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◆ 第一章 黒の姫宮
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叔父上の指示で、私を抱いていた青年二人は退室した。残されたのは、私と叔父上と、そして清玖。あまりにも重たい沈黙に窒息しそうになる。顔を上げて清玖を見ることが出来なかった。
「吉乃。見知らぬ者に抱かれても、快感を得られただろう? 二人の清玖に抱かれていると、そう思っていたんだろう? ……愛する人を見つけろという意味が、これで分かったはずだ」
叔父上の言葉の意味はよく分かった。愛する者をつくれば、見知らぬ者に抱かれていても清玖だと思える。先ほどだって、清玖が二人いるはずがないのに、私は本気で二人の清玖に抱かれていると思っていた。頭がおかしくなっていたのだ。私を抱く者のことを、私は全て清玖であると誤認するのだろう。
「……どうして」
纏う黒の長衣は、白で汚されていた。随分と着崩され、太腿やら胸元を晒してはいるが、まだ裸にはなっていない。彼らは私の衣を脱がさないまま抱いていた。
「……どうして、こんな醜い姿を清玖に見せたんですか」
清玖であると勘違いして抱かれろという叔父上の意図は分かった。だが、そんな浅ましい姿を清玖に見せる必要があったのだろうか。私は今、一番見られたくない姿を清玖に見られていたのだ。
「なにも……、なにも、清玖に見せなくても良かったではありませんか! せめて……っ、清玖にだけは……」
「この男にも覚悟を持たせなければならないからだ」
声を荒げる。こんなにも怒りを感じたことは、今までになかった。激情のままに叫ぶ私をいなし、叔父上の目は清玖に向く。覚悟とは、一体何なのか。
「おい、清玖。本当にお前は、頭でちゃんと理解していたか? 吉乃はこういうことを役目として与えられ、それをこなしていかなければならない。そんな男を愛するということが、どれほどの痛みを伴うことか分かって、吉乃に惚れたのか?」
「……それは」
清玖が迷いの色を見せた。それが私を悲しませる。けれど、誰がこんな覚悟を抱けるというのだ。愛した人は、男に嬲られ続ける。男娼の想い人に誰がなりたいというのだ。
「こんな覚悟、出来る訳がないじゃないですかっ! それを無理やり見せつけるなんて……っ!」
声が詰まる。喉がひくついて言葉が上手く出なかった。清玖が私に歩み寄り、寝台の上に上がってきた。私のものや、彼らのもので汚れた寝台の上に。
「吉乃、大丈夫。確かに俺の覚悟は甘かった。……だが今、強くなった」
「清玖……、私はここまで酷な目に遭うとは思っていなかったんだ……少なくとも、こんな目に清玖を遭わせるなんて、思いもしなかった……。本当に……すまない、巻き込んでしまって……すまない、清玖」
溢れ出る涙は止められず、泣きじゃくる私を清玖が抱きしめた。お互いに、随分とみっともない恰好をしているが、今は抱きしめあうことを止められない。
この温もりだ。これじゃないか。どうして私は間違えてしまったんだ。彼らの熱とは全然違う。満たされるようなこの感覚を、どうして間違えたんだ。
「私は吉乃が羨ましい」
こんな声は、つい先ほども聞いた。叔父上の、寂しげな声。私を妬む、悲しい声。叔父上も、父が陛下でなくなったら、共に離宮に行き、父の夫君になりたかったのかもしれない。
けれど、それは叶わない願いだった。父が陛下でなくなるのは、その命が終わる時だけ。叔父上が、姫宮の役目を終えるのは、父が死ぬときだけなのだ。
ただ一人、恋焦がれて求める相手の死を前にして、叔父上はどれほどの絶望を抱いているのだろうか。推し量ることもできない。それほどに、叔父上が抱えるものの闇は深かった。
「……あとは好きにするといい。私は出ていく。……吉乃、また明日の晩ここへ来い」
最後にそんな言葉だけを残して、叔父上は去って行った。また明日、ということは指導は一度きりではないらしい。気が重くなる。二人きりになって、私は少し清玖から距離を置いた。そして、そこで自分の後孔に手を伸ばす。だが、なかなか届かない。
