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美しい竜に乗って
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「あ……は……あん……」
目が覚めると喧騒の中、私はリビングのカウチソファの上でレギアスに背中を預け、胸を揉まれていた。
どうもソーマ王国の一行がまだ部屋に居て楽しそうに喋っているのに……
「ちょ、ちょっとレギアス!何してるの!?」
よりにもよって服の隙間から手を入れて直接触ってる!!
「あ、レティシア。やっと目、覚めた?具合どう?」
私の髪の毛から顔を出したレギアスにじっと見つめられる。
「早く、服の中から、手を出して!!」
残念そうに服から手を取り出すレギアス。
「もしかして、わたくしが眠っている間……皆さんの前でずっと??」
「まさか、そんなわけないだろ。あいつら酒飲んで好きにやってこっちなんか見てないからさ、ちょっと我慢できなくてついさっきから……ちょっとだけ……」
「いやいや、俺バッチリ見てました!女神様超色っぽいです!!」
部屋の空きスペースだった場所で席についている竜騎士の1人が手を振っている。
「おい、殺すぞ!!」
「殺したいのはこっちよ!レギアス!!」
「あ、はい。ごめんなさい」
そう言ってギュウギュウと後ろから抱きしめてくるレギアス。
全然反省してる感じがしない……今朝は泣きそうになっていたくせに!!
私は結界を発動させてレギアスの力を奪った。
「少しそこで反省していて!」
レギアスの腕を外してソファに転がす。
「うぐっ、れ、レティシアっ……!」
先ほど部屋に運び入れた大テーブルにみんな移って座っていたので私もそちらに向かった。
どうやら宴会になっていたようだが、今は静まり返っている。
テーブルに近づくと1番手前の席でサラがもの凄く疲れた顔をしていた……
「せっかく来ていただいたのにこんなことになって申し訳ないですわ。わたくしの返事が必要なお話もあったのでしょう?もうすっかり回復したので話を詰めましょう」
「あ、あのレティシア……陛下。あれはあなたの術なのですか?」
マティアス殿下が尋ねると全員私を見て固唾を飲んでいる。
「ええ、わたくしの結界術です」
「あの隊長が……」
「悪魔が動けなくなってる!!」
「女神様!本物の女神様だ!!」
「えーとあの……術が破られたら困るのであんまり悪魔を刺激するような事は言わないで下さいね?」
チヤホヤされるのは慣れているけどやっぱり気恥しい。
「いやぁ驚きました!まさかレギアスを止められる人間がこの世にいるとは……!!」
「ホントだよ!俺感動して泣きそう……!!レギアスを怒らせたら何するかわからないってビクビクする日々はもう終わったんだ」
「レティシア殿、ずっと見放さずに息子についてて下され!お願いします!!」
「父上、レギアスに王になって欲しかったんじゃなかったのですか?」
「ワシがレティシア姫のこと隠してたのバレたからいつ殺されてもおかしくないんじゃ……正直怖い……」
「ソーマの王が怖いとか情けないことを言ってはダメですよ父上……騎士たちも見てますよ?」
「相手がレギアスならこ奴らもわかってくれる……」
確かに、なんか竜騎士の皆さんウンウンうなずいてる。
「なんだこいつらのこの親子漫才……ムカつく。レティシア、反省したからもう許してくれ……ちゃんと大人しくするから……!」
後ろからレギアスのか細い苦しそうな声が聞こえる。
後ろでずっと呻かれるのも気分が悪いから許してあげるか。
「もう、ちゃんと礼儀正しくお父様とお兄様のお相手をしてね?」
私はソファに戻り結界を解くと、レギアスの手を引いて大テーブルに向かった。
「あー、そうそう。ドラゴンを持ってくる代わりにレティシアの祝福が欲しいって話だった」
