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恋人と彼女の噂
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しばらくして目の前に現れたのは、透悟の水色のカクテルと、真亜子の黒いカクテルだった。
「こちら、ブルーマルガリータと……こちら、ブラックシャドウです」
「すごいお洒落。真亜子ちゃん、黒髪が綺麗だからさ、黒いカクテル飲んでみてほしかったんだ」
真亜子の前に出された黒いカクテルからは、僅かにコーヒーのいい香りが漂っていた。
「いただきます。……美味し……!」
「よかった! それ持ってる姿もさまになってるよ。モデルみたい」
真亜子にとって、そんな夢のような褒め言葉はなかった。
憧れの先輩に、モデルみたいだなんて。
「真亜子ちゃん」
「はい」
「……付き合って……もらえないかな」
「……え?」
これが、真亜子と透悟の始まりだった。
*
同じ部署での交際が公になると、異動や転勤になることがある。
2人はそれを恐れ、付き合っていることは内緒にしていた。
けれど、会社を出れば恋人同士。休日にはデートもしたし、お互いの家に行き来することもあった。
そんな幸せな日々を送って10ヶ月ほど経ったある日、真亜子は信じられない噂を耳にする。
先輩で隣の席に座っている浅川由美が、突然真亜子に耳打ちしてきたのだ。
「まぁちゃん知ってる? 飯塚君と莉夢っち、付き合ってるらしいよ」
「え?」
『莉夢っち』というのは、以前真亜子が透悟とご飯を食べている時に、『女優さんに似てますよね』とトラップを仕掛けてみたショートカットがよく似合う可愛い新人だった。
「えー? そんな噂初耳ですよ?」
「それがさ、昨日あの2人がホテルから出てくるところを、早希ちゃんが見たって言っててさー」
早希は由美と同期で、真亜子にとっては先輩にあたる優しい先輩だ。
早希がわざわざ嘘の噂を立てる意味もわからないし、そんなに性格の悪い先輩ではない。
「へ……へぇ! まあまあお似合いじゃないですかっ?」
「私はまぁちゃんと飯塚君が付き合ってると思ってたけど」
「こちら、ブルーマルガリータと……こちら、ブラックシャドウです」
「すごいお洒落。真亜子ちゃん、黒髪が綺麗だからさ、黒いカクテル飲んでみてほしかったんだ」
真亜子の前に出された黒いカクテルからは、僅かにコーヒーのいい香りが漂っていた。
「いただきます。……美味し……!」
「よかった! それ持ってる姿もさまになってるよ。モデルみたい」
真亜子にとって、そんな夢のような褒め言葉はなかった。
憧れの先輩に、モデルみたいだなんて。
「真亜子ちゃん」
「はい」
「……付き合って……もらえないかな」
「……え?」
これが、真亜子と透悟の始まりだった。
*
同じ部署での交際が公になると、異動や転勤になることがある。
2人はそれを恐れ、付き合っていることは内緒にしていた。
けれど、会社を出れば恋人同士。休日にはデートもしたし、お互いの家に行き来することもあった。
そんな幸せな日々を送って10ヶ月ほど経ったある日、真亜子は信じられない噂を耳にする。
先輩で隣の席に座っている浅川由美が、突然真亜子に耳打ちしてきたのだ。
「まぁちゃん知ってる? 飯塚君と莉夢っち、付き合ってるらしいよ」
「え?」
『莉夢っち』というのは、以前真亜子が透悟とご飯を食べている時に、『女優さんに似てますよね』とトラップを仕掛けてみたショートカットがよく似合う可愛い新人だった。
「えー? そんな噂初耳ですよ?」
「それがさ、昨日あの2人がホテルから出てくるところを、早希ちゃんが見たって言っててさー」
早希は由美と同期で、真亜子にとっては先輩にあたる優しい先輩だ。
早希がわざわざ嘘の噂を立てる意味もわからないし、そんなに性格の悪い先輩ではない。
「へ……へぇ! まあまあお似合いじゃないですかっ?」
「私はまぁちゃんと飯塚君が付き合ってると思ってたけど」
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