「どうしたんだ?」
「……中の、気持ち悪くて」
「ああ、そういうことか。こっちにおいで。俺がやるよ」
「でも……」
「遠慮しなくていいから。そんな姿をしてる吉乃を見る方が、目に毒だよ」
そして自分の体勢を見た。長衣の裾から、清玖には私の局部が丸見えだった。そんな状態で必死に後をいじろうとする私は、酷く滑稽だっただろう。恥ずかしくなって、清玖に寄り、託す。
ぐぐ、と力を込められ挿入感で腰がざわついた。清玖の指が私の中を優しく掻いて、無遠慮に出されたものを出していく。彼らが悪いわけではない。彼らとて、被害者だ。それでも怒りを向けてしまう。
「随分と濃いな。さっきの彼は若かったからかな。……気持ち良かった?」
「清玖だと思っていたから、体が反応してしまったんだ」
「でも、腰を振ってた」
「清玖じゃないと分かっていたら、あんなことはしなかった!」
そんなこといちいち言葉にしなくてもいいじゃないか。そんな拗ねた気持ちで吠えてしまった。ふい、と顔を逸らすと、清玖の手によって引き戻される。
「分かってる。……すまない、惨めな嫉妬だ」
「……お願いだから信じて、清玖。私の一番は清玖なんだ」
「ありがとう、吉乃」
そうは言ったけれど、清玖のおもては暗いままだった。どうすればいいのだろう。私の体に清玖の名前を書いて欲しいくらいだった。私を所有するのは清玖なのだと、私を抱く男たちに伝えたい。せめて、清玖に私がどれほど清玖を想っているかを伝えたかった。頭に妙案が浮かぶ。
「どれだけ私が清玖を愛してるか、見ていて」
清玖を寝台の上に座らせ、私はその上に乗りあげる。そして、まだ硬いままの清玖を掴み、己の後孔に宛がって、そのまま腰を下ろす。
叔父上が言った通り、姫宮となるこの体は情交に特化しているのだろう。どれだけでも咥えこめた。ゆっくりと腰を上げ、そして下す。自らの足で自分の体を支え、清玖の腹に手をついて、上げ下げを自力で行った。
「……っん、……清玖、……清玖、私は……清玖だけが……っ、……あぁっ!」
ひときわ大きな声を出してしまった。強い感覚が体を貫いて、動きが止まりかける。けれど、気持ち良くて何度もそこに当たるよう腰を動かした。快感が強すぎて、何も考えられなくなる。
「吉乃、そこが気持ち良いのか」
「いい……っ、きもち、いぃ、ぁっ……、……んっ」
私は清玖の上で跳ね続けた。腰が止まらない。体が壊れてしまったかのように、同じ動きを繰り返す。清玖が私の腰を支えようとしたが、それを拒んだ。私は、私だけの力で清玖を気持ちよくさせたいのだ。
「あっ、あ……っ、しんっ、んっ……っ、……っ!」
強い快楽の波が、全身を支配した。大きな声を上げて泣き叫ぶ。私は今までにないほどの絶頂へ至った。だが、私の先端からは何も出ていない。今まで強い快感を得ると、先端から精が飛び出ていたというのに。
「凄い……出てないのに、達けたんだな」
清玖が言う言葉の意味は良く分からなかったけれど、すごい、と褒めてもらえて嬉しかった。だから、私は微笑む。ただそれだけなのに、私の中の清玖は一層大きくなった。
そもそも今は、私が達してしまっただけで、清玖はまだだったのだ。後孔は目一杯というほどに今開いている。それほどに清玖のものが大きいのだ。私で大きくしてくれるのが、とても嬉しい。少しだけ、叔父上の仕打ちから心が立ち直ってきている。清玖がいるだけで、こんなにも心が癒された。
私はそのまま、腰を上下させて清玖を絶頂へと導く。何かに耐えるように顔を歪める清玖のおもてを眺めていた。切羽詰まった顔の清玖を見るのが、私は好きだった。そして、腰を動かし続けた私の中で、清玖が果てる。腹の中が熱くなった。
「私が……どれだけ清玖のことを想っているか、伝わった?」
繋がったままで、私は清玖の胸に縋りついていた。そしてうっとりと目を閉じる私の頭を清玖が撫でる。優しい手だ。ずっと、この手にだけ触れていて欲しい。
「凄く伝わった。嬉しいよ」
「良かった」
「……今度は俺が、どれだけ吉乃を愛してるか伝えてもいい?」