「祝福?いいわよ?月に1度地方を巡って祝福を施しに行くのだけど、それにソーマを追加しましょう。ドラゴンに乗ればすぐだものね。レギアスも里帰りができるし。ソーマ王、それでいいかしら?」
「ええ、充分です。月に1度レティシア殿に会えるとは、楽しみが増える」
「おい、息子の嫁が可愛すぎるからって馴れ馴れしくするなよ親父……」
「レギアス!!」
「ご、ごめんなさい!」
竜騎士の皆さんが顔を背けて笑いを堪えている。ちょっと気分がいい。
「では、他にはなにかあるかしら?わたくしが寝ている間のことも教えて下さると嬉しいわ」
「ええ、ええ、これからの協力体制について色々話を詰めていきましょう、まあまず席に着いて、飲んでくだされ」
そうして私たちは色々と楽しく話し合い、少しして他の賓客も待つディナー会場でまた歓談した。
ソーマ王はお父様ととても仲が良かったから、思い出話もたくさん聞かせてくれて嬉しかった。
気分が良くなって少し飲みすぎた私は、久々に酔っ払って部屋に戻るなり眠ってしまったのだった。
部屋に戻ると酔って眠るレティシアを侍医が診察し、明日の公務は問題ないとの事だった。
俺はレティシアを起こさないように気をつけながら浴室で洗って着替えさせ、髪の手入れを手伝っていた。
「な、なあアンネローゼ。月のものってどれくらいで終わるんだ?」
姉が居たとはいえ興味が無くてそのへんの細かい知識はない。
俺はそばにいた大人しそうな侍女に聞いてみた。
暗部から派遣された侍女だから実際のところはわからないが。
「そうですねぇ、個人差がございますが……だいたい10日前後でしょうか」
「と、10日!?ま、まさかその間ずっとその……子作りができないとか、ないよな!?」
「もちろんできませんよ?月のものの間はとても繊細になるのです。少しバイ菌が入っただけで子の望めない体になる事もあるのですよ。絶対厳禁です」
な、何だってー!!!?
「はい、できました。陛下をベッドに連れて行って下さい。殿下、おやすみなさいませ」
俺はこの世の終わりみたいな顔をしてたと思う。
いったい10日間も生殺し地獄にどうやって耐えろというのか……
スヤスヤ眠るレティシアをベッドに寝かせ、寝室をウロウロ歩き回って結局レティシアを抱きしめて寝た。眠れなかったが。
まだ夜も明けぬ暗がりの中、私は寝苦しさに目を覚ました。
うわ、レギアスが後ろからギュウギュウ締め付けてる……
「レギアス、苦しい……」
「レティシア……ちょっと出かけよう!」
「は?」
いきなりなんなの?
レギアスは私を身軽なドレスに着替えさせると、横抱きにして窓から飛び降りた。
うん、なんか空中に氷?の足場を作って跳んでる……
そして一歩一歩がすごい距離……
すぐに皇宮の近くの小高い丘に着くと、レギアスの乗っていた黒いドラゴンと白く美しいドラゴンが居た。
「ゴタゴタしてて紹介できてなかったが、ヴァルグとシャリーアだ。レティシアが乗って映えるように美しいやつを選んだんだ」
「本当、とても美しいわ……私が乗れるようになるの?」
まだ夜が明けていないが私もレギアスも魔力と神聖力を介して夜目が効く。
その白いドラゴンはただ見た目が美しいだけではなく漂う魔力もキラキラと輝いていて、ドラゴンの気高さと強さが感じられた。
シャリーアに触ろうと手を伸ばすと顔を擦り寄せてきた。ドラゴンなのにすべすべと滑らかで全然痛くない。
「わぁ、人懐っこいのね!」
「いやまさか……こいつは超絶プライド高くて苦労したんだが……」
「そうなの?」
その瞬間、シャリーアは私の髪の毛を掻き分けてドレスのリボンを咥え、私を持ち上げた。
「きゃっ!」
「お?なんだ??」
そのままシャリーアの背中にそっと降ろされた。乗れって事みたい……
「あ、あのでも……どこに掴まったら……」
全身滑らかですべすべなこのドラゴンは掴まるところが見当たらなかった。
首にしがみつけばいいのかしら??
