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第二章 月ニ鳴ク獣
第二十三話 手がかりを求めて(3)※
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青年が四つん這いでまたがってきた。少しだけ精液の匂いがする唇にくちづけられる。しなやかな指が、器用に月鳴の帯をほどいた。敷布に押し付けられ、裸にされながら、低く囁かれた。
「おいしかったから、もっとちょうだい」
「もちろん」
「おなかにもちょうだいね。あんまり前使ったら怒られるんだよね、おれ。パパにさ」
少年も裸になり、月鳴の腰のあたりに座る。厚みはないが、男らしく肩は広い。へたりと垂れただ円形の乳暈を触ると、ぷにぷにと柔らかいのがだんだんとしこってくる。へそ周りもぺったりとしているが、反面その下の陰茎は大きかった。
「おっぱい好き?」
笑いながら髪を解く。結い癖が残り、波打った黒髪が胸の辺りに落ちた。猫に似た大きな瞳に見下ろされる。一瞬その色が、紅に変わった気がした。
『気持ちいい? ――ちゃん』
白い肌と紅の瞳を持つ少年に抱きしめられ、思わず身をよじった。こんなはずはない。
「月鳴ちゃん? ……だめだよぉ、お仕事中にいい夢見ちゃ」
「へ……?」
「ちゃんと集中してよぉ。入っちゃうの♡」
仰向けに寝そべる月鳴のそそり立つ肉茎の上に、青年が菊門をあてがった。ずぷずぷと呑み込んでいく。
「おっきい。おっきいよ、月鳴ちゃん♡」
癖のある細い黒髪が、青年の上下に合わせて跳ねている。絶妙な締め具合に色づいた息をこぼしながら、月鳴は客の目を見ることができなかった。もしも、また朱昂の幻影を青年に重ねてしまったらと思うと、快感とは違う冷たい水が背筋を伝い広がる。
朱昂をそんな目で見てはいけない。見ていなかったはずだ。月鳴は苦悩を隠して、淫魔の少年に精を注いだ。
-----
青年は腹に二度注がれてようやく満腹になったらしく、あっさりと延長して疲労困憊の月鳴にじゃれついていた。
月鳴の横に寝そべり、長い黒髪を指に巻きつけて遊んでいる。ふと手を止めると、少年が月鳴を見た。大きな目を細めて笑う。悪戯というよりも、これから獲物を弄ぼうとする、獣のような顔だった。
「さっきの子、誰?」
「さっきの子……?」
「夢で見ていたでしょう? ほら、ぼくより少し年上くらいの赤い目の男の子」
ドキリとする。夢魔は夢を覗き込み、人間の精気を吸うことができる。一瞬の夢を、少年も同時に見ていたのだ。
「なんだかお客さんじゃないっぽいね。あの子ともこういうことするの……?」
こういう、とつぶやきながら柔らかな指が月鳴の陰茎を握った。誘われて卑しい幻影を見そうになった月鳴は夢を追い払うように体を起こし、客に向かって声を荒げた。
「朱昂と俺はそんな関係ではない! ……あ、あぁ。申し訳ございません」
手を払われた青年は、敷布に頬杖をついて足をバタバタと揺らす。
「謝んなくてもいいけど。でも、そんなむきになるってことはさ……ま、いいか。そんな反応するってことは、ただの夢じゃないっぽいねぇ。ふーん、赤い目、真血かなぁ。牙見えなかったから分からないけど」
真血という単語に、心臓が跳ねそうになる。しかし、赤い目で真血を連想するのは、そう突飛なことでもない。黙っていると、青年がまた口を開いた。頬杖を崩し、腕の上に頬を乗せている。
「もしかして、探してるとか? 大事な子なの?」
弄ぶような表情は消えていた。目をそらし、顎を引いた。ほんのかすかうなずいた月鳴の腕を少年が引いた。月鳴が寝そべると、少年が月鳴を抱きしめる。
「かわいそうな子……。他に愛なんてたくさんあるのに。愛だって、快楽だって他に求めてもいいのに。――秘蹟はどこもひどいんだから」
