42 / 70
皇主の資格
しおりを挟む
「レティシア、レティシア……」
レギアスが私を抱き締めながら耳を何度も甘噛みしている。
ずっとレギアスと抱き合い続けて、意識を失ってもすぐに呼び戻されて……
今何時だろう……眩しい。
「陛下、殿下、そろそろ朝食を食べていただかないと困ります」
ハンナがこちらを見ないようにドアから顔を出している。
「朝食くらい抜いたっていいだろ。俺はまだ足りないんだ」
「ん、……レギアス、ダメだよ。そろそろ起きないと……。今日はだいじなこと、色々あったはず……」
「レティシア!」
私が目覚めて喜んだレギアスが愛撫を再開した。
「レギアス、私にけっかい、使わせないんでしょう?」
「う、……………………わかったよ」
それからレギアスにお風呂で洗われて、朝食を食べた。ずっとレギアスに抱かれていてほとんど眠っていないから頭も体もフワフワする。
あれ?このあと捜査会議とかそういうのじゃなかった?私、大丈夫??
着替えの最中に侍女がサラを呼んできた。まだ下着姿なのに。
後ろから私の体を支えているレギアスは少し気に食わなさそうな気配を発していたけど何も言わなかった。
ご機嫌なのと跡を見せつけたいのと両方ねたぶん。
「レティ、大丈夫かい?うわ、なんだその跡!!」
「サラ、来てくれてありがとう。あまり眠れてなくて……」
「侍女たちが心配しているよ。……昨日は凄く綺麗だったのに……」
サラは引きながら控えめに睨んでいるが、レギアスは全く意を介さずにニコニコしている気がする。
「手首の跡ひどいな……」
「痛ッ!」
「おい、何するんだ!」
「いや、こっちのセリフだよ!もしかしてヒビでも入ってるんじゃないか??レティ、我慢しないで治さないとダメだよ」
サラがそっと手首に触れる。聖印が虹色に光り痛みが和らいだ。
「あの時のか!レティシアごめん……大丈夫??」
「私がそうなるように誘導したんだからいいの」
「レティ、変態行為も程々にしないと今に殿下に殺されるよ?僕は心配だよ……」
「へ……そういうのじゃないわよ!!」
レギアスのツボに入ったのか私の後ろでクツクツと笑いだした。いいとは言ったけど少しは反省して欲しい……
サラに手を握ってもらいながら両手首に痛み止めと治癒術を掛けた。
ずっとズキズキしてたけど術を使うとレギアスに気付かれるから困る。ついでに浄化もかけて少し楽になった。
「私、会議まで眠るから仲良くしててね……」
痛みが消えると急に眠気が襲ってきて私は意識を手放した。
サラと睡眠のおかげで回復した私は時間ピッタリに着くよう大会議場に向かった。ドラゴン達も現状を把握したいと付いてきている。
私が扉から姿を見せるなり会議のメンバー全員が跪く。
私が用意された席につき、レギアスとサラが両隣に座ると各々座るなり持ち場について御前捜査会議が始まった。
キャロラインを襲った刺客の捜査状況は当然のように思わしくなかった。
影の魔術に対抗する手段はないかと紛糾しているが良いアイデアは出ない。
ジャンジャックや幾人かの目撃者によると刺客は女の可能性が高いようだ。
顔を隠した黒ずくめの格好をしていてわかりにくいらしいが体型が女だったという。切り落とした腕で予想はついていたがほぼ確定だ。
やはり女ね、皇帝のお手つきかしら……。腕も切り落としているし私はきっと憎まれている。祝福を受け取れていない可能性が高い。
もし無理やり結界をこじ開けたなら私がすぐに気づけるはず。対処できるように、なんなら殺せるように準備しなければ。
ぐるぐる考えている間に国民への発表内容や皇都の防衛計画などが話し合われ、色々と決められていった。
最後に、パニックを引き起こさないように秘密厳守を強く言い含めて御前捜査会議はお開きとなった。
そのあとはドラゴン達と別れ、昼食を食べながら宰相をはじめとした大臣たちとの会議を行った。
皇族代表と教団代表で前回に続き叔父とサラも出席している。
間諜がどこに潜んでいるかわからないから私の結界で防音を完璧にして臨んだ。
皇帝を暗殺できるように私とレギアスも動いていることを共有し、内部に裏切りが出ないよう調整と監視を強めることを要請した。
みんな私が心配し過ぎていると言ってくれたけれど、気を悪くするそぶりも見せず真剣に話し合ってくれた。
さらにビビアン様のように外国から招く客や旅から戻る国民のため、嘘を見抜く魔道具を持たせた祝福術の使い手を国境に派遣する事が決まった。
引き継ぎについて聞いてみると、これから順次行っていくとの事だった。知らないうちにレギアスの株が上がっていたのか全て同席を許された。
最後にただ一つ引き継ぎを行わない項目について宰相から説明があった。
「陛下。本来ならば、皇主に即位するにあたって必ず行わなければならない儀式があります。儀式なしには皇主として認められないのです」
「それは、わたくしは皇主としてまだ認められていないという事?」
私1人で皇主になったつもりでいた?