清玖が私の体を抱きしめる。そして、そのまま私を寝台に押し倒した。繋がったままの状態だ。私は足を大きく開いて、あられもない状態になっている。清玖がどのようにして、私に愛を伝えてくれるかは一目瞭然だった。
「いいよ」
私の中の清玖は、まだ硬さを保っていた。一体何度果てられるのだろうとぼんやり考えていた時に、清玖が激しく腰を振り出した。私のものはもう元気もなく、清玖が揺らすたびに同調してぶらぶらと揺れた。
悲鳴を出し過ぎて喉が痛い。よくよく考えれば、今日私は何度貫かれているのだろう。三人と交わり、多くの精を受け入れて、幾度となく揺さぶられている。体が疲れ切っていた。それでも、清玖を受け入れることだけはやめられなかった。
「しん……っ、し、ん、あ……っ、んん……あっ、あっ……」
揺さぶられ、清玖と私の体がぶつかり、音が鳴る。その音にも、その衝撃にも反応してしまう。奥を貫かれ、気持ちの良い箇所に触れる度、声が漏れた。清玖の手が私の腹部を撫でたり、胸の先端を弄ったりと、私に快楽をもたらしてくれる。
「しんっ、胸、もっとちゃんと……して……、……っ」
私は清玖に胸を触られるのが好きだった。特に、舐められたり甘噛みされると堪らなくなる。私は清玖にそれを強請った。直後、繋がった状態で私の体は抱き起こされ、あぐらをかいた清玖の太股の上に乗せられる。
「吉乃の胸、凄く立ってる……舐めてもいい?」
「いいっ、……から、早く……っ」
わざわざそんなことを聞かなくてもいいのに、清玖はわざと焦らすために聞くのだ。私は胸を突き出して、立ち上がっている胸の先端を清玖に突き付ける。
「いじわる、しないで」
「すまない。吉乃が可愛いからついつい、いじめたくなる」
そう言いながら、清玖は私の乳首に舌を這わせた。堪らない気持になる。もう私の中心は立ち上がっていないのに、だらだらと透明の液が溢れ出して、それが止まらなかった。
体を揺らし、私の奥を貫きながら私の胸を舌で撫で、手で弄る。器用な清玖に、私は翻弄され続けた。受け止めきれない快感をどうすることも出来ず、私は清玖の頭を抱きしめるに終始した。
今まで、私は敢えて考えないようにしていた。でも、己自身に思い知らされている。私は、性交が好きなのだ。入れられるのが好きで、淫らで、犯されるのが好きなのだ。それは、叔父上の言葉を借りれば、天から姫宮に授けられた才だという。
「清玖……私は、抱かれるのが好きなんだ。誰に抱かれても、きっと、体は反応してしまう」
先ほどの叔父上の指導がまさにそれだ。私は、清玖だと思い込んだ相手に、あれだけ狂いよがった。二人も清玖が存在する訳がないのに、清玖二人に抱かれていると思い込んで、快楽の奴隷となっていた。
「……でも、心で欲しがるのは、清玖だけなんだ」
一度抱かれてしまうと、きっと私はもう何も分からなくなってしまうのだろう。朦朧とする意識で、ただただ気持ちよさだけを強請る淫売に成り下がる。だが、私自身が求めるのは清玖だけ。それは揺らがない。
「……私のこと、嫌わないで」
気付いた時には、瞳から涙が溢れていた。すかさずそれを清玖の指が拭ってくれる。そして、唇を彼の唇が塞いだ。舌先がお互いを舐め合い、上顎を撫で、歯列をなぞる。角度を変えて、息を奪い合うように口付けを交わし合う。
「嫌いになんてなれない」
私の口の端に、清玖が音を立てるように軽く口付けた。頬を撫でられる。清玖はそのままの流れで、私の耳に舌を差し入れた。水音が激しく鼓膜を震わせる。その音に反応して、体の奥に熱が生まれた。私の耳を甘噛みし、耳朶を優しく食む。そして、耳元でそっと囁いた。
「愛してる」
小さな声だった。私にだけ聞こえるような、そんな声。清玖は私を抱きしめ、そして体を少し持ち上げる。ずる、と清玖のものが抜けた。二人で寝台に倒れ込む。声を出して笑い合って、抱きしめ合う。
「時が来たら、俺を夫君にしてくれるんだろう?」
額を付き合わせ、近い距離で微笑み合う。私はゆっくりと頷いた。いつか、全てが許される時が来たら私は清玖を夫君にする。穏やかで、幸福な毎日。それを夢見て私は今を耐える。それしか術はないのだ。
いつか。
