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俺を見て
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自室にはクリスティーヌが来てくれていたからソファに座って診察を受けた。治癒術は自分で使ったから、もう手の施しようがない。
「急性の神経症ですね。空間認識術による脳への負荷もしばらく尾を引くでしょうから、とにかくまずはたくさん眠ってお休み下さい。治癒術が切れた際は、ためらわずに何度でもお使いください」
「わかったわ。……何も考えずに術を使ったのは浅はかだったけれど、現場を見に行って、良かったわ。わたくしが酷く動揺して怯えていても、なんの不思議もないものね」
「聖上……。猊下がお帰りになられたら、しばらくはそばに付いていていただいて下さい。それでも後遺症が残る場合は、カウンセリングや行動療法などを試していきましょう」
聖印の効果でなんとかなるといいのだけど、今は先程の光景が頭から離れる気がしない。眠らない限りずっとさいなまれ続ける気がする。
こういう場合に有効な手段として記憶に干渉する術などもあるのだが、精神支配系の術は対象より格上の術師でないとかからないのだ。そのうえ私は生まれつき毒や精神支配に耐性があるからレギアスにも無理だろう。
そもそも皇主がそんな術を使わせるわけにはいかないけれど。
一番の問題は眠らせる術や薬が効かないことだった。
「俺がいるから、大丈夫だ」
隣に座って手を握ってくれていたレギアスが私を抱き寄せた。けれどやっぱり、今日はまだ全然落ち着かない。
「……あまり心身にご負担をおかけしないようお願い申し上げますよ殿下」
「べ、別に襲うだけしか能がないわけじゃないぞ!」
クリスティーヌが退室すると、レギアスに促されお風呂に入った。外歩きの汚れをスッキリ落として温かいお湯に浸かり、侍女たちのマッサージを受けると、緊張していた心と体が解れていく。
湯上りに合わせて鎮静効果のあるアロマやハーブティーも用意してくれたから疲れた頭が急激に眠たくなってきた。
ディナーの時間になったけれど食事はまだとても取れそうにない。ポタージュスープだけ何とか流し込んですぐに休むことにした。
寝室まで抱いて運ばれベッドに下ろしてもらったけれど、ほんの少しでも体が離れると不安で仕方がなくて。レギアスが隣に横になるなり胸に飛び込んでしまった。
「レティシア、大丈夫、大丈夫だよ。ずっと俺がついてる」
レギアスは私をそっと抱きしめ、頭をさらさらと撫でてくれる。その手があまりにも優しいからまた目に涙が滲む。
「レギアス……あの、さっきの、あの人たちはね、ナザーラムっていうセレスティアの親友と伝わる神を信仰していたの。だから、この国を頼れば助けてもらえると信じてた」
「そうだったのか……」
「それなのに……私、すっかり忘れていて……」
「仕方ないよレティシア。国を守ることに精一杯だったんだ」
また私の浅はかさのせいで命を失ってしまった。もう後悔はしたくなかったのに。
「そういえば俺、こっちの宗教には疎いんだけど、一神教の奴らってこの国は異端視してないのか?」
「彼らの唯一神は、一番古い原初の神なの。ほとんどの神々のルーツでもあるから、ほかの神は天使として扱うことでつじつまを合わせているのよ」
「ああ、時空神カズムか」
「そうなの。セレスティアを最後に生みだしたあと神界を創造して移り住んだ。そう伝わっているから、この国の存在は一神教の教義を都合よく強化してしまっているの」
勝手に天使だとか言われて利用されていること何百年も抗議しているが、全く耳を貸さないふてぶてしい連中だ。
「ナザーラムは男色と芸術の神で、出自が不明なのもあって異端視されているの。帝国が同性愛を禁止しだしてから急にね」
「ズブズブだな。 ……でもそうか、男色の神だから親友なのか」