でも、もう国内外に正式に発表している……
「いいえ、陛下は特別な存在であらせられますから、儀式をする事で得られる能力、いわば皇主の資格を生まれつきの資質として備えていらっしゃいます」
「わたくしがセレスティアだから?」
「おそらくは。歴代皇主は儀式を行い女神に認められて初めて祝福術の管理権を手にし、国外でも使えるようになります。国土を覆う結界も、皇主が儀式の間で女神に祈る事で発動するのです」
「そ、そうなの!?」
結界術が苦手なお父様でも国土を結界で覆えると聞いて不思議には思っていた。そういう事だったのか。
「他にも、皇国の秘めた歴史についての皇主だけが知り得る情報が受け継がれるらしいのですが……」
本当の神話がわかるということかしら?気になる……
「前皇主は、お父上はレティシア様が儀式をする事をずっと危ぶんでいらっしゃいました。ですから、私どももレティシア様は儀式無しでの即位とする事を全会一致で決めておりました」
「それは……わたくしが、セレスティアの記憶に目覚めるかもしれないとか、そういう事?」
「そうです」
「そう……」
お父様が私を思っていてくれたことに胸が熱くなる。
重臣たちも……女神の完全復活よりも私の人格を守ることを選んでくれてるんだ……
私は涙が込み上げるのを必死にこらえた。
「それについて神託を請うたところ、杞憂であるとの事ではあるのですが」
もっと具体的に教えてくれなきゃ踏み切れないじゃない。神託ってフワッとしてるのね。
「みんな、わたくしのために……ありがとう。……あの、その事とは別にわたくしも神託を得たいと思っているのだけれど……やはりその、儀式の間に行かなければいけないのかしら」
「神託ですか?陛下が??……大変失礼致しました。はい、そうなります。皇主ならば女神像に触れるだけで神託を得ることが可能ですが……先ほど申し上げた儀式も女神像に触れる事なのです」
神託を授けるセレスティア本人であるはずの私の発言に困惑してしまったようだ。
「レティシア、急いで結論を出さなくていい。ゆっくり考えよう?」
それまで黙って聞いていたレギアスが私の手を握り心配そうに見つめた。
「そうね……ゆっくり考えるわ。ありがとうレギアス」
「神託ならば、巫女や神官が代わりに請う事もできますので、その事もお考えおき下さい」
「わかったわ、宰相。ありがとう」
内戦の引き金になりかねない事を誰かに言うわけにはいかない。
でも私自らおもむけば自身を失うかもしれない……
この問題もとりあえず棚上げにするしかないわね。
このあと、まず宰相に皇主の隠し部屋を案内してもらった。
私も知っている隠し通路と繋がっていたけれど、私の空間認識でもすぐにはわからない厳重な認識阻害が施されていた。
儀式の間、もとい女神の間も入り口まで案内されたけれど、重厚な扉の向こうは大きな次元結界で覆われているようだった。私自身の作った結界のようなのに違う、変な感覚だった。
どうやって入るのかと思ったら皇族だけが素通りできるようになっているらしい。
そしてビックリしたのは大蔵大臣に連れて行かれた金庫。宝物庫は行ったことがあるけれど金庫は初めてで、小さな部屋ほどもある大きな金庫の中に大量にある金貨を全て好きに使っていいと言われた。もちろん国の金庫は桁違いに凄かった。
どうやって使うんだろうあんなもの……
ザックリと引き継ぎを済ませるだけでもそれから3日かかった。
権限が増えるので入れ替わり立ち替わり説明ばかり聞かされて頭がクラクラする。
あらかた引き継ぎを終えて安心したその日の夜はマティアス殿下とディナーを共にした。国葬の警備を終えたあと観光も楽しんだ殿下は朝にはソーマに帰るらしい。
「マティアス殿下。この度は本当に助かりました。心から感謝しますわ」
「いやいや、可愛い弟と妹になる人のために何かしたかったからね。婚約祝いと思って下さい」
「ふふ、ありがとうございます。こんな頼もしい方の妹になれるとは光栄ですわ。実は、頼みがあるのですが」
お金の有意義な使い方を思い付いたのでさっそく実行に移すことにする。
「なんですか?」
「ご存知と思いますが国葬の最終日にわたくしの侍女が襲われたのです。国民を安心させるために、犯人が捕まるまで貴国から改めて竜騎士を派遣してして欲しいのですが……」
「ああ、犯人はまだ捕まっていないのでしたね。どのくらいの規模をご所望ですか?」
「なるべく多い方がいいわ。皇都だけじゃなく各地に配備したいから。資金はそれなりにあるのだけれど、なにぶん相場がわからなくて」
こんな事を言ったら普通は足元を見られそうだけど、レギアスが居るから大丈夫だろう。
「そうですね、人数や実力により前後しますが1組あたり1日金貨100枚程です。」
金貨1枚前後が日払い賃金の相場って聞いたことあるけれど、流石に竜騎士は高いのね。
一騎当千が誇大広告でないなら安いのかしら??