「結界で固定したら?風よけも作るといい」
「あ、そうか、わかった!」
私はシャリーアの動きを阻害しないように伸縮性のある結界で鞍のように体を固定し、風よけに流線形でシャリーアだけは素通りするように設定した結界で自分を覆った。
「よし、じゃあ行くぞ!」
「え!?行くってどこ??」
「ちょっと遠くだ、あ、シャリーアにも祝福かけてやってくれ」
そう言ってレギアスを乗せたヴァルグが飛び立つとシャリーアも後に続いた。凄い速さで追いつくのに少し苦労してる感じがする。
それにしてもこんなに速いのに私の身体への負担が驚く程少ない!馬より断然楽だ。もしかして私に気遣って飛んでいるから大変なのもあるのかもしれない。
昨日国中に届くように祝福の花びらを散らせたけれど、人間以外は対象外にしていた。
私はこの美しい竜が懐いてくれたのが嬉しくて、ただの祝福ではなく聖印を施した。
聖印の7色の輝きは真っ白な竜にはとても良く似合って美しい。
私が満足してうっとりしている間にシャリーアはヴァルグに追いつき、煽っていた……
それにもすぐに飽きたのかヴァルグのすぐ横に並び、レギアスと会話できるようにしてくれた。
「なんだ?凄いな。もしかしてそれ……聖印か??」
「ええ、この子にとてもよく似合ってるの」
私がご機嫌で返事をするとレギアスは複雑な顔をした。
「俺だけ……俺だけがレティシアの特別な聖印の持主だったのに……」
なんか拗ねてる……そんなジットリ睨まれても……
今更消したりしたらシャリーアの気分を害してしまうわ。
「レギアスは私の夫になるのだからそれ以上に特別な物なんて必要ないでしょう?」
「それはそうだけど……そういえばレティシア。夫は1人きりだよな??」
「え?私はそのつもりだけど、いちおうアンサリムの皇族は配偶者を複数持つことが許されているわ」
「陰謀とか、政略とかで夫が増えるとか、やめてくれよ?俺、殺さない自信ないから」
「ああ、うん。そのへんは、言われなくても私も周りもわかっていると思うわ……」
「わかってるならいい。そろそろ夜明けだ。絶景だから景色も見るといいよ」
そう言われて今まで眼下を見る余裕が無かったことに気付いた。
戦場からの帰りもそういえば空とレギアスばかり見てしまっていたわ。
少し明るい方向を見てみると山並みから夜明けの光が漏れていて、なんとも幻想的な光景だった。
見つめていると少しずつ明るさが増し、景色が色付いていく。
薄青色とオレンジが混ざった空には大好きな人とドラゴンのシルエットが浮かび、眼下には山並みと海と小さく見える街の建物……
初めて見るこの美しい光景は私の瞼に鮮明に焼き付き、いつまでも色褪せることなく心に残った。
目が覚めると喧騒の中、私はリビングのカウチソファの上でレギアスに背中を預け、胸を揉まれていた。
どうもソーマ王国の一行がまだ部屋に居て楽しそうに喋っているのに……
「ちょ、ちょっとレギアス!何してるの!?」
よりにもよって服の隙間から手を入れて直接触ってる!!
「あ、レティシア。やっと目、覚めた?具合どう?」
私の髪の毛から顔を出したレギアスにじっと見つめられる。
「早く、服の中から、手を出して!!」
残念そうに服から手を取り出すレギアス。
「もしかして、わたくしが眠っている間……皆さんの前でずっと??」
「まさか、そんなわけないだろ。あいつら酒飲んで好きにやってこっちなんか見てないからさ、ちょっと我慢できなくてついさっきから……ちょっとだけ……」
「いやいや、俺バッチリ見てました!女神様超色っぽいです!!」
部屋の空きスペースだった場所で席についている竜騎士の1人が手を振っている。
「おい、殺すぞ!!」
「殺したいのはこっちよ!レギアス!!」
「あ、はい。ごめんなさい」
そう言ってギュウギュウと後ろから抱きしめてくるレギアス。
全然反省してる感じがしない……今朝は泣きそうになっていたくせに!!
