光を反射させてキラキラと光った。
「それ、似合ってる」
「ありがと♪ すごく可愛いよね、毎日つける!」
南那はご機嫌そうにネックレスに触れた。
「たまには秋馬も遊びに来てね」
「今回有休使いまくったからなー……でも努力する」
「待ってる」
俺は飛行機の時間が迫る南那を力いっぱい抱きしめた。
「愛してるよ、南那」
「私も」
お互いにゆっくりと身体を離し、俺は南那にキスをした。
「またね!」
南那はとびきり可愛い笑顔を俺に向け、片手を上げて手荷物検査ゲートに吸い込まれていく。
南那の姿を見るのがこれで最後になるなんて、思いもしなかった。
──思わないだろ普通。
「秋馬のスーツ姿、久しぶりに見た。似合ってる」
「スーツなんていいもんじゃないよ。蒸し暑いし」
そんな愚痴をこぼしながら会社の最寄り駅までくっついてきた南那は、近くでカフェを見つけて入ると言っていた。
くそつまらない会議をなんとか終え、会社を出る。
南那に終わったことをLINEで告げると、
『お疲れ様! 今から出るね!』
という一言と、『NANA』と描かれたスタンプが送られてきた。
少し前に流行った漫画を思い出す字画だ。
南那は俺の会社の場所も知っている。
『歩道橋の上通って向かうね!』
というLINEが続けてきたので、俺も歩道橋の階段を昇る。
太陽が一番高い。秋に近いといってもまだまだ気候は残暑厳しい。
スーツの俺にはこの階段が結構堪えた。
昇りきったところで南那の姿を見つけた。
向こうの端から、南那も俺に気づき、手を振りながらこっちへ向かって歩いてくる。
その姿はまるでドラマのワンシーンを見ているようだった。
俺から見ると、南那はその辺のアイドルよりも可愛い。
夏の陽射しとワンピースって、どうしてこんなに厨二病男子をムラムラさせるんだろう。
南那と過ごす1週間なんて、楽し過ぎて幸せすぎて2日くらいにしか感じられない。
あっという間に帰る日になってしまった。
「そんな顔しないでよ! また会えるんだし」
こういう時の女は、気丈に振る舞うことが得意なのかそういう生き物なのか、本当に強いなと思う。
「そうなんだけどさ」
南那の首元には、俺が誕生日プレゼントとして買ったネックレスが光っている。
南那がリクエストした『アクセサリー』というお題に沿って、俺が選んだものだ。
そんなに高いものではないが、ガラス製なのでよく光を反射させてキラキラと光った。
「それ、似合ってる」
「ありがと♪ すごく可愛いよね、毎日つける!」
南那はご機嫌そうにネックレスに触れた。
「たまには秋馬も遊びに来てね」
「今回有休使いまくったからなー……でも努力する」
「待ってる」
俺は飛行機の時間が迫る南那を力いっぱい抱きしめた。
「愛してるよ、南那」
「私も」
お互いにゆっくりと身体を離し、俺は南那にキスをした。
「またね!」
南那はとびきり可愛い笑顔を俺に向け、片手を上げて手荷物検査ゲートに吸い込まれていく。
南那の姿を見るのがこれで最後になるなんて、思いもしなかった。
──思わないだろ普通。
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