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神話
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「レギアス?」
目が覚めると朝日の照らす中、いつものベッドに私は1人で寝ていて、レギアスが居なかった。布団も冷たい……
「レギアス、どこ?レギアスッ!」
昨夜のこともあって私はすぐに不安に駆られた。
「レティシア、ここだよ」
広い寝室に本棚が並ぶ最奥からレギアスが顔を出し、瞬時に本を持ってベッドの上に座る私の横に来た。相変わらずどういう動きをしているのかさっぱりわからない。
「レギアス、居なくなったかと……」
私は安心感で涙が溢れ出してしまった。
「レティシア、ごめん、ちょっと本を探してたんだ」
レギアスは何度もごめんねと囁きながら私を優しく抱き寄せ、両手の親指で頬から涙を拭うと私の目元にキスして涙を舐め取った。
そのまま涙が止まらない私の顔をジッと見つめると今度は唇を啄んできて……レギアスがどんどん興奮して呼吸が荒くなる。
私がレギアスの背に手を回しナイトガウンを握りしめ、キスに応えると肩を強く掴まれベッドに押し倒された。
「レティシア、レティシア……」
「レギアス、ん、んんっ、ふ、ん、んんー!っ」
キスはどんどん激しくなり、レギアスの舌が上顎を這い回ると私の体がビクビクと跳ね力が抜ける。
「レギアス……」
私が潤んだ瞳で見つめるとレギアスはしまったというような顔で動きを止めていた。
私と目が合うと誤魔化すように私の額にキスを落とし、
「そろそろ起きようか」
そう言って魔術で私の涙を綺麗に飛ばし、手を引いて起こされた。
私がそこから動かずにいるといつものように勝手に私を抱き上げてリビングに連れて行かれる。
私はむくれながらもレギアスの胸に顔をうずめた。
いつものようにカウチソファに座ると侍女達が揃って綺麗に並び朝の挨拶をし、準備のために散り散りに作業に戻る。
私はレギアスの胸に顔をうずめたまま侍女達におはようの一言も言わずモヤモヤと考えていた。
「ねえ、レギアスは私の涙とかを舐めてもなんともないの?浄化されて弱ったりしないの?」
「ああ、レティシアの神聖力は神聖と名がついているけど、ただ純粋な力なんだ。術式で力の方向性を与えなければ浄化もしないし……むしろ俺にとって美味しい感じ」
「え……何それずるい……」
「色で表すとレティシアの力は無色透明で、俺のは色々混じってほとんど黒に近い。普通の人間は何かしら薄く色が付いてて、かなり色の薄い魔力が神聖力って言われてる感じかな。普通の人間の魔力なら浄化しながら取り入れることがレティシアなら簡単なんだと思うよ」
「そう言われると……確かに魔力ってそんな感じに見えるわね……」
「レティシアは清らかすぎて、俺の穢れを受け付けるようにはできてないんだ……」
レギアスが哀しげな声を出す。
「穢れって何よ……いいじゃない、黒。私は好きよ?私の体も今に慣れるわよ……」
「うん、そうだといいな」
「さっきの、何の本探してたの?」
「神と悪魔について調べたくて……神話の本とか」
「いい本あった?」
「いや、たぶん悪魔についてはタブーだからか、ほとんど書かれてないんだ。現れた。退治した。みたいな感じ」
「神も悪魔もさほど変わらないわよ。大悪魔はたいてい元は神だし。どちら側に属しているかってただそれだけ。カードの裏表みたいなものよ」
レギアスが私の肩をそっと掴み顔をのぞき込んだ。
「そういうのはどこで教わったの?」
「小さい時にお父様から……教団か、皇主の部屋か、きっと詳しい神話の本が探せばあると思うわ。あ、地下に皇主だけ入れる隠し部屋とかあるはず……」
「そういえば、引き継ぎの話はどうなったんだろうな?国葬が終わるまで忙しいからその後って考えてるのかな」
「たぶんそうだと思う」
「とりあえず、後で俺は師匠に色々聞いてみるよ」
「ああ、竜王様なら直接知ってるものね!」
話しながら用意された朝食を食べ終え、私が身支度をしている間に竜王様を呼び出してレギアスが色々と話していた。