「セレスティアにとって自分を性的な目で見ない存在はきっと凄く貴重で、大切な友達だったのだと思うわ。それなのに……自分たちが気に入らないからって勝手に神の言葉を作り上げて、罪のない人たちをあんな、あんなふうに…………絶対に許せない」
怒りと悲しみが湧き上がってきて体が震える。せっかく少し落ち着いていたのに、バカだ私。もう涙が次から次へと溢れてきて、レギアスのナイトガウンの胸元がグシャグシャに濡れている。
レギアスはしばらく黙って背中をさすってくれていたけれど、突然脇に手を差し入れて私を枕元に引き上げた。
ビックリして目を開くと、すぐ近くの優しい眼差しと目が合って。
「レティシア、レティシアは俺の顔、好きだよね?」
「え? もちろん。顔が一番好きよ」
「そうなんだ。ちょっと複雑だな……まあいいや。じゃあさ、目を開けて、ずっと俺の顔を見ててよ」
レギアスはそう言うと額を寄せて私の目を覗き込んだ。
「そ、そんなに近づかれたら、瞳くらいしか見えないけど……」
「顔の中で一番好きなのはこの目だろ? 違った?」
「……違わない……けど」
至近距離で見つめられて、恥ずかしくてつい目を伏せてしまう。
「ふふ、まだ見つめられると緊張する? 可愛いな。……俺さ」
レギアスは頭を元の位置に戻すと少し迷ったように二度ほど瞬きし、そのまま目を伏せて静かに語りだした。まつ毛の奥から銀の光が儚げに揺らめいていて、なんだか目が離せない。
「こんなんだから、生まれてからしばらくは魔力を封じる処置をされた部屋に閉じ込められてたんだ」
「え……」
レギアスは胎児のうちから強い魔力を放っていたらしい。私と違って同質の魔力だったから無事ではあったけれど、お母様は大変な苦労をして出産したのだと教えてくれた。幼少期は城から離れた塔の中でたった一人、封印の施された部屋に閉じ込められて、お母様と一緒の時だけそこから出られたのだと。
「母親はとにかく厳しくて、魔術の話しかほとんどしなかった。魔力を完全に抑えられるようになった6歳の春、お袋は凄くいい笑顔で褒めてくれてさ。でもそのあと、数日もしないうちにあの人は俺のそばどころか国からもいなくなってた」
「そんな……」
「子供だからさ、完全に抑えられるようになったと言ってもいつも安定してっていうのは無理だった。こんな性格だし、母親がいなくなったことが少なからずショックだったのもあって」
寂しさを思い出したのか、レギアスは私の手をとって握りしめた。胸に切なさが込み上げてくる。
「親父が師匠を連れてきてくれて、修行で魔力を発散したけど、それでも時々抑えられなくなってさ。誰も傷つけていないのにみんな酷く怯えて逃げていくんだ。その顔が、ずっと頭にこびりついて離れなくて。あのころの俺は、ひたすら自分の魔力を抑えながら人のいない場所で大人しく生きてた」
今まで、レギアスの幼少期はお姉様たちに構われながら賑やかに過ごしていたのだと思っていた。そんな寂しい暮らしをしていたなんて夢にも思わずに。
「姉貴たちがそんな俺を見つけてはオモチャにしてくれたけどさ。女装は嫌だったけど、おかげで気が紛れてた」
「レギアス……」
「でもレティシアに出会ってから……嫌なことが頭に浮かんだ時はレティシアを思い出せばすぐに幸せな気分になれた。レティシアのことを何ひとつ変わらず鮮明に覚えてられることに感謝したよ」
「そ、そう」
そんなふうに言われたら、嬉しくて顔が熱くなる。
レギアスは私の顔にかかる髪を整えると、そのまま感触を楽しんでいた。ふと、表情が翳る。
「でも今度は思い出せば思い出すほど今のレティシアに会いたくなって……触れたくてさ。15にもなると、レティシアに縁談が来てるんじゃないかとか色々考えて、おかしくなりそうだった」
「レギアス……」
胸が詰まって思わずレギアスの頭に腕を回して抱きしめた。
「私、何も知らなくて……ごめんなさい」