いつか、全てのしがらみから解放されたら、清玖と婚姻を結び、夫君になった彼と穏やかに離宮で日々を過ごすのだ。そんな、夢を見ていられる今がどれほど幸福であったかを、後に、私は知ることとなる。
「吉乃。見知らぬ者に抱かれても、快感を得られただろう? 二人の清玖に抱かれていると、そう思っていたんだろう? ……愛する人を見つけろという意味が、これで分かったはずだ」
叔父上の言葉の意味はよく分かった。愛する者をつくれば、見知らぬ者に抱かれていても清玖だと思える。先ほどだって、清玖が二人いるはずがないのに、私は本気で二人の清玖に抱かれていると思っていた。頭がおかしくなっていたのだ。私を抱く者のことを、私は全て清玖であると誤認するのだろう。
「……どうして」
纏う黒の長衣は、白で汚されていた。随分と着崩され、太腿やら胸元を晒してはいるが、まだ裸にはなっていない。彼らは私の衣を脱がさないまま抱いていた。
「……どうして、こんな醜い姿を清玖に見せたんですか」
清玖であると勘違いして抱かれろという叔父上の意図は分かった。だが、そんな浅ましい姿を清玖に見せる必要があったのだろうか。私は今、一番見られたくない姿を清玖に見られていたのだ。
「なにも……、なにも、清玖に見せなくても良かったではありませんか! せめて……っ、清玖にだけは……」
「この男にも覚悟を持たせなければならないからだ」
声を荒げる。こんなにも怒りを感じたことは、今までになかった。激情のままに叫ぶ私をいなし、叔父上の目は清玖に向く。覚悟とは、一体何なのか。
「おい、清玖。本当にお前は、頭でちゃんと理解していたか? 吉乃はこういうことを役目として与えられ、それをこなしていかなければならない。そんな男を愛するということが、どれほどの痛みを伴うことか分かって、吉乃に惚れたのか?」
「……それは」
清玖が迷いの色を見せた。それが私を悲しませる。けれど、誰がこんな覚悟を抱けるというのだ。愛した人は、男に嬲られ続ける。男娼の想い人に誰がなりたいというのだ。
「こんな覚悟、出来る訳がないじゃないですかっ! それを無理やり見せつけるなんて……っ!」
声が詰まる。喉がひくついて言葉が上手く出なかった。清玖が私に歩み寄り、寝台の上に上がってきた。私のものや、彼らのもので汚れた寝台の上に。
「吉乃、大丈夫。確かに俺の覚悟は甘かった。……だが今、強くなった」
「清玖……、私はここまで酷な目に遭うとは思っていなかったんだ……少なくとも、こんな目に清玖を遭わせるなんて、思いもしなかった……。本当に……すまない、巻き込んでしまって……すまない、清玖」
溢れ出る涙は止められず、泣きじゃくる私を清玖が抱きしめた。お互いに、随分とみっともない恰好をしているが、今は抱きしめあうことを止められない。
この温もりだ。これじゃないか。どうして私は間違えてしまったんだ。彼らの熱とは全然違う。満たされるようなこの感覚を、どうして間違えたんだ。
「私は吉乃が羨ましい」
こんな声は、つい先ほども聞いた。叔父上の、寂しげな声。私を妬む、悲しい声。叔父上も、父が陛下でなくなったら、共に離宮に行き、父の夫君になりたかったのかもしれない。
けれど、それは叶わない願いだった。父が陛下でなくなるのは、その命が終わる時だけ。叔父上が、姫宮の役目を終えるのは、父が死ぬときだけなのだ。
ただ一人、恋焦がれて求める相手の死を前にして、叔父上はどれほどの絶望を抱いているのだろうか。推し量ることもできない。それほどに、叔父上が抱えるものの闇は深かった。
「……あとは好きにするといい。私は出ていく。……吉乃、また明日の晩ここへ来い」
最後にそんな言葉だけを残して、叔父上は去って行った。また明日、ということは指導は一度きりではないらしい。気が重くなる。二人きりになって、私は少し清玖から距離を置いた。そして、そこで自分の後孔に手を伸ばす。だが、なかなか届かない。
「どうしたんだ?」
「……中の、気持ち悪くて」
「ああ、そういうことか。こっちにおいで。俺がやるよ」
「でも……」
「遠慮しなくていいから。そんな姿をしてる吉乃を見る方が、目に毒だよ」