どのくらいの期間を想定すればいいかしら……資金は多いけれど無限ではないし……
「おい、マティアス。俺はまだソーマ王国の大事な第2王子だよな?」
「レ、レギアス?そ、それは……もちろんだとも」
「第2王子の身が危険だから護衛として竜騎士を100人連れてこい。すぐにだ」
「「ええっ!?」」
結局、レギアスの脅しという名の交渉によりただで竜騎士が100人も来ることになった。
国中に配置できる数で安心だけど……私、未来の義理の家族の上得意客になりたかったの……
レギアスが私を抱き締めながら耳を何度も甘噛みしている。
ずっとレギアスと抱き合い続けて、意識を失ってもすぐに呼び戻されて……
今何時だろう……眩しい。
「陛下、殿下、そろそろ朝食を食べていただかないと困ります」
ハンナがこちらを見ないようにドアから顔を出している。
「朝食くらい抜いたっていいだろ。俺はまだ足りないんだ」
「ん、……レギアス、ダメだよ。そろそろ起きないと……。今日はだいじなこと、色々あったはず……」
「レティシア!」
私が目覚めて喜んだレギアスが愛撫を再開した。
「レギアス、私にけっかい、使わせないんでしょう?」
「う、……………………わかったよ」
それからレギアスにお風呂で洗われて、朝食を食べた。ずっとレギアスに抱かれていてほとんど眠っていないから頭も体もフワフワする。
あれ?このあと捜査会議とかそういうのじゃなかった?私、大丈夫??
着替えの最中に侍女がサラを呼んできた。まだ下着姿なのに。
後ろから私の体を支えているレギアスは少し気に食わなさそうな気配を発していたけど何も言わなかった。
ご機嫌なのと跡を見せつけたいのと両方ねたぶん。
「レティ、大丈夫かい?うわ、なんだその跡!!」
「サラ、来てくれてありがとう。あまり眠れてなくて……」
「侍女たちが心配しているよ。……昨日は凄く綺麗だったのに……」
サラは引きながら控えめに睨んでいるが、レギアスは全く意を介さずにニコニコしている気がする。
「手首の跡ひどいな……」
「痛ッ!」
「おい、何するんだ!」
「いや、こっちのセリフだよ!もしかしてヒビでも入ってるんじゃないか??レティ、我慢しないで治さないとダメだよ」
サラがそっと手首に触れる。聖印が虹色に光り痛みが和らいだ。
「あの時のか!レティシアごめん……大丈夫??」
「私がそうなるように誘導したんだからいいの」
「レティ、変態行為も程々にしないと今に殿下に殺されるよ?僕は心配だよ……」
「へ……そういうのじゃないわよ!!」
レギアスのツボに入ったのか私の後ろでクツクツと笑いだした。いいとは言ったけど少しは反省して欲しい……
サラに手を握ってもらいながら両手首に痛み止めと治癒術を掛けた。
ずっとズキズキしてたけど術を使うとレギアスに気付かれるから困る。ついでに浄化もかけて少し楽になった。
「私、会議まで眠るから仲良くしててね……」
痛みが消えると急に眠気が襲ってきて私は意識を手放した。
サラと睡眠のおかげで回復した私は時間ピッタリに着くよう大会議場に向かった。ドラゴン達も現状を把握したいと付いてきている。
私が扉から姿を見せるなり会議のメンバー全員が跪く。
私が用意された席につき、レギアスとサラが両隣に座ると各々座るなり持ち場について御前捜査会議が始まった。
キャロラインを襲った刺客の捜査状況は当然のように思わしくなかった。
影の魔術に対抗する手段はないかと紛糾しているが良いアイデアは出ない。
ジャンジャックや幾人かの目撃者によると刺客は女の可能性が高いようだ。
顔を隠した黒ずくめの格好をしていてわかりにくいらしいが体型が女だったという。切り落とした腕で予想はついていたがほぼ確定だ。
やはり女ね、皇帝のお手つきかしら……。腕も切り落としているし私はきっと憎まれている。祝福を受け取れていない可能性が高い。
もし無理やり結界をこじ開けたなら私がすぐに気づけるはず。対処できるように、なんなら殺せるように準備しなければ。