月鳴は、少年の胸に抱かれながら小さく整った顔を見上げた。最後の一言は、月鳴に向けられたものではないように、感じた。
「おいしかったから、もっとちょうだい」
「もちろん」
「おなかにもちょうだいね。あんまり前使ったら怒られるんだよね、おれ。パパにさ」
少年も裸になり、月鳴の腰のあたりに座る。厚みはないが、男らしく肩は広い。へたりと垂れただ円形の乳暈を触ると、ぷにぷにと柔らかいのがだんだんとしこってくる。へそ周りもぺったりとしているが、反面その下の陰茎は大きかった。
「おっぱい好き?」
笑いながら髪を解く。結い癖が残り、波打った黒髪が胸の辺りに落ちた。猫に似た大きな瞳に見下ろされる。一瞬その色が、紅に変わった気がした。
『気持ちいい? ――ちゃん』
白い肌と紅の瞳を持つ少年に抱きしめられ、思わず身をよじった。こんなはずはない。
「月鳴ちゃん? ……だめだよぉ、お仕事中にいい夢見ちゃ」
「へ……?」
「ちゃんと集中してよぉ。入っちゃうの♡」
仰向けに寝そべる月鳴のそそり立つ肉茎の上に、青年が菊門をあてがった。ずぷずぷと呑み込んでいく。
「おっきい。おっきいよ、月鳴ちゃん♡」
癖のある細い黒髪が、青年の上下に合わせて跳ねている。絶妙な締め具合に色づいた息をこぼしながら、月鳴は客の目を見ることができなかった。もしも、また朱昂の幻影を青年に重ねてしまったらと思うと、快感とは違う冷たい水が背筋を伝い広がる。
朱昂をそんな目で見てはいけない。見ていなかったはずだ。月鳴は苦悩を隠して、淫魔の少年に精を注いだ。
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青年は腹に二度注がれてようやく満腹になったらしく、あっさりと延長して疲労困憊の月鳴にじゃれついていた。
月鳴の横に寝そべり、長い黒髪を指に巻きつけて遊んでいる。ふと手を止めると、少年が月鳴を見た。大きな目を細めて笑う。悪戯というよりも、これから獲物を弄ぼうとする、獣のような顔だった。
「さっきの子、誰?」
「さっきの子……?」
「夢で見ていたでしょう? ほら、ぼくより少し年上くらいの赤い目の男の子」
ドキリとする。夢魔は夢を覗き込み、人間の精気を吸うことができる。一瞬の夢を、少年も同時に見ていたのだ。
「なんだかお客さんじゃないっぽいね。あの子ともこういうことするの……?」
こういう、とつぶやきながら柔らかな指が月鳴の陰茎を握った。誘われて卑しい幻影を見そうになった月鳴は夢を追い払うように体を起こし、客に向かって声を荒げた。
「朱昂と俺はそんな関係ではない! ……あ、あぁ。申し訳ございません」
手を払われた青年は、敷布に頬杖をついて足をバタバタと揺らす。
「謝んなくてもいいけど。でも、そんなむきになるってことはさ……ま、いいか。そんな反応するってことは、ただの夢じゃないっぽいねぇ。ふーん、赤い目、真血かなぁ。牙見えなかったから分からないけど」
真血という単語に、心臓が跳ねそうになる。しかし、赤い目で真血を連想するのは、そう突飛なことでもない。黙っていると、青年がまた口を開いた。頬杖を崩し、腕の上に頬を乗せている。
「もしかして、探してるとか? 大事な子なの?」
弄ぶような表情は消えていた。目をそらし、顎を引いた。ほんのかすかうなずいた月鳴の腕を少年が引いた。月鳴が寝そべると、少年が月鳴を抱きしめる。
「かわいそうな子……。他に愛なんてたくさんあるのに。愛だって、快楽だって他に求めてもいいのに。――秘蹟はどこもひどいんだから」
月鳴は、少年の胸に抱かれながら小さく整った顔を見上げた。最後の一言は、月鳴に向けられたものではないように、感じた。
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