そして自分の体勢を見た。長衣の裾から、清玖には私の局部が丸見えだった。そんな状態で必死に後をいじろうとする私は、酷く滑稽だっただろう。恥ずかしくなって、清玖に寄り、託す。
ぐぐ、と力を込められ挿入感で腰がざわついた。清玖の指が私の中を優しく掻いて、無遠慮に出されたものを出していく。彼らが悪いわけではない。彼らとて、被害者だ。それでも怒りを向けてしまう。
「随分と濃いな。さっきの彼は若かったからかな。……気持ち良かった?」
「清玖だと思っていたから、体が反応してしまったんだ」
「でも、腰を振ってた」
「清玖じゃないと分かっていたら、あんなことはしなかった!」
そんなこといちいち言葉にしなくてもいいじゃないか。そんな拗ねた気持ちで吠えてしまった。ふい、と顔を逸らすと、清玖の手によって引き戻される。
「分かってる。……すまない、惨めな嫉妬だ」
「……お願いだから信じて、清玖。私の一番は清玖なんだ」
「ありがとう、吉乃」
そうは言ったけれど、清玖のおもては暗いままだった。どうすればいいのだろう。私の体に清玖の名前を書いて欲しいくらいだった。私を所有するのは清玖なのだと、私を抱く男たちに伝えたい。せめて、清玖に私がどれほど清玖を想っているかを伝えたかった。頭に妙案が浮かぶ。
「どれだけ私が清玖を愛してるか、見ていて」
清玖を寝台の上に座らせ、私はその上に乗りあげる。そして、まだ硬いままの清玖を掴み、己の後孔に宛がって、そのまま腰を下ろす。
叔父上が言った通り、姫宮となるこの体は情交に特化しているのだろう。どれだけでも咥えこめた。ゆっくりと腰を上げ、そして下す。自らの足で自分の体を支え、清玖の腹に手をついて、上げ下げを自力で行った。
「……っん、……清玖、……清玖、私は……清玖だけが……っ、……あぁっ!」
ひときわ大きな声を出してしまった。強い感覚が体を貫いて、動きが止まりかける。けれど、気持ち良くて何度もそこに当たるよう腰を動かした。快感が強すぎて、何も考えられなくなる。
「吉乃、そこが気持ち良いのか」
「いい……っ、きもち、いぃ、ぁっ……、……んっ」
私は清玖の上で跳ね続けた。腰が止まらない。体が壊れてしまったかのように、同じ動きを繰り返す。清玖が私の腰を支えようとしたが、それを拒んだ。私は、私だけの力で清玖を気持ちよくさせたいのだ。
「あっ、あ……っ、しんっ、んっ……っ、……っ!」
強い快楽の波が、全身を支配した。大きな声を上げて泣き叫ぶ。私は今までにないほどの絶頂へ至った。だが、私の先端からは何も出ていない。今まで強い快感を得ると、先端から精が飛び出ていたというのに。
「凄い……出てないのに、達けたんだな」
清玖が言う言葉の意味は良く分からなかったけれど、すごい、と褒めてもらえて嬉しかった。だから、私は微笑む。ただそれだけなのに、私の中の清玖は一層大きくなった。
そもそも今は、私が達してしまっただけで、清玖はまだだったのだ。後孔は目一杯というほどに今開いている。それほどに清玖のものが大きいのだ。私で大きくしてくれるのが、とても嬉しい。少しだけ、叔父上の仕打ちから心が立ち直ってきている。清玖がいるだけで、こんなにも心が癒された。
私はそのまま、腰を上下させて清玖を絶頂へと導く。何かに耐えるように顔を歪める清玖のおもてを眺めていた。切羽詰まった顔の清玖を見るのが、私は好きだった。そして、腰を動かし続けた私の中で、清玖が果てる。腹の中が熱くなった。
「私が……どれだけ清玖のことを想っているか、伝わった?」
繋がったままで、私は清玖の胸に縋りついていた。そしてうっとりと目を閉じる私の頭を清玖が撫でる。優しい手だ。ずっと、この手にだけ触れていて欲しい。
「凄く伝わった。嬉しいよ」
「良かった」
「……今度は俺が、どれだけ吉乃を愛してるか伝えてもいい?」
清玖が私の体を抱きしめる。そして、そのまま私を寝台に押し倒した。繋がったままの状態だ。私は足を大きく開いて、あられもない状態になっている。清玖がどのようにして、私に愛を伝えてくれるかは一目瞭然だった。
「いいよ」