私は結界を発動させてレギアスの力を奪った。
「少しそこで反省していて!」
レギアスの腕を外してソファに転がす。
「うぐっ、れ、レティシアっ……!」
先ほど部屋に運び入れた大テーブルにみんな移って座っていたので私もそちらに向かった。
どうやら宴会になっていたようだが、今は静まり返っている。
テーブルに近づくと1番手前の席でサラがもの凄く疲れた顔をしていた……
「せっかく来ていただいたのにこんなことになって申し訳ないですわ。わたくしの返事が必要なお話もあったのでしょう?もうすっかり回復したので話を詰めましょう」
「あ、あのレティシア……陛下。あれはあなたの術なのですか?」
マティアス殿下が尋ねると全員私を見て固唾を飲んでいる。
「ええ、わたくしの結界術です」
「あの隊長が……」
「悪魔が動けなくなってる!!」
「女神様!本物の女神様だ!!」
「えーとあの……術が破られたら困るのであんまり悪魔を刺激するような事は言わないで下さいね?」
チヤホヤされるのは慣れているけどやっぱり気恥しい。
「いやぁ驚きました!まさかレギアスを止められる人間がこの世にいるとは……!!」
「ホントだよ!俺感動して泣きそう……!!レギアスを怒らせたら何するかわからないってビクビクする日々はもう終わったんだ」
「レティシア殿、ずっと見放さずに息子についてて下され!お願いします!!」
「父上、レギアスに王になって欲しかったんじゃなかったのですか?」
「ワシがレティシア姫のこと隠してたのバレたからいつ殺されてもおかしくないんじゃ……正直怖い……」
「ソーマの王が怖いとか情けないことを言ってはダメですよ父上……騎士たちも見てますよ?」
「相手がレギアスならこ奴らもわかってくれる……」
確かに、なんか竜騎士の皆さんウンウンうなずいてる。
「なんだこいつらのこの親子漫才……ムカつく。レティシア、反省したからもう許してくれ……ちゃんと大人しくするから……!」
後ろからレギアスのか細い苦しそうな声が聞こえる。
後ろでずっと呻かれるのも気分が悪いから許してあげるか。
「もう、ちゃんと礼儀正しくお父様とお兄様のお相手をしてね?」
私はソファに戻り結界を解くと、レギアスの手を引いて大テーブルに向かった。
「あー、そうそう。ドラゴンを持ってくる代わりにレティシアの祝福が欲しいって話だった」
「祝福?いいわよ?月に1度地方を巡って祝福を施しに行くのだけど、それにソーマを追加しましょう。ドラゴンに乗ればすぐだものね。レギアスも里帰りができるし。ソーマ王、それでいいかしら?」
「ええ、充分です。月に1度レティシア殿に会えるとは、楽しみが増える」
「おい、息子の嫁が可愛すぎるからって馴れ馴れしくするなよ親父……」
「レギアス!!」
「ご、ごめんなさい!」
竜騎士の皆さんが顔を背けて笑いを堪えている。ちょっと気分がいい。
「では、他にはなにかあるかしら?わたくしが寝ている間のことも教えて下さると嬉しいわ」
「ええ、ええ、これからの協力体制について色々話を詰めていきましょう、まあまず席に着いて、飲んでくだされ」
そうして私たちは色々と楽しく話し合い、少しして他の賓客も待つディナー会場でまた歓談した。
ソーマ王はお父様ととても仲が良かったから、思い出話もたくさん聞かせてくれて嬉しかった。
気分が良くなって少し飲みすぎた私は、久々に酔っ払って部屋に戻るなり眠ってしまったのだった。
部屋に戻ると酔って眠るレティシアを侍医が診察し、明日の公務は問題ないとの事だった。
俺はレティシアを起こさないように気をつけながら浴室で洗って着替えさせ、髪の手入れを手伝っていた。
「な、なあアンネローゼ。月のものってどれくらいで終わるんだ?」
姉が居たとはいえ興味が無くてそのへんの細かい知識はない。
俺はそばにいた大人しそうな侍女に聞いてみた。
暗部から派遣された侍女だから実際のところはわからないが。
「そうですねぇ、個人差がございますが……だいたい10日前後でしょうか」
「と、10日!?ま、まさかその間ずっとその……子作りができないとか、ないよな!?」
「もちろんできませんよ?月のものの間はとても繊細になるのです。少しバイ菌が入っただけで子の望めない体になる事もあるのですよ。絶対厳禁です」
な、何だってー!!!?
「はい、できました。陛下をベッドに連れて行って下さい。殿下、おやすみなさいませ」
俺はこの世の終わりみたいな顔をしてたと思う。
いったい10日間も生殺し地獄にどうやって耐えろというのか……
スヤスヤ眠るレティシアをベッドに寝かせ、寝室をウロウロ歩き回って結局レティシアを抱きしめて寝た。眠れなかったが。
まだ夜も明けぬ暗がりの中、私は寝苦しさに目を覚ました。
うわ、レギアスが後ろからギュウギュウ締め付けてる……
「レギアス、苦しい……」
「レティシア……ちょっと出かけよう!」
「は?」
いきなりなんなの?