「悪魔は魔界の住人だからな。大物は滅多に現れなかったし、神々が魔界とこちらの通り道を断ち切ってからは無理してこちらを侵略する気もなくなったようだ。悪魔が現れなければ神もそれほど崇められなくなってどこかに行ってしまったがな」
「結局悪魔のことはよくわからないってことか?」
「まあそうだ。知ることがそもそも危険だとされている。我は興味も無かったしな」
「神と悪魔が結ばれた例とか知ってるか?」
「聞いたことがないな」
当時から生きていたと言っても全て知ってるわけじゃないものね。竜王様は他人の恋愛なんて興味なさそう。
「セレスティアは悪魔とも恋仲だったらしいんだが」
「ありえるかもな。セレスティアは自分で相手を選んでいたのではない。アレは兄のティーリーンに逆らえず神々への捧げ物として使われていたのだ。敵に送って油断させたり神器と交換に貸し出したりと悪どい男だった。セレスティアはその度に相手の男と恋仲になるから可哀想でな。一度関係を持つと必ず執着されるからトラブルも絶えぬし」
「な……なんだそれ……。兄は恋人だったんだろ?恋仲の妹を道具にしてたっていうのか?」
「まあそうだ。そんなことでセレスティアを慕う臣下の人間達が手を組んでセレスティアを連れて逃げたのだ。おそらく臣下達が人質になって言うことを聞かせられていたからな……」
あら?伝承と違う……
逃げた後で臣下の誰かと恋に落ちて結婚したの??
「そ、その兄はどうなったんだ?」
「知らん。我はそんな神々に利用されるのに嫌気がさして放浪の旅に出たからな。今神々がどこにいるのか生きているのか死んでいるのかも知らん。おそらく神界とやらにいるのだと思うが」
「そ、その兄がもし生きていたら絶対に殺す!!」
「まあその時が来たら我も喜んで手伝ってやる」
「レギアス、落ち着いて、ね?」
支度を終えた私が近づくとレギアスは漏れ出す殺気をしまい、切ない顔で私を見つめて抱き寄せた。
「私は私だから、生まれ変わりかどうか知らないけど、覚えてないことは私の経験じゃないのよ?」
「そうだけど……。師匠、師匠はレティシアはセレスティア本人だと思うか?」
竜王様はジッと私を見つめた。
「わからん。限りなく同じには見えるが……緑髪を受け入れなかったり打算的だったりと性格は違うな。それに皇主はまだ人間の範疇に収まっている。神力の源は他にあるようだし……本人と言うよりは分身が近いか……」
「レティシア、ずっとレティシアのままで居てくれ……」
レギアスは私を折れそうなほど強く抱きしめると顔を擦り寄せた。
「え?もしかして私が前世の記憶を思い出したりすると思っているの?冗談じゃなく?……そんなことがあったら……私は……居なくなってしまうかもしれないのね……」
「ご、ごめん!変なこと言って……」
レギアスは慌てて体を離すと顔をうつむけ、私の両手を取って握りしめた。
「今まで、生まれ変わりとか言われても本気にしたことなかったの……でも、そんなこともあるかもしれないのね」
今まで、女神の生まれ変わりという言葉は私を讃えるためのリップサービスのように捉えていた。でもセレスティア本人を知っている竜王様に同じに見えると言われると……現実味がいや増してしまう。
そもそも、容姿や能力以前に神託があったから私はセレスティアの名を生まれた時から持っているのだ。
「レティシア?」
「やっぱり、後のことなんて考えて居られないわね。寿命がどうのなんてわからない話をして私を避けていたら、知らないうちに私が居なくなっていて後悔するわよ?」
「そ、そんな……居なくならないって言ってくれよ。俺のために!!」
レギアスは大きな声を張り上げると私の両手を持ち上げてますます強く握りしめた。体が引っ張られるし痛い。
「そんなのレギアスの態度次第よ。寂しいと消えたくなるもの」
「れ、レティシア……」
「とりあえず、離してくれるかしら。せっかくのヘアメイクがもう崩れて侍女たちが困っているわ」