レギアスは胸の谷間に顔をうずめて気持ち良さそうにしていたけれど、私をまた引き剥がすと柔らかく笑った。
「レティシアが謝ることなんて何もないんだ。レティシアが今俺の腕の中にいてくれて、最高に幸せだよ」
「私も……」
どうしようもなく胸が締め付けられて、レギアスの頬に両手を添えると唇を重ねてそっと押し付けた。
ひと息ついて閉じていた瞼を開くと、目の前にあったのはとろけるような笑顔で。たまらなく嬉しくなってずっとその顔を見ていたかったのに、レギアスの目が伏せられたかと思うとまた唇が重なる。
何度も唇を啄まれながら時々かかる熱い息にドキドキして、徐々に深くなっていくキスに夢中で身を委ねた。柔らかに吸い付く唇とぬるぬると奥まで這い回る舌の感触に、頭の中まで痺れていく。すっかり濡れそぼった唇が離れていくと、硬直していた体がくたりと弛緩して意識もフワフワと霧散していった。
レティシアの唇を解放すると、トロンとした瞳で胸元に擦り寄ってきた。可愛らしく俺のガウンを握りしめ、瞼を閉じたかと思うとすやすやと寝息を立て始める。
「あ、もう眠っちゃったのか……。幼少期の不幸話は優しいレティシアには効果てきめんだな」
レティシアを起こさないように、そっと布団を肩まで引き上げ、持て余す体に溜息をつきながら先程の話を思い返す。
実際には、俺はかなり恵まれていたと最近になってようやく気づけた。周囲が万全の体制で気をつけてくれたから、誰も殺してない状態でレティシアと出会えたんだ。
お袋だってなんだかんだ毎年帰ってきた。
誰かを殺したりして本当にバケモノ扱いされていたら、きっと俺はレティシアを探すことができなかっただろう。実際任務とはいえたくさん殺して悪魔呼ばわりされるようになってからは積極的に探せなくなったしな。
俺は奇跡のように愛しい存在をそっと腕の中に包み込み、彼女の笑顔がこれ以上曇ることのないようにと、彼女と繋がっているであろう神に祈った。
「この先もっと酷い事態になったら……これ以上どうやって慰めたらいいのか……もうわからないな」
「急性の神経症ですね。空間認識術による脳への負荷もしばらく尾を引くでしょうから、とにかくまずはたくさん眠ってお休み下さい。治癒術が切れた際は、ためらわずに何度でもお使いください」
「わかったわ。……何も考えずに術を使ったのは浅はかだったけれど、現場を見に行って、良かったわ。わたくしが酷く動揺して怯えていても、なんの不思議もないものね」
「聖上……。猊下がお帰りになられたら、しばらくはそばに付いていていただいて下さい。それでも後遺症が残る場合は、カウンセリングや行動療法などを試していきましょう」
聖印の効果でなんとかなるといいのだけど、今は先程の光景が頭から離れる気がしない。眠らない限りずっとさいなまれ続ける気がする。
こういう場合に有効な手段として記憶に干渉する術などもあるのだが、精神支配系の術は対象より格上の術師でないとかからないのだ。そのうえ私は生まれつき毒や精神支配に耐性があるからレギアスにも無理だろう。
そもそも皇主がそんな術を使わせるわけにはいかないけれど。
一番の問題は眠らせる術や薬が効かないことだった。
「俺がいるから、大丈夫だ」
隣に座って手を握ってくれていたレギアスが私を抱き寄せた。けれどやっぱり、今日はまだ全然落ち着かない。
「……あまり心身にご負担をおかけしないようお願い申し上げますよ殿下」
「べ、別に襲うだけしか能がないわけじゃないぞ!」
クリスティーヌが退室すると、レギアスに促されお風呂に入った。外歩きの汚れをスッキリ落として温かいお湯に浸かり、侍女たちのマッサージを受けると、緊張していた心と体が解れていく。
湯上りに合わせて鎮静効果のあるアロマやハーブティーも用意してくれたから疲れた頭が急激に眠たくなってきた。
ディナーの時間になったけれど食事はまだとても取れそうにない。ポタージュスープだけ何とか流し込んですぐに休むことにした。
寝室まで抱いて運ばれベッドに下ろしてもらったけれど、ほんの少しでも体が離れると不安で仕方がなくて。レギアスが隣に横になるなり胸に飛び込んでしまった。
「レティシア、大丈夫、大丈夫だよ。ずっと俺がついてる」
レギアスは私をそっと抱きしめ、頭をさらさらと撫でてくれる。その手があまりにも優しいからまた目に涙が滲む。
「レギアス……あの、さっきの、あの人たちはね、ナザーラムっていうセレスティアの親友と伝わる神を信仰していたの。だから、この国を頼れば助けてもらえると信じてた」
「そうだったのか……」
「それなのに……私、すっかり忘れていて……」
「仕方ないよレティシア。国を守ることに精一杯だったんだ」
また私の浅はかさのせいで命を失ってしまった。もう後悔はしたくなかったのに。
「そういえば俺、こっちの宗教には疎いんだけど、一神教の奴らってこの国は異端視してないのか?」
「彼らの唯一神は、一番古い原初の神なの。ほとんどの神々のルーツでもあるから、ほかの神は天使として扱うことでつじつまを合わせているのよ」
「ああ、時空神カズムか」
「そうなの。セレスティアを最後に生みだしたあと神界を創造して移り住んだ。そう伝わっているから、この国の存在は一神教の教義を都合よく強化してしまっているの」
勝手に天使だとか言われて利用されていること何百年も抗議しているが、全く耳を貸さないふてぶてしい連中だ。
「ナザーラムは男色と芸術の神で、出自が不明なのもあって異端視されているの。帝国が同性愛を禁止しだしてから急にね」
「ズブズブだな。 ……でもそうか、男色の神だから親友なのか」
「セレスティアにとって自分を性的な目で見ない存在はきっと凄く貴重で、大切な友達だったのだと思うわ。それなのに……自分たちが気に入らないからって勝手に神の言葉を作り上げて、罪のない人たちをあんな、あんなふうに…………絶対に許せない」
怒りと悲しみが湧き上がってきて体が震える。せっかく少し落ち着いていたのに、バカだ私。もう涙が次から次へと溢れてきて、レギアスのナイトガウンの胸元がグシャグシャに濡れている。
レギアスはしばらく黙って背中をさすってくれていたけれど、突然脇に手を差し入れて私を枕元に引き上げた。
ビックリして目を開くと、すぐ近くの優しい眼差しと目が合って。
「レティシア、レティシアは俺の顔、好きだよね?」
「え? もちろん。顔が一番好きよ」
「そうなんだ。ちょっと複雑だな……まあいいや。じゃあさ、目を開けて、ずっと俺の顔を見ててよ」
レギアスはそう言うと額を寄せて私の目を覗き込んだ。
「そ、そんなに近づかれたら、瞳くらいしか見えないけど……」
「顔の中で一番好きなのはこの目だろ? 違った?」
「……違わない……けど」
至近距離で見つめられて、恥ずかしくてつい目を伏せてしまう。
「ふふ、まだ見つめられると緊張する? 可愛いな。……俺さ」
レギアスは頭を元の位置に戻すと少し迷ったように二度ほど瞬きし、そのまま目を伏せて静かに語りだした。まつ毛の奥から銀の光が儚げに揺らめいていて、なんだか目が離せない。
「こんなんだから、生まれてからしばらくは魔力を封じる処置をされた部屋に閉じ込められてたんだ」
「え……」
レギアスは胎児のうちから強い魔力を放っていたらしい。私と違って同質の魔力だったから無事ではあったけれど、お母様は大変な苦労をして出産したのだと教えてくれた。幼少期は城から離れた塔の中でたった一人、封印の施された部屋に閉じ込められて、お母様と一緒の時だけそこから出られたのだと。
「母親はとにかく厳しくて、魔術の話しかほとんどしなかった。魔力を完全に抑えられるようになった6歳の春、お袋は凄くいい笑顔で褒めてくれてさ。でもそのあと、数日もしないうちにあの人は俺のそばどころか国からもいなくなってた」