ぐるぐる考えている間に国民への発表内容や皇都の防衛計画などが話し合われ、色々と決められていった。
最後に、パニックを引き起こさないように秘密厳守を強く言い含めて御前捜査会議はお開きとなった。
そのあとはドラゴン達と別れ、昼食を食べながら宰相をはじめとした大臣たちとの会議を行った。
皇族代表と教団代表で前回に続き叔父とサラも出席している。
間諜がどこに潜んでいるかわからないから私の結界で防音を完璧にして臨んだ。
皇帝を暗殺できるように私とレギアスも動いていることを共有し、内部に裏切りが出ないよう調整と監視を強めることを要請した。
みんな私が心配し過ぎていると言ってくれたけれど、気を悪くするそぶりも見せず真剣に話し合ってくれた。
さらにビビアン様のように外国から招く客や旅から戻る国民のため、嘘を見抜く魔道具を持たせた祝福術の使い手を国境に派遣する事が決まった。
引き継ぎについて聞いてみると、これから順次行っていくとの事だった。知らないうちにレギアスの株が上がっていたのか全て同席を許された。
最後にただ一つ引き継ぎを行わない項目について宰相から説明があった。
「陛下。本来ならば、皇主に即位するにあたって必ず行わなければならない儀式があります。儀式なしには皇主として認められないのです」
「それは、わたくしは皇主としてまだ認められていないという事?」
私1人で皇主になったつもりでいた?
でも、もう国内外に正式に発表している……
「いいえ、陛下は特別な存在であらせられますから、儀式をする事で得られる能力、いわば皇主の資格を生まれつきの資質として備えていらっしゃいます」
「わたくしがセレスティアだから?」
「おそらくは。歴代皇主は儀式を行い女神に認められて初めて祝福術の管理権を手にし、国外でも使えるようになります。国土を覆う結界も、皇主が儀式の間で女神に祈る事で発動するのです」
「そ、そうなの!?」
結界術が苦手なお父様でも国土を結界で覆えると聞いて不思議には思っていた。そういう事だったのか。
「他にも、皇国の秘めた歴史についての皇主だけが知り得る情報が受け継がれるらしいのですが……」
本当の神話がわかるということかしら?気になる……
「前皇主は、お父上はレティシア様が儀式をする事をずっと危ぶんでいらっしゃいました。ですから、私どももレティシア様は儀式無しでの即位とする事を全会一致で決めておりました」
「それは……わたくしが、セレスティアの記憶に目覚めるかもしれないとか、そういう事?」
「そうです」
「そう……」
お父様が私を思っていてくれたことに胸が熱くなる。
重臣たちも……女神の完全復活よりも私の人格を守ることを選んでくれてるんだ……
私は涙が込み上げるのを必死にこらえた。
「それについて神託を請うたところ、杞憂であるとの事ではあるのですが」
もっと具体的に教えてくれなきゃ踏み切れないじゃない。神託ってフワッとしてるのね。
「みんな、わたくしのために……ありがとう。……あの、その事とは別にわたくしも神託を得たいと思っているのだけれど……やはりその、儀式の間に行かなければいけないのかしら」
「神託ですか?陛下が??……大変失礼致しました。はい、そうなります。皇主ならば女神像に触れるだけで神託を得ることが可能ですが……先ほど申し上げた儀式も女神像に触れる事なのです」
神託を授けるセレスティア本人であるはずの私の発言に困惑してしまったようだ。
「レティシア、急いで結論を出さなくていい。ゆっくり考えよう?」
それまで黙って聞いていたレギアスが私の手を握り心配そうに見つめた。
「そうね……ゆっくり考えるわ。ありがとうレギアス」
「神託ならば、巫女や神官が代わりに請う事もできますので、その事もお考えおき下さい」
「わかったわ、宰相。ありがとう」
内戦の引き金になりかねない事を誰かに言うわけにはいかない。
でも私自らおもむけば自身を失うかもしれない……