私はフンっという感じでわざとらしくそっぽを向いて呆然と固まるレギアスから離れると、侍女たちの元に戻りメイクを直してもらった。
目が覚めると朝日の照らす中、いつものベッドに私は1人で寝ていて、レギアスが居なかった。布団も冷たい……
「レギアス、どこ?レギアスッ!」
昨夜のこともあって私はすぐに不安に駆られた。
「レティシア、ここだよ」
広い寝室に本棚が並ぶ最奥からレギアスが顔を出し、瞬時に本を持ってベッドの上に座る私の横に来た。相変わらずどういう動きをしているのかさっぱりわからない。
「レギアス、居なくなったかと……」
私は安心感で涙が溢れ出してしまった。
「レティシア、ごめん、ちょっと本を探してたんだ」
レギアスは何度もごめんねと囁きながら私を優しく抱き寄せ、両手の親指で頬から涙を拭うと私の目元にキスして涙を舐め取った。
そのまま涙が止まらない私の顔をジッと見つめると今度は唇を啄んできて……レギアスがどんどん興奮して呼吸が荒くなる。
私がレギアスの背に手を回しナイトガウンを握りしめ、キスに応えると肩を強く掴まれベッドに押し倒された。
「レティシア、レティシア……」
「レギアス、ん、んんっ、ふ、ん、んんー!っ」
キスはどんどん激しくなり、レギアスの舌が上顎を這い回ると私の体がビクビクと跳ね力が抜ける。
「レギアス……」
私が潤んだ瞳で見つめるとレギアスはしまったというような顔で動きを止めていた。
私と目が合うと誤魔化すように私の額にキスを落とし、
「そろそろ起きようか」
そう言って魔術で私の涙を綺麗に飛ばし、手を引いて起こされた。
私がそこから動かずにいるといつものように勝手に私を抱き上げてリビングに連れて行かれる。
私はむくれながらもレギアスの胸に顔をうずめた。
いつものようにカウチソファに座ると侍女達が揃って綺麗に並び朝の挨拶をし、準備のために散り散りに作業に戻る。
私はレギアスの胸に顔をうずめたまま侍女達におはようの一言も言わずモヤモヤと考えていた。
「ねえ、レギアスは私の涙とかを舐めてもなんともないの?浄化されて弱ったりしないの?」
「ああ、レティシアの神聖力は神聖と名がついているけど、ただ純粋な力なんだ。術式で力の方向性を与えなければ浄化もしないし……むしろ俺にとって美味しい感じ」
「え……何それずるい……」
「色で表すとレティシアの力は無色透明で、俺のは色々混じってほとんど黒に近い。普通の人間は何かしら薄く色が付いてて、かなり色の薄い魔力が神聖力って言われてる感じかな。普通の人間の魔力なら浄化しながら取り入れることがレティシアなら簡単なんだと思うよ」
「そう言われると……確かに魔力ってそんな感じに見えるわね……」
「レティシアは清らかすぎて、俺の穢れを受け付けるようにはできてないんだ……」
レギアスが哀しげな声を出す。
「穢れって何よ……いいじゃない、黒。私は好きよ?私の体も今に慣れるわよ……」
「うん、そうだといいな」
「さっきの、何の本探してたの?」
「神と悪魔について調べたくて……神話の本とか」
「いい本あった?」
「いや、たぶん悪魔についてはタブーだからか、ほとんど書かれてないんだ。現れた。退治した。みたいな感じ」
「神も悪魔もさほど変わらないわよ。大悪魔はたいてい元は神だし。どちら側に属しているかってただそれだけ。カードの裏表みたいなものよ」
レギアスが私の肩をそっと掴み顔をのぞき込んだ。
「そういうのはどこで教わったの?」
「小さい時にお父様から……教団か、皇主の部屋か、きっと詳しい神話の本が探せばあると思うわ。あ、地下に皇主だけ入れる隠し部屋とかあるはず……」
「そういえば、引き継ぎの話はどうなったんだろうな?国葬が終わるまで忙しいからその後って考えてるのかな」
「たぶんそうだと思う」
「とりあえず、後で俺は師匠に色々聞いてみるよ」
「ああ、竜王様なら直接知ってるものね!」
話しながら用意された朝食を食べ終え、私が身支度をしている間に竜王様を呼び出してレギアスが色々と話していた。
「悪魔は魔界の住人だからな。大物は滅多に現れなかったし、神々が魔界とこちらの通り道を断ち切ってからは無理してこちらを侵略する気もなくなったようだ。悪魔が現れなければ神もそれほど崇められなくなってどこかに行ってしまったがな」
「結局悪魔のことはよくわからないってことか?」
「まあそうだ。知ることがそもそも危険だとされている。我は興味も無かったしな」
「神と悪魔が結ばれた例とか知ってるか?」
「聞いたことがないな」
当時から生きていたと言っても全て知ってるわけじゃないものね。竜王様は他人の恋愛なんて興味なさそう。
「セレスティアは悪魔とも恋仲だったらしいんだが」
「ありえるかもな。セレスティアは自分で相手を選んでいたのではない。アレは兄のティーリーンに逆らえず神々への捧げ物として使われていたのだ。敵に送って油断させたり神器と交換に貸し出したりと悪どい男だった。セレスティアはその度に相手の男と恋仲になるから可哀想でな。一度関係を持つと必ず執着されるからトラブルも絶えぬし」
「な……なんだそれ……。兄は恋人だったんだろ?恋仲の妹を道具にしてたっていうのか?」
「まあそうだ。そんなことでセレスティアを慕う臣下の人間達が手を組んでセレスティアを連れて逃げたのだ。おそらく臣下達が人質になって言うことを聞かせられていたからな……」
あら?伝承と違う……
逃げた後で臣下の誰かと恋に落ちて結婚したの??
「そ、その兄はどうなったんだ?」
「知らん。我はそんな神々に利用されるのに嫌気がさして放浪の旅に出たからな。今神々がどこにいるのか生きているのか死んでいるのかも知らん。おそらく神界とやらにいるのだと思うが」
「そ、その兄がもし生きていたら絶対に殺す!!」
「まあその時が来たら我も喜んで手伝ってやる」
「レギアス、落ち着いて、ね?」
支度を終えた私が近づくとレギアスは漏れ出す殺気をしまい、切ない顔で私を見つめて抱き寄せた。
「私は私だから、生まれ変わりかどうか知らないけど、覚えてないことは私の経験じゃないのよ?」
「そうだけど……。師匠、師匠はレティシアはセレスティア本人だと思うか?」
竜王様はジッと私を見つめた。
「わからん。限りなく同じには見えるが……緑髪を受け入れなかったり打算的だったりと性格は違うな。それに皇主はまだ人間の範疇に収まっている。神力の源は他にあるようだし……本人と言うよりは分身が近いか……」
「レティシア、ずっとレティシアのままで居てくれ……」
レギアスは私を折れそうなほど強く抱きしめると顔を擦り寄せた。
「え?もしかして私が前世の記憶を思い出したりすると思っているの?冗談じゃなく?……そんなことがあったら……私は……居なくなってしまうかもしれないのね……」
「ご、ごめん!変なこと言って……」
レギアスは慌てて体を離すと顔をうつむけ、私の両手を取って握りしめた。
「今まで、生まれ変わりとか言われても本気にしたことなかったの……でも、そんなこともあるかもしれないのね」
今まで、女神の生まれ変わりという言葉は私を讃えるためのリップサービスのように捉えていた。でもセレスティア本人を知っている竜王様に同じに見えると言われると……現実味がいや増してしまう。
そもそも、容姿や能力以前に神託があったから私はセレスティアの名を生まれた時から持っているのだ。
「レティシア?」
「やっぱり、後のことなんて考えて居られないわね。寿命がどうのなんてわからない話をして私を避けていたら、知らないうちに私が居なくなっていて後悔するわよ?」
「そ、そんな……居なくならないって言ってくれよ。俺のために!!」
レギアスは大きな声を張り上げると私の両手を持ち上げてますます強く握りしめた。体が引っ張られるし痛い。
「そんなのレギアスの態度次第よ。寂しいと消えたくなるもの」
「れ、レティシア……」
「とりあえず、離してくれるかしら。せっかくのヘアメイクがもう崩れて侍女たちが困っているわ」
私はフンっという感じでわざとらしくそっぽを向いて呆然と固まるレギアスから離れると、侍女たちの元に戻りメイクを直してもらった。
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