レギアスは私を身軽なドレスに着替えさせると、横抱きにして窓から飛び降りた。
うん、なんか空中に氷?の足場を作って跳んでる……
そして一歩一歩がすごい距離……
すぐに皇宮の近くの小高い丘に着くと、レギアスの乗っていた黒いドラゴンと白く美しいドラゴンが居た。
「ゴタゴタしてて紹介できてなかったが、ヴァルグとシャリーアだ。レティシアが乗って映えるように美しいやつを選んだんだ」
「本当、とても美しいわ……私が乗れるようになるの?」
まだ夜が明けていないが私もレギアスも魔力と神聖力を介して夜目が効く。
その白いドラゴンはただ見た目が美しいだけではなく漂う魔力もキラキラと輝いていて、ドラゴンの気高さと強さが感じられた。
シャリーアに触ろうと手を伸ばすと顔を擦り寄せてきた。ドラゴンなのにすべすべと滑らかで全然痛くない。
「わぁ、人懐っこいのね!」
「いやまさか……こいつは超絶プライド高くて苦労したんだが……」
「そうなの?」
その瞬間、シャリーアは私の髪の毛を掻き分けてドレスのリボンを咥え、私を持ち上げた。
「きゃっ!」
「お?なんだ??」
そのままシャリーアの背中にそっと降ろされた。乗れって事みたい……
「あ、あのでも……どこに掴まったら……」
全身滑らかですべすべなこのドラゴンは掴まるところが見当たらなかった。
首にしがみつけばいいのかしら??
「結界で固定したら?風よけも作るといい」
「あ、そうか、わかった!」
私はシャリーアの動きを阻害しないように伸縮性のある結界で鞍のように体を固定し、風よけに流線形でシャリーアだけは素通りするように設定した結界で自分を覆った。
「よし、じゃあ行くぞ!」
「え!?行くってどこ??」
「ちょっと遠くだ、あ、シャリーアにも祝福かけてやってくれ」
そう言ってレギアスを乗せたヴァルグが飛び立つとシャリーアも後に続いた。凄い速さで追いつくのに少し苦労してる感じがする。
それにしてもこんなに速いのに私の身体への負担が驚く程少ない!馬より断然楽だ。もしかして私に気遣って飛んでいるから大変なのもあるのかもしれない。
昨日国中に届くように祝福の花びらを散らせたけれど、人間以外は対象外にしていた。
私はこの美しい竜が懐いてくれたのが嬉しくて、ただの祝福ではなく聖印を施した。
聖印の7色の輝きは真っ白な竜にはとても良く似合って美しい。
私が満足してうっとりしている間にシャリーアはヴァルグに追いつき、煽っていた……
それにもすぐに飽きたのかヴァルグのすぐ横に並び、レギアスと会話できるようにしてくれた。
「なんだ?凄いな。もしかしてそれ……聖印か??」
「ええ、この子にとてもよく似合ってるの」
私がご機嫌で返事をするとレギアスは複雑な顔をした。
「俺だけ……俺だけがレティシアの特別な聖印の持主だったのに……」
なんか拗ねてる……そんなジットリ睨まれても……
今更消したりしたらシャリーアの気分を害してしまうわ。
「レギアスは私の夫になるのだからそれ以上に特別な物なんて必要ないでしょう?」
「それはそうだけど……そういえばレティシア。夫は1人きりだよな??」
「え?私はそのつもりだけど、いちおうアンサリムの皇族は配偶者を複数持つことが許されているわ」
「陰謀とか、政略とかで夫が増えるとか、やめてくれよ?俺、殺さない自信ないから」
「ああ、うん。そのへんは、言われなくても私も周りもわかっていると思うわ……」
「わかってるならいい。そろそろ夜明けだ。絶景だから景色も見るといいよ」
そう言われて今まで眼下を見る余裕が無かったことに気付いた。
戦場からの帰りもそういえば空とレギアスばかり見てしまっていたわ。
少し明るい方向を見てみると山並みから夜明けの光が漏れていて、なんとも幻想的な光景だった。
見つめていると少しずつ明るさが増し、景色が色付いていく。
薄青色とオレンジが混ざった空には大好きな人とドラゴンのシルエットが浮かび、眼下には山並みと海と小さく見える街の建物……
初めて見るこの美しい光景は私の瞼に鮮明に焼き付き、いつまでも色褪せることなく心に残った。
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