この問題もとりあえず棚上げにするしかないわね。
このあと、まず宰相に皇主の隠し部屋を案内してもらった。
私も知っている隠し通路と繋がっていたけれど、私の空間認識でもすぐにはわからない厳重な認識阻害が施されていた。
儀式の間、もとい女神の間も入り口まで案内されたけれど、重厚な扉の向こうは大きな次元結界で覆われているようだった。私自身の作った結界のようなのに違う、変な感覚だった。
どうやって入るのかと思ったら皇族だけが素通りできるようになっているらしい。
そしてビックリしたのは大蔵大臣に連れて行かれた金庫。宝物庫は行ったことがあるけれど金庫は初めてで、小さな部屋ほどもある大きな金庫の中に大量にある金貨を全て好きに使っていいと言われた。もちろん国の金庫は桁違いに凄かった。
どうやって使うんだろうあんなもの……
ザックリと引き継ぎを済ませるだけでもそれから3日かかった。
権限が増えるので入れ替わり立ち替わり説明ばかり聞かされて頭がクラクラする。
あらかた引き継ぎを終えて安心したその日の夜はマティアス殿下とディナーを共にした。国葬の警備を終えたあと観光も楽しんだ殿下は朝にはソーマに帰るらしい。
「マティアス殿下。この度は本当に助かりました。心から感謝しますわ」
「いやいや、可愛い弟と妹になる人のために何かしたかったからね。婚約祝いと思って下さい」
「ふふ、ありがとうございます。こんな頼もしい方の妹になれるとは光栄ですわ。実は、頼みがあるのですが」
お金の有意義な使い方を思い付いたのでさっそく実行に移すことにする。
「なんですか?」
「ご存知と思いますが国葬の最終日にわたくしの侍女が襲われたのです。国民を安心させるために、犯人が捕まるまで貴国から改めて竜騎士を派遣してして欲しいのですが……」
「ああ、犯人はまだ捕まっていないのでしたね。どのくらいの規模をご所望ですか?」
「なるべく多い方がいいわ。皇都だけじゃなく各地に配備したいから。資金はそれなりにあるのだけれど、なにぶん相場がわからなくて」
こんな事を言ったら普通は足元を見られそうだけど、レギアスが居るから大丈夫だろう。
「そうですね、人数や実力により前後しますが1組あたり1日金貨100枚程です。」
金貨1枚前後が日払い賃金の相場って聞いたことあるけれど、流石に竜騎士は高いのね。
一騎当千が誇大広告でないなら安いのかしら??
どのくらいの期間を想定すればいいかしら……資金は多いけれど無限ではないし……
「おい、マティアス。俺はまだソーマ王国の大事な第2王子だよな?」
「レ、レギアス?そ、それは……もちろんだとも」
「第2王子の身が危険だから護衛として竜騎士を100人連れてこい。すぐにだ」
「「ええっ!?」」
結局、レギアスの脅しという名の交渉によりただで竜騎士が100人も来ることになった。
国中に配置できる数で安心だけど……私、未来の義理の家族の上得意客になりたかったの……
0
お気に入りに追加
93
あなたにおすすめの小説
男友達を家に入れたら催眠術とおもちゃで責められ調教されちゃう話
mian
恋愛
気づいたら両手両足を固定されている。
クリトリスにはローター、膣には20センチ弱はある薄ピンクの鉤型が入っている。
友達だと思ってたのに、催眠術をかけられ体が敏感になって容赦なく何度もイかされる。気づけば彼なしではイけない体に作り変えられる。SM調教物語。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
迷い込んだ先で獣人公爵の愛玩動物になりました(R18)
るーろ
恋愛
気がついたら知らない場所にた早川なつほ。異世界人として捕えられ愛玩動物として売られるところを公爵家のエレナ・メルストに買われた。
エレナは兄であるノアへのプレゼンとして_
発情/甘々?/若干無理矢理/
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる