女神皇主は悪魔王子に溺愛されて受難の日々です!

如月ニヒト

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侵食

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「レティシア、朝だよ」

 朝とは思えないレギアスのキラキラした微笑みが目に入る。なにこれ、眩しすぎる……

「んん、眩しい……もう少し寝たい」

 私は目の前の大好きな引き締まった胸に飛び込み、頬を擦り寄せた。

「えへへ……レギアス、好き」
「こ、こら、レティシア……俺も、好きだよ。好きだ。好き……愛してる……」

 そう言うとレギアスは私を自分の胸板から引き剥がして唇を塞いだ。
 なんだかレギアスがドキドキして赤くなってて可愛い。こっちもつられちゃう。

「あの、申し訳ないのですが、今日は公務が詰まっておりまして……起きて下さい」

 ハンナが気まずそうに顔を出した。
 昨日1日休んでたものね……そりゃそうよね。

「ダメ、俺もうスイッチ入った」

 そう言ってレギアスは私にのしかかり、胸元をはだけさせて貪り始めた。

「だ、ダメ、ほら、ハンナが見てるから、ね?レギアス、あ、待って、そこダメ!あっ!」

 私は流されそうになって慌ててレギアスを結界に閉じ込めた。レギアスから力が抜けて私の上に体が投げ出される。

「お、おも、重いー!」
「陛下!今お助けしますので!!あなた達手伝って!」

 ハンナがリビングに声をかけ侍女たちが駆けつける。
 全員でレギアスを持ち上げようとするが結界に入ると力が抜けてしまうのでできない。
 結界の壁をすり抜け可能にする事はできても力を奪う人間を限定する事はできない。どうしよう……

「あ、あのレギアス、少しだけ結界の力を弱めるからどいてもらえる?」
「…………いいけど」

 私が少し結界の力を奪う効果を弱めるとレギアスが自分で少し体を持ち上げた。
 ほっとして息を大きく吸うとレギアスはどけるどころか少しずり上がって抱きついてきた。

「ちょ、ちょっと、ますます重いじゃない!」
「はぁ、レティシアに抱きついていられるならこの結界も悪くない」
「もう、嘘つき、どいて、よ!も、苦し……」



「あ、あれ?」
「俺が重くて気絶してたよ」

 目の前にはいつものように朝食が用意され、カウチソファの上で私を抱きしめたレギアスがクスクス笑っている。

「レティシアってしっかりしてるようで抜けてるよなー」

 くっ、反論できない……

「なあレティシア、あの結界、力を吸収することもできるんだろ?俺の力を吸収したらいいんじゃないか?それで腕力も増えたりしないのか?」
「吸収かぁ……他人の力を取り込むって気持ち悪くてやったことないのよね。でもレギアスの力ならいいかも。いざという時にレギアスの力を吸って戦えるように訓練しようかしら」

 レギアスから降りて隣に座り、朝食に手をつけながら話を続ける。

「どうなったらそんな場面になるんだよ」
「レギアスが悪魔の記憶に目覚めて暴走しちゃった時とか?」
「なんだよそれ、前世の記憶か?」
「私がセレスティア神の生まれ変わりならレギアスは誰か大悪魔の生まれ変わりとかで……実は前世は大恋愛してたかも」
「あーまあ、そんなこともあるかもな」

 レギアスが私の口の端に付いたソースを舐め取り、ついでとばかりに顔中にキスをする。
 何気ない会話とやり取りが凄く嬉しい。

「試しにやってみようかな」
「ん?いいぞ」
「ふふっ、いっぱい吸ってやるんだから」

 私はレギアスを結界に閉じ込め、力を奪った分を自分の中に取り込んだ。

「え……?……あ、あ……、ぐ……あ、は……ああ……ぁ…………」




 レティシアが苦しそうに呻き出し、ビクビクと痙攣し始め、俺を捕らえていた結界も解けた。

「レ、レティシア??どうした?レティシア??」

 レティシアは苦しそうに仰け反り、しばらく首や胸を掻きむしるように身悶えして気絶してしまった。
 レティシアを抱き起こしてみるが心音は限りなく微弱で急激に体温も下がっていく。