私の中の清玖は、まだ硬さを保っていた。一体何度果てられるのだろうとぼんやり考えていた時に、清玖が激しく腰を振り出した。私のものはもう元気もなく、清玖が揺らすたびに同調してぶらぶらと揺れた。
悲鳴を出し過ぎて喉が痛い。よくよく考えれば、今日私は何度貫かれているのだろう。三人と交わり、多くの精を受け入れて、幾度となく揺さぶられている。体が疲れ切っていた。それでも、清玖を受け入れることだけはやめられなかった。
「しん……っ、し、ん、あ……っ、んん……あっ、あっ……」
揺さぶられ、清玖と私の体がぶつかり、音が鳴る。その音にも、その衝撃にも反応してしまう。奥を貫かれ、気持ちの良い箇所に触れる度、声が漏れた。清玖の手が私の腹部を撫でたり、胸の先端を弄ったりと、私に快楽をもたらしてくれる。
「しんっ、胸、もっとちゃんと……して……、……っ」
私は清玖に胸を触られるのが好きだった。特に、舐められたり甘噛みされると堪らなくなる。私は清玖にそれを強請った。直後、繋がった状態で私の体は抱き起こされ、あぐらをかいた清玖の太股の上に乗せられる。
「吉乃の胸、凄く立ってる……舐めてもいい?」
「いいっ、……から、早く……っ」
わざわざそんなことを聞かなくてもいいのに、清玖はわざと焦らすために聞くのだ。私は胸を突き出して、立ち上がっている胸の先端を清玖に突き付ける。
「いじわる、しないで」
「すまない。吉乃が可愛いからついつい、いじめたくなる」
そう言いながら、清玖は私の乳首に舌を這わせた。堪らない気持になる。もう私の中心は立ち上がっていないのに、だらだらと透明の液が溢れ出して、それが止まらなかった。
体を揺らし、私の奥を貫きながら私の胸を舌で撫で、手で弄る。器用な清玖に、私は翻弄され続けた。受け止めきれない快感をどうすることも出来ず、私は清玖の頭を抱きしめるに終始した。
今まで、私は敢えて考えないようにしていた。でも、己自身に思い知らされている。私は、性交が好きなのだ。入れられるのが好きで、淫らで、犯されるのが好きなのだ。それは、叔父上の言葉を借りれば、天から姫宮に授けられた才だという。
「清玖……私は、抱かれるのが好きなんだ。誰に抱かれても、きっと、体は反応してしまう」
先ほどの叔父上の指導がまさにそれだ。私は、清玖だと思い込んだ相手に、あれだけ狂いよがった。二人も清玖が存在する訳がないのに、清玖二人に抱かれていると思い込んで、快楽の奴隷となっていた。
「……でも、心で欲しがるのは、清玖だけなんだ」
一度抱かれてしまうと、きっと私はもう何も分からなくなってしまうのだろう。朦朧とする意識で、ただただ気持ちよさだけを強請る淫売に成り下がる。だが、私自身が求めるのは清玖だけ。それは揺らがない。
「……私のこと、嫌わないで」
気付いた時には、瞳から涙が溢れていた。すかさずそれを清玖の指が拭ってくれる。そして、唇を彼の唇が塞いだ。舌先がお互いを舐め合い、上顎を撫で、歯列をなぞる。角度を変えて、息を奪い合うように口付けを交わし合う。
「嫌いになんてなれない」
私の口の端に、清玖が音を立てるように軽く口付けた。頬を撫でられる。清玖はそのままの流れで、私の耳に舌を差し入れた。水音が激しく鼓膜を震わせる。その音に反応して、体の奥に熱が生まれた。私の耳を甘噛みし、耳朶を優しく食む。そして、耳元でそっと囁いた。
「愛してる」
小さな声だった。私にだけ聞こえるような、そんな声。清玖は私を抱きしめ、そして体を少し持ち上げる。ずる、と清玖のものが抜けた。二人で寝台に倒れ込む。声を出して笑い合って、抱きしめ合う。
「時が来たら、俺を夫君にしてくれるんだろう?」
額を付き合わせ、近い距離で微笑み合う。私はゆっくりと頷いた。いつか、全てが許される時が来たら私は清玖を夫君にする。穏やかで、幸福な毎日。それを夢見て私は今を耐える。それしか術はないのだ。
いつか。
いつか、全てのしがらみから解放されたら、清玖と婚姻を結び、夫君になった彼と穏やかに離宮で日々を過ごすのだ。そんな、夢を見ていられる今がどれほど幸福であったかを、後に、私は知ることとなる。
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