「そんな……」
「子供だからさ、完全に抑えられるようになったと言ってもいつも安定してっていうのは無理だった。こんな性格だし、母親がいなくなったことが少なからずショックだったのもあって」
寂しさを思い出したのか、レギアスは私の手をとって握りしめた。胸に切なさが込み上げてくる。
「親父が師匠を連れてきてくれて、修行で魔力を発散したけど、それでも時々抑えられなくなってさ。誰も傷つけていないのにみんな酷く怯えて逃げていくんだ。その顔が、ずっと頭にこびりついて離れなくて。あのころの俺は、ひたすら自分の魔力を抑えながら人のいない場所で大人しく生きてた」
今まで、レギアスの幼少期はお姉様たちに構われながら賑やかに過ごしていたのだと思っていた。そんな寂しい暮らしをしていたなんて夢にも思わずに。
「姉貴たちがそんな俺を見つけてはオモチャにしてくれたけどさ。女装は嫌だったけど、おかげで気が紛れてた」
「レギアス……」
「でもレティシアに出会ってから……嫌なことが頭に浮かんだ時はレティシアを思い出せばすぐに幸せな気分になれた。レティシアのことを何ひとつ変わらず鮮明に覚えてられることに感謝したよ」
「そ、そう」
そんなふうに言われたら、嬉しくて顔が熱くなる。
レギアスは私の顔にかかる髪を整えると、そのまま感触を楽しんでいた。ふと、表情が翳る。
「でも今度は思い出せば思い出すほど今のレティシアに会いたくなって……触れたくてさ。15にもなると、レティシアに縁談が来てるんじゃないかとか色々考えて、おかしくなりそうだった」
「レギアス……」
胸が詰まって思わずレギアスの頭に腕を回して抱きしめた。
「私、何も知らなくて……ごめんなさい」
レギアスは胸の谷間に顔をうずめて気持ち良さそうにしていたけれど、私をまた引き剥がすと柔らかく笑った。
「レティシアが謝ることなんて何もないんだ。レティシアが今俺の腕の中にいてくれて、最高に幸せだよ」
「私も……」
どうしようもなく胸が締め付けられて、レギアスの頬に両手を添えると唇を重ねてそっと押し付けた。
ひと息ついて閉じていた瞼を開くと、目の前にあったのはとろけるような笑顔で。たまらなく嬉しくなってずっとその顔を見ていたかったのに、レギアスの目が伏せられたかと思うとまた唇が重なる。
何度も唇を啄まれながら時々かかる熱い息にドキドキして、徐々に深くなっていくキスに夢中で身を委ねた。柔らかに吸い付く唇とぬるぬると奥まで這い回る舌の感触に、頭の中まで痺れていく。すっかり濡れそぼった唇が離れていくと、硬直していた体がくたりと弛緩して意識もフワフワと霧散していった。
レティシアの唇を解放すると、トロンとした瞳で胸元に擦り寄ってきた。可愛らしく俺のガウンを握りしめ、瞼を閉じたかと思うとすやすやと寝息を立て始める。
「あ、もう眠っちゃったのか……。幼少期の不幸話は優しいレティシアには効果てきめんだな」
レティシアを起こさないように、そっと布団を肩まで引き上げ、持て余す体に溜息をつきながら先程の話を思い返す。
実際には、俺はかなり恵まれていたと最近になってようやく気づけた。周囲が万全の体制で気をつけてくれたから、誰も殺してない状態でレティシアと出会えたんだ。
お袋だってなんだかんだ毎年帰ってきた。
誰かを殺したりして本当にバケモノ扱いされていたら、きっと俺はレティシアを探すことができなかっただろう。実際任務とはいえたくさん殺して悪魔呼ばわりされるようになってからは積極的に探せなくなったしな。
俺は奇跡のように愛しい存在をそっと腕の中に包み込み、彼女の笑顔がこれ以上曇ることのないようにと、彼女と繋がっているであろう神に祈った。
「この先もっと酷い事態になったら……これ以上どうやって慰めたらいいのか……もうわからないな」
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