「レティシア、レティシア!!目を開けろ!レティシア!!」

 俺は回復系の術は一切使えない。何をしていいか分からずただレティシアを抱きしめていることしかできなかった。


 しばらくしてハンナが侍医のクリスティーヌを引っ張って部屋に飛び込んできた。

「ク、クリスティーヌ!レティシアが!レティシアが!!」
「殿下、落ちついて、聖上を横にしてあげて下さい」
「い、嫌だ!離さない!!」
「……わかりました。探査魔術を使うので大人しく見ていて下さい」

 クリスティーヌが探査魔術を発動してすぐに顔色を変える。

「これは……聖上の中で魔力が暴走しています。このままでは聖上が内部から食い尽くされてしまう……ハンナさん、神聖術師をかき集めて下さい!!」

 クリスティーヌがなにか術を発動しようとしている。これは、浄化か?

「俺の、魔力がレティシアを殺そうとしてるのか?」
「レギアス殿下、殿下の魔力はどうも普通の人間のものとは異なるようです。聖上の神聖力と反発し、相殺しあっています。恐らく、神聖術の浄化を使えば殿下の魔力を取り除けるかと。今も私の術で少し手応えがありますが……取り込んだ魔力が多すぎて……」
「そうか……俺の魔力は本当に、神とは対極の、悪魔の力か……」

「俺に、なにかできることはあるか?」
「聖上のお側に、付いていてあげて下さい」
「…………わかった」




「ん、レギア……ス?」

 繋いだ手に違和感を覚えて目をやるとサラがベッド脇の椅子に座り、心配そうに私を見つめていた。

「レティ、具合はどうかな?」

 具合?そういえば身体中が痛い……

「サラ……わたくし……どうしたの?レギアス、レギアスは??」

「俺ならここにいるよ」

 サラとは反対側から声が聞こえた。ベッドのすぐ隣にレギアスのものらしい温もりが感じられる。
 レギアスの方を向こうとして、体が動かなかった……

「わ、私、動けないみたい……どうして」
「大丈夫だよ。今、教団の神聖術師が総出で浄化をかけているからね。少し時間がかかるかもしれないけどちゃんと動けるようになるよ」
「浄化?どうして?それに……どうしてレギアスは私に触れていないの?」

 すぐ側にいるのはわかるのに、いつも触れている温もりが遠くて……

「俺の、俺の魔力を取り込んだらレティシアには毒だったらしいんだ。俺は本当に悪魔の系統らしい。サラディールに聖印を貰ってなかったら、死んでたかもしれないって……」

 レギアスの声が弱々しい……
 早く振り向いて抱きしめてあげたい……

「そう、なの。何も考えずに大量に吸収しちゃうなんてダメね、私。サラ、ありがとう。おかげで助かったわ」
「いいんだ。君まで失うことにならなくて本当に良かったよ」
「いつも助けてもらってばかりね。わたくしにできることがあればなんでも言ってね」
「レティを助けることが僕の喜びだからね。でも、そうだな。願いなら一つあるんだ。聞いてくれるかい?」
「ええ、もちろ――」
「ダメだ!」

 レギアスから強い声が飛んできた。

「レギアス??」
「内容を聞く前に承諾するな」
「え?ええ……」
「さすがに鋭いな。ねえレティ。僕も君の夫になりたい。いいだろう?ずっと、愛してるんだ。愛している、レティ」

 サラは私をジッと見つめると握った私の手を頬に寄せ、愛おしそうに目を瞑った。
 また目を薄く開き、驚き固まる私を見つめるとそっと唇を私の指に寄せ――

 突然レギアスに脇を掴まれて引っぱられ、抱きしめられた。
 サラに握られていた手は外れ、所在なくベッドに落ちる。
 私はいつもの温もりに包まれ、心の底から安心して息をついた。

 サラには悪いけれど、レギアスに触れられた事が嬉しくて、それしか考えられなかった。なんか、面倒なことを言われた気がする……
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